きょうはNHKの番組紹介のようになってしまいますが、夕方の教育テレビで『ハーバード白熱教室』という1時間番組が放送されました。
第一回目の講義は、「殺人に正義はあるか」 でした。どのような番組かといいますとNHKの番組紹介に次のように紹介されています。
アメリカの名門ハーバード大学で最も人気のある授業を初公開。政治哲学を教えるサンデル教授の「JUSTICE(正義)」。サンデル教授は、私たちが日々の生活の中で直面する難問に「君ならどうするか? 何が正しい行いなのか? 理由は?」と学生に投げかけ、活発な議論を引き出し、その判断の倫理的正当性を問いかける。第1回のテーマは「殺人に正義はあるのか」。ジェレミー・ベンサムの功利主義について議論を戦わせる。
出演
【講師】ハーバード大学教授…マイケル・サンデル,【解説】小林正弥千葉大教授
という番組です。
Lecture1「犠牲になる命を選べるか」、Lecture2 「サバイバルのための殺人」という二部構成で放送され、各レクチャーとも例題(物語)をサンデル教授が紹介しそれについて学生に質問し、哲学的な考察を進めていくものでした。
内容的にはそれほど難解な話ではなく、自己のもつ道徳観が中心に進められていました。
○ あなたは時速100kmのスピードで走っている車を運転しているときに、ブレーキ呼称に気づいた。前方には5人の人がいて、このまま走行すれば間違いなく5人をひき殺すことになり、ハンドルを交わし横道にそれれば1人の労働者を巻き添えにする。あなたならどうしますか?
○ 19世紀の有名な「ヨットのミニョネット号の遭難事件」。4名が乗船したヨットが遭難し、19日間、海上を漂いそこで食糧不足から体が弱った1名を殺害し、食しその後その行為が裁判で裁かれた事件。彼らがしたことは道徳的に許容できると考えるだろうか?
サンデル教授は、この例示(提案された質問)から、ジェレミー・ベンサムの「最大多数の最大幸福」という功利主義に基づきながら議論を戦わせていきます。
提案された質問とは、
1 どこから基本的な権利は来ているのか?
2 公正な手続きは、どんな帰結も正当化するのか?
3 同意の道徳的な働きは何か?
です。
この質問に答えて行くには、何人かの著作を読まなければならない。ベンサムそしてジョンスチュアート・ミル。
とサンデル教授は、述べて番組は終りました。サンデル教授は、どうしてこのような公開の授業を開くのか。
小林教授には、公共哲学という視点から、哲学は公開性を前提とするものでなければならないというサンデル教授の講義姿勢を語っていました。
小さなクラスでの論議ではなく、より大きな場における議題とする実践的な哲学でなければならないということです。
今回の議題は、結果からではなく、「命」という根幹の問題から「哲学をする」そこに、各自の道徳観の生成がみえてくる、というとことのようです。
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サンデル教授は、議論の前提の中で法律的な問題は今回の議論から排斥することを述べ、純粋に哲学的な解釈を引き出すことにしていました。
しかし、学生の中には、「責任能力」「殺人は殺人(構成要件該当性)」に言及する者や「カルバニズム(食人)の絶対的排斥」に言及する者もいました。
早い論議です。聞いているだけではどうしようもない、思考を重ねないと話は前に進まない、そしてその答えはあくまでも哲学的な視点で、というのがサンデル教授の姿勢です。
ですので法律的な問題点、宗教性に触れるような学生の意見が出ると、すみやかに、議論をまとめ次の段階へと進みます。