花の公園・俳句 ing

日本は素晴しい花の国。美しい花々と公園、四季折々の風景を記録したいと思います。我流の俳句は06年3月12日からです。

日本はなぜアメリカと戦ったのか?

2014年07月16日 23時32分23秒 | 本、HP制作、写真のアップ       
『アジア・太平洋戦争』 (「戦争の日本史23」 吉田裕、森茂樹 吉川弘文館 2007年)。

あの戦争とは何だったのか、開始から終戦まで歴史事実を丹念に確認して描き出した本
です。
いろいろ教え似られるところが多いのですが、1つだけ気になるところがあります。著者
が提出する、日本の戦う相手はアジアに巨大な利権を持つイギリスと、言うことを聞か
ない蒋介石政府のはずなのに、なぜアメリカと戦うことになったのか、という疑問です。

著者は、「世界情勢の読み違いから、アメリカに経済封鎖を食らわされて」 (15p) しまった
とし、アメリカは屈服させる相手ではないが 「戦意を喪失せしむる」 必要があり、武力
を行使するのは 「自分は屈服しない、というデモンストレーションだった」。「だからこそ
東南アジアの資源地帯を占領して、米国の経済封鎖を無効にしなければ」 (16p) ならな
かった、としています。

しかし、アメリカの全面的経済封鎖の引き金となった南部仏印進駐は、その直前7月2日
の御前会議で南方進出は 「対米英戦を辞せず」 と決定した上での行動であり、日本の
論者が戦争原因とする石油全面禁輸は南部仏印進駐の後のことです。経済封鎖よりも
戦争決意が先になっていることを見落としているようです。
とすると、真の理由は何だったのか。やはり、ドイツがオランダ、フランスを蹂躙する快
進撃を見て、「バスに乗り遅れるな」 とばかりに尻馬に乗った、というのが本当のところ
ではなかったかと私には思えます。いかにも日本人的な、雰囲気に流されたのです。

天皇の統帥権を補佐する、軍事官僚の 「輔翼」 といわれるものについては、憲法上の
根拠がなく、「統帥権の発動についての責任は、天皇自身が負うほかはない。」 (100p) と
します。「昭和天皇は、『御下問』や『御言葉』を通じて作戦指導に深くかかわった。(中略)
必要と判断した場合には、積極的な意思表示を行うことによって、その内容を変更させた
のである。」 (101p)
旧海軍少将高木惣吉氏は 「参謀総長、軍令部総長の地位は、天皇の統帥命令の伝達機関
であって、国務各大臣のような責任機関ではなかった。(中略) 国務と統帥の調整は憲法上、
天皇以外にこれを裁決される地位は存在しなかった」 (101p) としているそうです。
(「私感 太平洋戦争」 文藝春秋 1969年) これは天皇の戦争責任を考える上でたいへん
重要な指摘です。

開戦時の日本の戦力・戦略について、多くの問題点を指摘しています。まず、政府、陸軍、
海軍が合同で統一的な戦略を立てることができなかったこと。
作戦思想として、陸軍ではまず
①短期決戦主義。(これは屈服させる相手ではない対米戦を考えると、無理があります)
②極端な精神主義・白兵戦偏重。自動小銃に対して三八式歩兵銃での白兵突撃です。
③装備近代化への関心の低さ 日本の戦車は豆腐のように敵戦車に打ち抜かれる始末。
  自動車化も雲泥の差。 
④アメリカ兵は惰弱という偏見 
⑤補給・衛生・情報戦の軽視 (65-76p)
これらは全体として、精神力に偏重し、兵の命を粗末にし、使い捨てて恥じない文化を
創り出しました。特攻隊はその行き着いた果てというべきです。
「旧軍人の中には、いまだに特攻作戦は、下部の隊員からの自発的な申出によっておこ
なわれたとして、上層部の責任をあいまいにする傾向がみられる。しかし、この作戦は、
軍上層部の正式の決定にもとづき実施されたものだった。」 (258p)

日本には戦前的精神主義が復活しつつある気配があります。映画 「永遠の0」 などに
みられる特攻隊の美化がその先兵です。九州の特攻隊基地は観光名所になっており、
特攻を世界遺産に推薦しようという運動まであるらしい。純真な特攻隊員は痛ましいが、
功少ない外道の作戦を命じた指導部の責任を忘れることがあってはならないと思います。

最後に、大東亜戦争は東亜解放の戦いだったという、林房雄亜流論者へ。1943年5月31日
御前会議決定の 「大東亜政略指導大綱」 に、「『マライ』『スマトラ』『ジャワ』『ボルネオ』
『セレベス』 ハ帝国領土ト決定シ重要資源ノ供給地トシテ極力コレカ開発並ヒニ民心把握
ニ努ム」 (195p) とあるのをどう説明するのですか。中国で暴れまわるのが東亜解放ですか。
台湾・朝鮮はどうですか。事実を見て論ずるべきです。
        (わが家で  2014年7月16日)
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