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原発がベースロード電源だとする神話を払拭する:再生可能エネは上手く働かない、という神話・物語は間違いである

2024-05-06 11:22:42 | 環境問題
「原発がベースロード電源だとする神話を払拭する:再生可能エネは上手く働かない、という神話・物語は間違いである」
(Energypost.eu 2016年3月23日  Mark Diesendorf氏記す)

今回の情報は、4月21日投稿の「原発ヨイショのお為ごかしな物語をオーストラリア・ディーゼンドルフ氏が反駁する」において、原発擁護者らが良く使う次の神話・物語1および2つの変形例については、著者のDiesendorf氏が既に説明済みとして前回の情報では触れなかった氏の反駁に相当するものになります。

【神話・物語1:ベースロード発電所は、ベースロード需要を供給するために必要だ。】
【変形例:ベースロード発電所は、不規則で安定していない再生可能エネルギーをバックアップするために、常時運転しておく必要がある。】
【変形例:再生可能エネルギーは、大規模な電力供給の為の主要な電力源と見なすには、あまりに不規則であり不安定性である。】

***
原発を正当化する主張として「原発は、水力と並んで大きな規模で信頼できるベースロード電源となる性能を持っている。しかも炭素排出量が小さい技術である。よって原発は必要なのである」ということを聞いたことがあるでしょう。

この主張に沿った神話や説明が、例えば、英国で提案された原発のHinkley Cの建設決定を正当化する際に英国のエネルギー担当Amber Ruddさんが利用しており、彼は「ベースロード電源確保は保証される必要がある」と主張している。
同様に、先のオーストラリア産業相のIan Macfarlaneさんは最近のウラニューム関連の会合において「誇ることが出来る唯一の排出炭素ガスゼロのベースロード電源のシステムは、水力と原子力である」との主張にも利用されている。

これらの主張が正当であるとするには、鍵となる3つの前提の妥当性の検証ならびに証明が必要となるのである。

一つ目の前提は、「確かにベースロード電源は良いものであり必要なものである」になる。
しかし、ベースロード電源というものは、必要のない時に必要以上の電力を供給し、必要な時には供給力が足りない、というのが実態としての実績なのである。
実際に必要とされ、優秀な電源とは、需要に見合う供給をその時々の状況に合わせて即座に追随できる柔軟性を持つ発電方式なのである。

二つ目の前提は、「原発は信頼できるベースロード電源である」という主張である。
しかし実際には原発はそのようなものではない。即ち、原発はすべて、安全上の理由や技術的欠陥から平常時の状態から逸脱する可能性が存在しているのである。よって、例えば3.2GWの原発には、すぐに呼び出せる3.2GWの高価な「運転予備力(spinning reserve)」を準備しておくことが求められているのである。

【参考情報:運転予備力とは、突然の故障や電力需要の急変に際しても安定した電力供給が出来るよう保有している余力電力のことを指す】

「どんな発電形式(原発・石炭や天然ガス火力)であろうが、ベースロード発電所というものは、需要の有無にかかわらず最高レベルの能力を常に発揮するように設計される必要がある」というのが三つ目の前提であるが、これも間違いである。
これらの前提条件の問題性を更に説明すると以下のようになる。

ソーラー発電から充分な供給を持たない通常の大規模電力網における夏季の電力需要の変動・動揺を想定して見ると、ベースロード発電所は一般に分刻み、時間刻みの需要と供給の変動・動揺に追随して運転するには適していないのである。従って、柔軟性のある、例えばダム機能を持つ水力発電や開放型ガスタービン発電(open cycle gas turbines,OCGTs)をもって補強しておくことが必要とされるのである。

「ベースロード発電所は、送電線網に信頼性の高い電力を供給する」という仮定は、再生可能エネルギ―から大規模な供給を受けている実際の送電線網の実績・経験から、および時間ごとのコンピューターシミュレーションの検証結果から、の両方から判断して、誤りであることが証明されている。
2014年、オーストラリア南部の州では、年間電力消費量の39%を再生可能エネルギ―(33%を風力、6%をソーラー)から取得しており、それにより、その州では石炭火力を用いていたベースロード発電所は不要だと判断され閉鎖している。そして数年にわたり州全体のシステムは再生可能エネルギ―とガスの組み合わせで確実に稼働しており、隣接のビクトリア州からの輸入も少量で済んでいるのである。
北ドイツのMecklenburg-Vorpommern州とSchleswig-Holstein州の両州は、その大半が風力である「実質」再生可能エネルギ―100%の稼働を既に実現している。「実質」というのは、相互間ならびに隣接する地域との間の取引の存在を意味している。
そしてこれら両州では、ベースロード発電所には依存していないのである。

