米国では今、次期大統領候補選挙が白熱している。当初は高齢と行動力・判断力が不安視され、バイデン大統領よりも裁判で犯罪者になるかもしれない前大統領トランプ氏のほうが優勢だった。米国民は、支離滅裂でワンマンだが一貫して「強いアメリカ」を訴えるトランプ氏を選ぶのか・・・そこへ民主党がハリス氏へスイッチしたことで風向きが変わった。世界の半数は、各国国民の半数は女性である。女性の地位向上、国民分断の解消、差別撤廃を初の女性大統領に託したいと考えるのは健全な民主主義だろう。
米国政治で特筆すべきは大統領を直接選挙で選ぶシステムである。しかも、ファクトチェック付きの公開討論会まで全米にテレビ中継される。事前に入念なディベート対策やロールプレイングを行うとはいえ、大統領候補自身が自分の口で政治を語り、ライバル候補の“口撃”をかわすには政治家としての信条や政策を日々繰り返し語れなければ難しい。
一方、日本の自民党総裁選はどうだろう。年季の入った政治家を含めて9人も首を並べ、何を語ったのか。何を主張したのか。誰に厳しい質問をしたのか。約9年にも及ぶ安倍晋三のデタラメな政治、1年で退場になった国民をバカにした菅義偉、そして岸田首相の退陣宣言。「日本の政治は何が問題で、どう正さなければいけないか」を自分の言葉で語った候補者はいなかった。ネットでは唯一、高市早苗の主張が具体的で一貫していると評価されているようだが、彼女は安倍晋三の信奉者で歴任した大臣時代は強引な政治運営を行ってきた。「サナエあれば、憂いなし」には「まったく、当たらない」政治家だと思う。
政治資金の裏金問題、国民には厳格な納税を義務づけながら自分たちは脱税する体質。それを経団連会長が「政治献金は正しい」と開き直る悪癖。それならば、「政党助成金は廃止しましょう」と総裁選候補者や政治家が、なぜ主張しないのか。唯一受け取り拒否している日本共産党を見習うべきである。
こんな出来レースで次期総裁選びが進み、解散総選挙になるのか・・・と悶々としていた矢先、グッドタイミング!やるじゃないか、フジテレビ!これぞ風刺エンタメ、三谷幸喜さん!9月14日に地上波で放送された映画「記憶にございません」である。与党特有の金権体質で政界を牛耳る官房長官の手により、初心を忘れた政治家が総理大臣になる。そして、私利私欲・オトモダチ優遇・デタラメ政策で最低の支持率にも関わらず、馬耳東風で総理の椅子に座り続け・・・ここが物語のスタート。
民衆の投石が当たり記憶喪失になった総理の脳ミソがゼロリセットされ、オセロの駒みたいに「正しい政治」へひっくり返ってゆく。総理が官邸で、かつての恩師から三権分立を学ぶシーンには感動した。自民党総裁選の候補者全員がこうべを垂れ、これに日本国憲法を加えた講義を受けるべきだ!そして終盤、(新生)総理が(悪玉)幹事長と対峙するシーン。政治信条を問われた幹事長の答えは国民・政治不在で「できるだけ長く、『政治家』を続けること」。まさしく、今の自民党政権・政府与党の政治家が考えていることではないか。
この映画は2019年に制作されたコメディー映画だが、三谷幸喜さんの政治風刺は巧妙かつ痛烈である。三谷さんは1997年に連続テレビドラマ「総理と呼ばないで」の脚本を担当している。この時代は自民党政権や本人の不祥事により総理大臣が短命でコロコロ交代していた。現在と異なるのは自民党が国会で「議員定数の過半数を得ていない」ことで、野党や国民に批判されたら国会運営・政権維持ができない。総理大臣がオトモダチ優遇したり国会で118回ウソをついたりデタラメな閣議決定を繰り返したりしたら、一発退場だったはずだ。安倍晋三の「憲政史上最長の7年8か月」など、噴飯物の政治記録である。
