金木犀、薔薇、白木蓮

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映画:『碁盤斬り』

2024-05-18 11:15:30 | 映画の感想
2024年の映画④『碁盤斬り』(白石和彌 監督)
★★★★☆4寄りの3.5
 
【シネマトゥデイのあらすじ】
 
いわれのない嫌疑をかけられて藩を離れ、
亡き妻の忘れ形見である一人娘・お絹(清原果耶)と共に
貧乏長屋で暮らす浪人・柳田格之進(草なぎ剛)。
落ちぶれても武士の誇りを捨てず、
趣味の囲碁にもその実直な人柄が表れており、
うそ偽りない勝負を心掛けていた。
しかし、あるきっかけから隠されていた真実が明らかになり、
格之進は娘のために命懸けの復讐を誓う。
 
********************************
 
映画館にて。
公開初日だったためか、作中のキーアイテムである小判のシールがもらえた。
 
落語の「碁盤斬り」にオリジナルのエピソードを絡めているとのこと。
もとの落語は知らないけれども、たぶん、
藩を離れたいきさつと、それに絡んだ仇討ちの部分はオリジナルなんだろう。
というのも、ここは、
「主人公を江戸から離す」
「タイムリミットを設けて緊迫感を出す」
というストーリー上の必要性しか感じなかったから。
ただ、この過程で生まれた「清廉潔白な生き方への疑問」も、
タイトルにもなってる「碁盤切り」につながってないこともないのかな。
 
感想としてはまず、
 
「弥吉、お前、報連相をちゃんとしろ~!!!!!」
 
だ。
いくら番頭に言われたといっても、主人公は主人の客人なのだから、
主人に許可を取ってから小判の行方を聞きにいけ!
断りもなく主人の首を賭けるな!
そもそも、
「主人が小判をどこにやったか忘れてしまったのだが、覚えてないか」
という訊き方をすれば角が立たなかっただろ!!
 
……いや、わかっています。
弥吉がちゃんとしてたら、話が終わってしまうということは……。
お絹が身を売って五十両を作る必要もなくなるし、タイムリミットもなくなるし。
中川大志くんはストーリーの犠牲になったのだ……。
まあ、でも、手代にしては長身で見映えがいいこと、
もともとは武士の子という設定で、見苦しくあがかず
自分の首一つでおさめようとしたこと、で
「なんでハッピーエンドにおさまってるんだよ」という反発は
和らげていると思う。
 
敵役だった斎藤工は、一貫してクズでよかった。
主人公の清廉潔白な生き方は完全に肯定できるものなのかという視点を
提供するキャラクターでもあり、
賢さや、武士らしい矜持もちらりと見せているんだけども、
やっていることはやっぱりクズ。
(余談だけど、首を落とすシーンをはっきり描いていることに驚いた。
 大河ドラマとかだと、たいてい、そのものは映さないから……)
斎藤工、第一印象が大河ドラマ「江」で、
「いっつも同じ顔してる……。演技下手だな」と思ってたんだけど、
息の長い俳優さんになったのね……
 
主人公役の草彅くんは本当にこういう寡黙な武士の役が似合う。
貧乏だからって、自分のしたことの償いに、
藩主の絵をあてようとしたことは理解できんが……。
もとは斎藤工がパクって「売り払った」と言ってたものだからいいと思った?
これが、仇討ちを通して生じた「清廉潔白な生き方が正しいのか?」への
アンサーでもあったのかな?
 
悪役として登場したかと見せかけて、
主人公に惚れ込み感化されていく國村隼は始終可愛かったし、
小泉今日子は女郎屋の主人らしい厳しさも見せつつ、結局甘かった。
そういう終盤のとんとん拍子具合、世界の優しさ、都合のよさは
やっぱり気になったけど、四季の描写は美しいし、
時代劇は日本に残ってほしい。
 
見終わった直後は、好み度★3かな、と思ってたんだけども、
これだけ感想に書くことがあるってことは、好きだったんだろうな。
というわけで、★4寄りの★3.5。
 

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