今日の草履は、彩シリーズ21cm土踏まず付き〔四阡円〕
真夏の「涼」にも最適ながら、こうした青系の草履はバラエティの中に必須です。赤系や紺系に比べると売れ行きこそ落ちるものの、青がお好きな方は必ずいらっしゃいますし、なにより角館草履は配色の豊富さが特徴のひとつというわけです。
ここ数年、曜日による明らかな売上の差はなくなりつつありました。定年後のセカンドライフを愉しんでおられる方々は、むしろ週末を避けて散策に訪れます。なにより県外からの観光バスは、曜日とまったく無関係ですからね。
それが震災以来観光バスが激減すると、また昔の「週末型」に戻った気がします。全体的な人影の少なさは否めないにしても、週末には秋田県内や盛岡市のお客様が加わる分、平日よりは賑やかになるわけです。この週末も、実に様々な方々との出会いがありました。
スラっと細身で上品なおばさまが、角館草履の配色に感心してくださいました。『早くこういう草履が愉しめる生活に戻りたいんですけどね…』。よくよく聞いてみると、おばさまは南相馬市から田沢湖高原のホテルに避難している方でした。
おばさまはご主人と共に、南相馬市でお店を経営していました。店舗を構えるために融資を受けた額面は数千万円。その返済を三年残してこの原発騒動なんですね。『店を再開するにも、お客さんがいるのかどうかさえ分からないですからね』。
話の内容は悲惨そのものなのに、おばさまの表情はなぜか明るいんですよ。『私も商いをしててたいへんな状況っていのは推測できますけど、なんか明るいですよね』と言うと、『あらっ、誰かにも言われたわねぇ。あまり深刻に考えない性格なんでしょうかねっ』。
「なるようになる」と腹をくくった人間の、潔さみたいなものを見た気がしました。
東京からお越しのお若い女性ひとり旅。大学院でデザインを勉強している彼女は、卒業制作に必要な資料をこの旅で見つけているそうです。角館草履にも高い関心を示し、写真を何枚も撮っていました。ご家族分四足をお買い上げくださり、若年層に草履の良さを理解してもらうと、それだけで嬉しくなってしまいますよ。
角館の次は夜行バスで東京へ戻り、そこから岐阜・白川郷へまたバスだそうです。体力が充分な今でなければできない強行軍ですが、白川郷でもきっと面白い出会いが待っているでしょう。
三女の小学生時代に担任として一年間お世話になった先生が、ご主人と男の子を連れ立って遊びに来てくれました。結婚から産休、育休と学校現場を離れていましたが、今年度念願叶って現場復帰を果たしたそうです。日焼けした元気そうなお顔を見ると、教師生活がいかに充実しているかが見て取れましたね。
しばらく前に訪ねてくれたとき、『仕事に復帰してまたお給料もらえるようになったら、きっと草履を買いに来ますからっ』の言葉を思い出しました。ご主人用とご自分用の二足、いそいそと配色選びです。笑顔で何度も『ありがとうございますっ』を言われると、売り手と買い手の立場が分からなくなりましたよ。
おひとりは山形県、もうおひとりは明らかに秋田弁の女性お二人組がお越しでした。山形県の女性が角館草履を気に入ってくださり、配色選びに夢中です。そこへ秋田弁の女性が、『大学で履いてもイイんでねの?』。
私が『大学でナニを教えてるんですか?』と訊いてみると、確かに一瞬答えが詰まりました。すかさず秋田弁の女性が、『おめぇには教えられだぐねぇっていう、栄養学だもの』。
山形県の女性が、かなり体格が良かったためのオチというわけでした。
人影少ない角館とはいえ、バラエティに富んだ楽しい出会いは必ずあるものです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます