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自縄自縛日記

石橋克彦『南海トラフ巨大地震』

2014-04-09 01:06:48 | 環境・自然

石橋克彦『南海トラフ巨大地震 歴史・科学・社会』(岩波書店、2014年)を読む。

伊豆半島の西側にある湾・駿河トラフは、沖合で西南西に向きを変え、九州南端の東沖まで連なる南海トラフとなっている。フィリピン海プレートが、日本の陸地化に潜り込むところである。ここで、プレート間の地震のみならず、他のタイプの地震も多く起きてきた。従って、著者が昔から警告し続けているように、今後近い将来に大地震が起きる可能性は高いというべきなのだろう。

確かに、本書において、地面の下に刻み込まれた記憶や古文書の記録から再現された、かつての南海トラフ巨大地震の具体的な姿を見せられると、ゾッとしないわけにはいかない(古い地震についても、いまでは、各地の震度や津波の高さまで再現できているのである)。震度7の場所も、津波の高さが10mや20mにもなる場所も、当然、あったわけだ。

ただ、ほぼ同じ期間の周期をもって大地震が起きるという説は科学的に立証されたわけではないし、著者も、それをあくまでも作業仮説として扱っているように思われる。大地震は、さまざまな要因が連関しあって起きる現象であり、また、このような大規模なトラフや海溝でのみ起きるわけでもない。

また、活断層にのみ注目することも危険である。活断層とは、地表で確認できた断層を呼ぶものにすぎず、阪神淡路大震災も、その意味では想定外であったわけである。従って、原発再稼働に際して活断層の判断にばかり論点が集中することは、明らかに、危険評価の矮小化であるということができる。

本書のメッセージは、南海トラフで巨大地震が起きる可能性は低くないものの、それがいつになるか、確度の高い予測はまず不可能だということだ。南海トラフの前に、他の場所で巨大地震が起きる可能性だって、同程度に高い。それが「想定外」であったとき、まさに著者が『原発震災』において予言し、不幸な結果を見た事態が、また起きないとは限らない。

すなわち、日本において、巨大地震はいつどこで起きるかわからない。従って、起きたときの対策を講じておくべきであるし、そのときには「想定外」がつきものであることが常識化されるべきでもある。(その意味では、本書のタイトルは、間違って解釈されるおそれがある。)

●参照
石橋克彦『原発震災―破滅を避けるために』
『The Next Megaquake 巨大地震』
『Megaquake III 巨大地震』
『Megaquake III 巨大地震』続編
大木聖子+纐纈一起『超巨大地震に迫る』、井田喜明『地震予知と噴火予知』
ロバート・ゲラー『日本人は知らない「地震予知」の正体』
島村英紀『「地震予知」はウソだらけ』


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