NYのハーレム・スタジオ美術館を再訪した。コンセプトを定め、しっかりした展示を行っているという印象をまた抱く。
◆スタンリー・ホイットニー「Dance of Orange」
スタンリー・ホイットニーは、「Dance of Orange」というシリーズにおいて、矩形と線により構成された抽象画を展開している。一見似ているようでいてそれぞれ異なり、そこにはダンスとリズムがあるようだ。
面白いことに、ジェームス・ブラウン、ティナ・ターナーなどの歌手をモチーフにした作品がいくつもある。下の作品は、ニーナ・シモンの歌にインスパイアされた「My Name Is Peaches」。
◆ロレイン・オグラディ「Art Is...」
ハーレムにおける「アフリカン・アメリカン・デイ」のとき、ローレン・オグラディは大きな額縁を用意し、街の人々にフレーム内の自分を表現してもらうことを行った。これはつまり、アートを特権階級から取り戻すのと同時に、匿名性・無名性・マスという暴力によりサバルタンと化してしまうことから個別性と名前を取り戻し、異議申し立てをしていることにもなるのだと思った。これは日本の運動においても面白い試みになりうるのではないか。
(なお、この作品群は、MOMA PS1で行われた「ゼロ・トレランス」展でも展示されていた。)
◆ローレン・ハルシーのインスタレーション
ローレン・ハルシーは大がかりなインスタレーションを展示している。マルコムXやキング牧師(ちょうどこの近くに、ふたりの名前を冠した通りがある)が掘られた石板や、ピンク色のごつごつした岩を見ながら歩き進んでいくと、キッチュなジオラマがある。ハーレムに住む者としてのプライドと、強烈なルーツ=アフリカ回帰を示した作品だということができるのだろうか。
●参照
ハーレム・スタジオ美術館(2014年6月)
2014年6月、ニューヨーク(4) ハーレム
ジーン・バック『A Great Day in Harlem』
MOMA PS1の「ゼロ・トレランス」、ワエル・シャウキー、またしてもビョーク(ロレイン・オグラディ)
ナショナル・アカデミー美術館の「\'self\」展(ハーレムで活動するトイン・オドゥトラ)