角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

布草履のスペシャリスト。

2008年07月21日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ22cm土踏まず付き〔4000円〕
藍色基調の御殿まりプリントをベースに、合わせは赤基調のうさぎプリントです。賑やかな配色ですね、夏はこれくらい騒がしくてイイんじゃないですかね。

角館も梅雨が明けました。と言うか、私が知ったのは今朝のことで、梅雨は一昨日すでに明けていたそうです。
今日は朝から気温がグングン上がりましたねぇ、本格的な夏の到来です。北東北の夏はまずお盆まで、そう考えると蝉のように儚くも感じます。

愛知県からお越しのおばさまグループ、総勢6名ほどでしょうか。みなさんが角館草履に関心をお寄せくださいました。と言うのも、うちのおひとりが「布草履」のスペシャリストで、これまで編んだ数は350足と言います。布草履を編んだことがあると言うお客様は日常にお見えですが、さすがにこれほどの実績は滅多にいるもんじゃありません。

私がこちらのおばさまたちとおしゃべりして感じたのは、とっても純粋な心なんです。これまで布草履である程度の実績をお持ちの場合、変にプライドの高い方がいました。そうした方に限って、私の草履を素直に見てくれませんね。『こういう材料を使うんなら綺麗に出来るわよねぇ』とか、『うわっ、値段も立派だことっ』といった言葉が最初に出てくるものです。

今日のおばさまは違いました。『あたし、この草履気に入ったっ』とすぐさまお好きな配色をお選びになると、布草履のスペシャリストが気に入ったのなら…とばかりほかにおふたりがお買い上げくださいました。
そしておばさまは、『よしっ、挑戦してみようかなっ』とイ草材料までお買い上げです。30分ほど見学されてから町内散策へと出発し、また帰り道でお立ち寄りでした。お人柄はすでに感じていましたから、かなり詳しい部分までお教えしたつもりです。

直感ですが、こちらのおばさまはイ草に巻いた草履もきっと仕上げると思います。そこで私が言ったのは、『ある程度にまで上達したら、必ず材料代プラスアルファの代金をもらってくださいね。そうでないとゼッタイ長続きしませんから』。これはこれまで編んだ350足の布草履を、すべてタダであげた話をしていたからなんです。
私の言葉を聞いたほかのおばさまが、『はいっ、それはマネージャーである私も思っておりましたっ』。実演席大爆笑の一コマでありました。

『騒がしてしまってごめんなさいねっ』とおっしゃりながらおばさまたちがお帰りになってすぐ、北蔵レストランのスタッフが走り寄ってきました。『今のお客様から草履屋さんへって、アイスコーヒーを頼まれましたぁ』。見学のお礼とうるさくしたお詫びとのこと、お人柄の良さは私が感じた以上かも知れませんね。
今夏初の本格アイスコーヒー、ごちそうさまでしたっ&草履頑張ってくださいっ!

今日のおばさまたちとの出逢いと、かつてとてもよく似た出逢いを経験しています。それは今でもお付き合いが続く、東京の仕入れ部長とお仲間さんたちなんです。
仕入れ部長からつい先日連絡が入りました。八月上旬にまた新たな生地が入荷します。今では私の草履に欠かせない材料となっている日暮里の布地、人の縁とは不思議であり素晴らしいものですね。

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