Sightsong

自縄自縛日記

崎山多美『うんじゅが、ナサキ』

2017-01-05 22:36:11 | 沖縄

崎山多美『うんじゅが、ナサキ』(花書院、2016年)を読む。

主人公は突然わけのわからない力に呼び止められ、奇妙な世界を旅する。力とはシマコトバであり、ゆく先は海であったり地下壕であったりする。言ってみれば崎山多美お得意の展開だが、過去の作品に比べても、そのわけのわからなさは際立っているようだ。崎山多美版の『不思議の国のアリス』のようなものだ。

理解してはならぬ、それはすなわち、世界と歴史を「括る」暴力に身をゆだねてはならないからだ。主人公を襲う無数の理解できぬ存在と理解できぬコトバは、それが歴史そのものであることを意味する。そして不可能であると知りながら、無数の声を記録してゆこうとすることとは何か。

イマジネーションを喚起してやまない過去の崎山作品ほどの傑作ではないが、この意図的な「放置プレイ」が、つぎの声を呼び寄せるようである。

●崎山多美
崎山多美講演会「シマコトバでカチャーシー」
崎山多美『ムイアニ由来記』、『コトバの生まれる場所』
崎山多美『月や、あらん』
『現代沖縄文学作品選』
『越境広場』創刊0号
『越境広場』1号


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2 コメント

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Unknown (24wacky)
2017-01-06 20:01:33
自分もブログで書こうと思いながら年を越してしまいました。これを「越境広場モード」といいます。

11月に沖縄に行った際にジュンク堂で買って滞在中に読み、東京に戻ってからすぐ『変魚路』を観る機会となり、なんだかこの2作を関連づけてしまっています。ひとつの視点としては、「沖縄でのロードムービーの可能性」といったことなのですが。
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沖縄ロードムービー (齊藤)
2017-01-07 08:53:03
私も「越境広場」第2号を病院に持ち込んだのですが1頁も読まず越年。このモードが蔓延しているようです。
シマコトバとともに移動するロードムービー。納得できるところがあります。『変魚路』にも期待しています。
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