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自縄自縛日記

石橋克彦『原発震災―破滅を避けるために』

2011-04-08 08:34:35 | 環境・自然

『科学』1997年10月号(岩波書店)に、石橋克彦『原発震災―破滅を避けるために』という論文が掲載されている(>> リンク)。地震の想定に関する誤りやそれによる原発事故について論じており、一読すべきものだ。13年以上前の発表である。

論文での指摘は以下の点である。

○日本海側に関しては、断層があろうとなかろうと、M7級の直下型地震がどこでも起こりうる。(その意味で、震災後にまた断層地図が週刊誌に出たりしているが、これは誤解を招くということになる。)
○M8級の東海地震が起きた場合、浜岡は1m程度隆起し、地盤は傾動・変形・破壊する。敷地の地盤高(海抜6m以上)を越える大津波もありうる。
○大地震の際には、平常時の事故と違って、無数の故障の可能性のいくつもが同時多発する。
○原発をめぐる社会的閉塞状況は、破局的敗戦に突き進むほかなかった昭和10年代と酷似している。

特に3番目の点について、次の下りには震撼させられる。

「原発にとって大地震が恐ろしいのは、強烈な地震動による個別的な損傷もさることながら、平常時の事故と違って、無数の故障のいくつもが同時多発することだろう。とくに、ある事故とそのバックアップ機能の事故の同時発生、たとえば外部電源が止まり、ディーゼル発電機が動かず、バッテリーも機能しないというような事態がおこりかねない。したがって想定外の対処を迫られるが、運転員も大地震で身体的・精神的影響を受けているだろうから、対処しきれなくて一挙に大事故に発展する恐れが強い。」
「原子炉が自動停止するというが、制御棒を下から押しこむBWRでは大地震時に挿入できないかもしれず、もし蒸気圧が上がって冷却水の気泡がつぶれたりすれば、核暴走がおこる。そこは切り抜けても、冷却水が失われる多くの可能性があり(事故の実績は多い)、炉心溶融が生ずる恐れは強い。そうなると、さらに水蒸気爆発や水素爆発がおこって格納容器や原子炉建屋が破壊される。」

石橋克彦氏は今日発売の『世界』にも寄稿しているようで、これは読まなければなるまい。

●参照
○『核分裂過程』、六ヶ所村関連の講演(菊川慶子、鎌田慧、鎌仲ひとみ) >> リンク
○『原発ゴミは「負の遺産」―最終処分場のゆくえ3』 >> リンク
○東北・関東大地震 福島原子力の情報源 >> リンク
○東北・関東大地震 福島原子力の情報源(2) >> リンク
○長島と祝島 >> リンク
○既視感のある暴力 山口県、上関町 >> リンク
○眼を向けると待ち構えている写真集 『中電さん、さようなら―山口県祝島 原発とたたかう島人の記録』 >> リンク


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