Sightsong

自縄自縛日記

ジーン・バック『A Great Day in Harlem』

2014-10-05 00:22:17 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジーン・バック『A Great Day in Harlem』(1994年)を再見。以前VHSで持っていたものだが、やはり例にもれず、ノイズがどんどん入ってきて、クローズド・キャプションも読みとれなくなった。そんなわけで、DVDでの買い直しである。

ジャケットにある写真は、ハーレム地区の一角で、1958年8月に撮られた。「ジャズ史上もっとも有名な写真」という言葉は、ウソではない。ここには、キラ星のごときジャズ界のスーパースターが集まっている。コールマン・ホーキンス、レスター・ヤング、セロニアス・モンク、ジョニー・グリフィン、ホレス・シルヴァー、ソニー・ロリンズ、ディジー・ガレスピー、ロイ・エルドリッジ、ジジ・グライス、アート・ファーマー、ミルト・ヒントン、カウント・ベイシー、メアリ・ルー・ウィリアムス、マリアン・マクパートランド、アート・ブレイキー、ジェリー・マリガン、など、など。文字通り、再現不能の瞬間であった。

このドキュメンタリーは、あまりにも有名な写真をめぐる思い出話が集められている。ブレイキー、シルヴァー、グリフィン、ヒントン、ファーマー、マリガンら、被写体であったミュージシャンたちが、写真を見つめ、当時の様子を語る。かれらの多くが今では鬼籍に入っていることを考えれば、写真だけでなく、この映画も奇跡だということができる。

もちろん(?)、ジャズ・ミュージシャンの語りであるから、すべてが真実とは限らないことも面白い点だ。ブレイキーなどは、「ここは俺の家だった」などとホラを吹いたり、写真の顔を見て言い当てようとする名前がやたらと間違っていたりする(本編ではなく、メイキングフィルムの方に収録されている)。どこまで本気でどこまで冗談なのか。

写真を撮影したアート・ケインにしてみれば、とても大変だった記憶が残っているようだ。やはり(?)、相手はジャズ・ミュージシャンであるから、大人しく整列して待っているわけがない。したがって、撮影できたことも奇跡である。実際に、写真右端のガレスピーはベロを出し、エルドリッジが振り向いて笑っているし、メアリ・ルーもマクパートランドの方を向いておしゃべりに夢中の様子。

映画の見どころは、思い出話やホラ話だけではない。ミルト・ヒントンが持ってきた8ミリカメラ(ターレットにレンズ3本が付いているところからみると、レギュラー8だろう)で、かれと妻モナが撮影していて、そのフッテージが紹介されているのである。カラーで観ると、モンクは写真より数倍スタイリッシュでカッコいい。なお、ヒントンは写真が趣味でもあり、ジャズの写真集を残している。こんど棚から発掘しよう。

それにしても、ハーレム地区のどのあたりだったのだろう。メイキングフィルムには、ケインが再訪したところ、ドアが塞がれ、落書きが書かれた廃墟と化していた様子が収録されている。まだ残っているなら、訪ねていきたいところだ。

●参照
2014年6月、ニューヨーク(4) ハーレム


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