NYのホイットニー美術館が、今年(2015年)になって移転・再オープンした。設計はレンゾ・ピアノである。
移転前も新設工事中も観ていたこともあり、楽しみにしていた。メーリングリストにて送られてくるニュースによれば、8月にマタナ・ロバーツ、9月の頭には小杉武久が演奏しており、近くにあったならどんなにいいだろうかと思った。
今回(2015年9月)
移転前(2014年6月)
このタイミングで開催されていた展覧会は「America is Hard to See」展。社会的にも、政治的にも、人種的にも、そして文化的にも、とてもひとつに括ってとらえることができない「アメリカ」をターゲットにしたものとして、とても興味深い。
いくつか印象的な作品。
ロメア・ビアーデンの「Eastern Barn」。デューク・エリントン『Live at the Whitney』のジャケットに採用された絵である。
言うまでもなくアメリカは移民の国である。これは、オスマン帝国政府によるアルメニア人大虐殺(1915年)によって母親を失ったアーシル・ゴーキーによる作品であり、両親の肖像写真をもとに描かれている。
ベン・シャーンはリトアニアでユダヤ人として生まれ、20世紀初頭にアメリカに移住した。この作品は、1920年にアメリカで死刑に処せられたイタリア人移民をモチーフにしている。かれらはアナーキストではあったが、犯罪自体は冤罪であったとされる。シャーンならではの作品か。
こんなものがあったのか、エドワード・ホッパーによる名作「Nighthawks」の習作。
抽象表現主義のバーネット・ニューマン、フランツ・クライン、マーク・ロスコの作品が並んでいるのは壮観。そしてニューマンはロシア系移民の子、ロスコはラトビアからの移民。
ジェフ・クーンズ、ナムジュン・パイクという消費社会時代の美術家を同時に観ることができるのも、アメリカならではだ。
2001年の「9・11」後、アメリカ社会はさまざまな方向に変質し、アーティストも突き動かした。ポーランド出身のアレクサンドラ・ミアは、2007年、マンハッタンのギャラリーをプレスルームのように偽装し、「9・11」前のタブロイド紙などをモチーフにした作品を作り出した。