そして「ベースロード発電所は必要ない」ということで一致している多くの研究があるのだが、これらの研究や説明・言説に対し「それはマヤカシだ」と反論する原発擁護者らが存在している。
彼ら原発擁護者らの言い分は「それらの地域は、どこか別の地域のベースロード発電所からの送電線網により輸入・移入される電力に依存している」というものである。
しかし実際にはベースロード発電所から輸入・移入されている量はわずかなのである。

オーストラリアのように完全に隔絶されている国々や、アメリカのようにほぼ隣国から隔絶している国々において、年間電力利用量の80~100%までの量を再生可能エネルギ―に依存する電力の需給システムに関する時間ごとのコンピューターシミュレーションが行なわれているが、得られている結果は実際的経験・実績と整合的なのである。
アメリカにおいて、科学者らや技術者らの大規模なチームによりコンピューターシミュレーションが行われ、80~90%の再生可能電力が技術的に適当であり、信頼できると認めている(100%再生可能なケースは検討していない)。2012版レポート(再生可能電力の将来性研究、Vol.1、技術レポートTP-6A20-A52409-1)が、アメリカ国家再生可能エネルギー研究所(National Renewable Energy Laboratory,NREL)から発行されており、そのシミュレーションの結果は、時間ごとの供給と需要とのバランスは取れているとしている。
さらにレポートによると、「現時点で購入可能な技術から得られる再生可能発電は、ある種のより柔軟な電気システムと組み合わせることで、2050年における時間ごとの需要に見合う形で、全米の80%の発電量を充分に適切に供給できる」としている。

入手できる技術と電力需要・風力及びソーラーに関する実測データを組み込んだ100%再生可能エネルギ―を条件としているオーストラリア国家電力マーケットが行った時間ごとのシミュレーションにおいても同様な結果が得られている。
このオーストラリアのモデルには、ベースロード発電所は含めておらず、比較的少規模の貯蔵施設が含まれているだけである。最近のシミュレーションはまだ公表されていないが、1時間ごとのデータは、8年間の期間に及んでいる。

欧州での研究と併せて、これらの研究は、負荷喪失確率または年間エネルギー不足といった全体の需給システムにおける標準的信頼性基準を満たした上で、ベースロード発電所は必要ないということを明らかにしているのである。

さらに、これらの研究からは、ソーラーや風力と言った変動する再生可能エネルギーを年間70%まで、その供給に依存するというオーストラリアでのモデルにおいても、信頼性は維持されるとしている。

では、このことを実現するには、どのようなことが必要なのだろうか?

それには、柔軟性ある発電所を使うことで、電力需要の動揺・不安定さをバランスさせることが必要なことだ、としている。

第一に必要なのは、変化しやすい風力やソーラー発電に起こる動揺・不安定さは、需要発生時点で電力を供給できる需給調整可能な、柔軟な再生可能発電源によってバランスを取るということである。これらの柔軟な再生可能発電源としては、ダム機能を持つ水力発電、オープンサイクルガスタービン(OCGTs)や熱貯蔵機能を持つ集中型太陽熱発電(concentrated solar thermal power:CST)がある。ここにおいて、システム内の全ての発電所が需給調整可能型であることは必須の条件ではない。
ちなみに、ガスタービン自体は、都市廃棄物や農業廃棄物の堆肥化などからの「グリーンガス」を燃料として利用したり、あるいは再生可能エネルギーの余剰分を利用することが出来る。これらについては以下に説明する。

第二に必要なのは、異なった統計的性能を有するものと再生可能エネルギー源を組み合わせて利用することで、信頼性を高めることである。このことは、複数の技術に依存するシステム、および地域を拡大して展開させた風力発電とソーラー発電に依存するシステムというものが、全体としての電力の動揺・不安定性を低減させることに繋がるということを示している。
このことにより、既に貢献度合いが小さいガスタービン発電の寄与を数%へと低減させることが出来ることになる。

第三に必要なのは、再生可能エネルギー源を地理的に広く分散させるために、そして送電線網への再生可能エネルギー源の供給多様性を高めるために、新たな送電線網が必要になるということである。
例えば、風の強いドイツ北部の地域とドイツ南部の風が弱く、限定的な太陽光の地域との間の接続例が提案されている。また大きな風力資源を持っているテキサスにとっては、隣接する州との接続を拡大する必要性があるということである。

