Sightsong

自縄自縛日記

ビリー・ホリデイ『At Monterey 1958』

2016-07-27 22:16:37 | アヴァンギャルド・ジャズ

ビリー・ホリデイ『At Monterey 1958』(Black Hawk Records、1958年)を聴く。

Billy Holiday (vo)
Mal Waldron (p)
Eddie Khan (b)
Dick Berk (ds)
and guests:
Gerry Mulligan (bs)
Benny Carter (as)
Buddy DeFranco (cl)

1958年10月、第1回モンタレー・ジャズ・フェスティヴァルに出演したビリー・ホリデイ。野外のステージということもあってか、少なからず解放感が声にあらわれているような気がする。何しろ30分ほどのパフォーマンスの間にも2回ほど、飛行機が轟音を立てて飛んで来たりするところなのだ。同年2月に吹き込まれた『Lady in Satin』があまりにも痛々しい気持ちを込めた作品であるだけに、この違いは拍子抜けするほどである。ビリーにとっても愉しかったステージではないのかな、と想像する。

マル・ウォルドロンの伴奏も、その後の沈んだようなトーンよりも明るめに聴こえる。そして豪華ゲスト陣、とくにジェリー・マリガンのバリトンサックスも愉しそうだ。

もちろん最晩年の記録である。翌1959年の3月にはレスター・ヤングが亡くなり、7月にはビリーも亡くなる。ここで聴くことができるビリーの声にはもはや張りがなく、エッジもぐすぐすに崩壊してしまっているようだ。しかし、だからこそかもしれないのだが、ビリーの魂のそのまた核の部分を耳にしているような気がする。余裕をもって節回しを崩し、チャーミングにところどころ上げ、そして全体の声質は聴き間違えるわけがない。特別な人だとしか言いようがない。

ジャッキー・マクリーンは、ビリーの晩年の声について、「かつての声の影に過ぎなかった」「彼女の歌声は失われ、唯一の表現手段としてエモーションが残った」とも綴っている(『Let Freedom Ring』のライナー)。

●参照
スティーヴ・エリクソン『きみを夢みて』
ホセ・ジェイムズ『Yesterday I Had the Blues』
ホセ・ジェイムズ@新宿タワーレコード
ジャッキー・マクリーン『Let Freedom Ring』
ドン・モイエ+アリ・ブラウン『live at the progressive arts center』、レスター・ボウイ
与世山さんの「Poor Butterfly」
ジョー・マクフィーの映像『列車と河:音楽の旅』
ニコラス・ローグ『ジェラシー』