無党派層や若者達が「正しい民主主義」に関心を持ち、次期総選挙で投票率を上げてもらうには、堅い正論よりも「記憶にございません」「総理と呼ばないで」のような喜劇・風刺で訴えなければ!テレビ録画を見直しながら、そう思った。
「護憲+コラム」より
猫家五六助
米国政治で特筆すべきは大統領を直接選挙で選ぶシステムである。しかも、ファクトチェック付きの公開討論会まで全米にテレビ中継される。事前に入念なディベート対策やロールプレイングを行うとはいえ、大統領候補自身が自分の口で政治を語り、ライバル候補の“口撃”をかわすには政治家としての信条や政策を日々繰り返し語れなければ難しい。
一方、日本の自民党総裁選はどうだろう。年季の入った政治家を含めて9人も首を並べ、何を語ったのか。何を主張したのか。誰に厳しい質問をしたのか。約9年にも及ぶ安倍晋三のデタラメな政治、1年で退場になった国民をバカにした菅義偉、そして岸田首相の退陣宣言。「日本の政治は何が問題で、どう正さなければいけないか」を自分の言葉で語った候補者はいなかった。ネットでは唯一、高市早苗の主張が具体的で一貫していると評価されているようだが、彼女は安倍晋三の信奉者で歴任した大臣時代は強引な政治運営を行ってきた。「サナエあれば、憂いなし」には「まったく、当たらない」政治家だと思う。
政治資金の裏金問題、国民には厳格な納税を義務づけながら自分たちは脱税する体質。それを経団連会長が「政治献金は正しい」と開き直る悪癖。それならば、「政党助成金は廃止しましょう」と総裁選候補者や政治家が、なぜ主張しないのか。唯一受け取り拒否している日本共産党を見習うべきである。
こんな出来レースで次期総裁選びが進み、解散総選挙になるのか・・・と悶々としていた矢先、グッドタイミング!やるじゃないか、フジテレビ!これぞ風刺エンタメ、三谷幸喜さん!9月14日に地上波で放送された映画「記憶にございません」である。与党特有の金権体質で政界を牛耳る官房長官の手により、初心を忘れた政治家が総理大臣になる。そして、私利私欲・オトモダチ優遇・デタラメ政策で最低の支持率にも関わらず、馬耳東風で総理の椅子に座り続け・・・ここが物語のスタート。
民衆の投石が当たり記憶喪失になった総理の脳ミソがゼロリセットされ、オセロの駒みたいに「正しい政治」へひっくり返ってゆく。総理が官邸で、かつての恩師から三権分立を学ぶシーンには感動した。自民党総裁選の候補者全員がこうべを垂れ、これに日本国憲法を加えた講義を受けるべきだ!そして終盤、(新生)総理が(悪玉)幹事長と対峙するシーン。政治信条を問われた幹事長の答えは国民・政治不在で「できるだけ長く、『政治家』を続けること」。まさしく、今の自民党政権・政府与党の政治家が考えていることではないか。
この映画は2019年に制作されたコメディー映画だが、三谷幸喜さんの政治風刺は巧妙かつ痛烈である。三谷さんは1997年に連続テレビドラマ「総理と呼ばないで」の脚本を担当している。この時代は自民党政権や本人の不祥事により総理大臣が短命でコロコロ交代していた。現在と異なるのは自民党が国会で「議員定数の過半数を得ていない」ことで、野党や国民に批判されたら国会運営・政権維持ができない。総理大臣がオトモダチ優遇したり国会で118回ウソをついたりデタラメな閣議決定を繰り返したりしたら、一発退場だったはずだ。安倍晋三の「憲政史上最長の7年8か月」など、噴飯物の政治記録である。
無党派層や若者達が「正しい民主主義」に関心を持ち、次期総選挙で投票率を上げてもらうには、堅い正論よりも「記憶にございません」「総理と呼ばないで」のような喜劇・風刺で訴えなければ!テレビ録画を見直しながら、そう思った。
「護憲+コラム」より
猫家五六助