第四に必要なのは、電力需要ピーク時の電力を削るために、そして電力供給量の低い時期の電力管理を目的として「スマート需要管理」を導入することで、信頼性を更に高めることが必要だということである。
このことは、電力供給者ならびに消費者の両方がコントロールできるスマートメーターとスマートスィッチによって支援をすることであり、そして電力需要が高い時や、または供給量が低い時に消費者が短期間、ある種の回路(例えば、エアコン、温水化、アルミの精錬)を切断するようプログラムを組むことで支援するやり方である。
アメリカ国家再生可能エネルギー研究所(NREL)がまとめているように、高レベルで再生可能エネルギ―発電を利用する電力システムの需給バランスを取る上で必要とされる、拡大された電力システムの柔軟性というものは、供給側ならびに需要側のオプションの保有リスト(柔軟な従来型発電や送電線網内での電力備蓄や新たな送電線網や、より応答性の高い電気機器や電力システム運用の変更)から得ることができる。

上記の研究をはるかに超える研究が、最近Mark Jacobsonらにより発表されている。
それによると、アメリカにおける輸送と加熱を含む全てのエネルギーが、再生可能エネルギーから供給できるということを示すものであった。コンピューターシミュレーションでは、6年間にわたり30秒ごとに獲得される電力需要・風力・ソーラーに関する合成データが使用されている。

備蓄(蓄電)或いは「風力ガス(windgas)」もまた電力の動揺・不安定性を管理できるのである。

上記の「柔軟な」方式というものは、良好な風力資源に恵まれるものの太陽光資源には恵まれない英国やその他の国にとっては経済的に最適なものではないかもしれない。

風力とソーラーにおける動揺や不安定さを管理していく別のやり方としては、より多く備蓄するやり方、例えば蓄電池または揚水式水力発電や圧縮空気方式がある。

さらに別の方式としては、英国のHinkley C原発プロジェクトに対し、もっとグリーンであり、低コストの代替え案だとして、エネルギーブレーンプール(Energy Brainpool)社が最近推奨している「風力ガス(windgas)」のシナリオがある。

このアイデアは過剰な風力エネルギーを用いて水の電解を行って水素を作り、その水素を用いてメタンを作り、それをコンバイン型サイクルガスタービン発電所(combined cycle gas turbine,CCGT)の燃料として利用するものである。

ここで、実用上は水素をメタンに100%変換する必要はなく、水素を少し残したメタン-水素混合物がより効率的であり有効な燃料になるとされている。
別のオプションに、水素をアンモニアに変換する方式があり、得られるアンモニアは燃料利用だけでなく、肥料産業向けに利用することも出来る。

ブレーンプール社のシナリオでは、このシステムは3.2GWのHinkley C 原発の発電出力を再現でき、より低コストで運用できるとしている。

実際には、以下に見るように、はるかに優れた方式とされる。

・各風力タービン、CCGT、ガス貯蔵ユニットや「電力をガスに転換」する施設は完成すれば、全体システムの建設完成を待たず、それの施設は直ちにその機能を発揮し始める
・このシステムはベースロード発電所としてではなく、実際には現実の需要に見合う柔軟な発電所として用いられることになり、もっと大きな価値を持つ施設となる
・ソーラー発電が更に安価になっていくと、ソーラー発電はそのシステムとの統合化が進められ、それによって更に弾力性・復元性が向上し、コストが低減することになる
・システム全体が送電線網の安定性を生む出し、原発のように全てが突然停止すると言ったマイナスの「統合コスト」を生みだすようなことは、起こらないことになる

以上、述べたように柔軟性がある再生エネルギ―を基盤とする全ての方式においては、「従来型のベースロード発電所というものは不要になる」のである。

オーストラリアの緑の党の前代議員Christine Milneさんは、「我々は今、過去と未来との間で起こっている争いのただ中にいる」と述べている。再生エネを故意に誹謗中傷するベースロードに関するお伽噺や神話の類に反論していくことが、この争いにとって鍵となる大切な作業なのである。
***

最後にこの情報を提供しているオーストラリア・ニューサウスウェールズ大学で学際的環境研究を行っているMark Diesendorf準教授は次のように述べている。

「再生可能エネルギーには、ベースロード電力を供給できるだけでなく、もっと価値あること、即ち需要に応じて柔軟に電力を供給出来る性能がある。そして続けて再生可能エネルギーの拡大により、原発の役割・使命は実質的に終わる」と主張している。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan

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