茶々日和~まったりしましょ~

愛犬茶々(Mダックス・メス)とのまったりした暮らしと、趣味の観劇記です。よろしくお願いします。

メディア/イアソン

2024-04-02 22:31:00 | 舞台・コンサート
31日は「メディア/イアソン」東京公演の楽日でした。

三軒茶屋の世田谷パブリック・シアターは、600席のこじんまりとした劇場ですが、緩やかな半円形の客席になっていて、平場を使ってギリシャ悲劇の上演にも対応可能な劇場です。
でも、今回は額縁舞台を使って、影絵のような幻想的な空間が立ち上がっていました。
全体的に少し暗い照明が、ギリシャの野外劇場を思わせ、物語のシーンごとに姿を変える月の、なんと美しかったことか。
「メディア」の物語はなんとなく知っていても、そのおどろおどろしさから、これまでちゃんと戯曲を読んだり、舞台を観たことはありませんでした。
この「メディア/イアソン」では、前半部分に「メディア」の前日譚が、わくわくするような冒険の物語とメディアのイアソンに対する強い愛が、描かれます。
メディアは、イアソンのために国を捨て、弟を殺し、全てを犠牲にして愛を貫いたのだから、イアソンの裏切りを許せない気持ちはわかります。
また、もともと巫女のような存在だったから、神への誓いを破ったイアソンは大罪人なのかもしれません。
とはいえ、子どもを殺すという行為はあまりにもむごたらしい。
そして、イアソンにとって愛する子どもを奪われたことは、自分が殺されるよりもずっと残酷な罰だったはずです。
メディアの復讐は、見事に果たされた。
けれど、去っていったメディアは、どんな気持ちだったのだろう?
それがわからない。

この物語の語り手は3人の子どもたち。
月の光に照らされた双子の兄と、幼い妹。
妹はあどけなく、それを見つめる兄は哀しいまでに優しい。
月の光から外れたところに遠くを見つめて双子の姉がうずくまっている。
月の光の中に立つ2人は、母に殺された子どもたち。
光から外れたところにいる姉は逃げ出して生き残り、その記憶を抱いたまま、暗い夜の中に生きている。
イアソンは「こんなふうに殺されるのなら、生まれてこない方がよかった」と子どもたちの死を嘆いたけれど、殺された方が生き残るよりも不幸だったとはいえない。

この、3人がすごい。
兄役の三浦宏規さんは、バレエで鍛えた身のこなしが優雅で靭く、ため息がでるほど美しいのです。
旗や大蛇や巨人を器用に操り、全く印象の異なるヘラクレスとメディアの弟役を演じ分けていました。
また、姉妹を演じる永野貴以さんと加茂智里さんも、何役も演じわけ、あどけない妹が一瞬にしてイアソンのおじさんに変わるのには驚かされました。
小物の受け渡しなども3人で助け合っていて、「カム フロム ウェイ」に通じるのも面白いと思いました。

今回、3階席からまず全体を眺めながら観て、その後、平場で前の人の頭に遮られながら観て、千秋楽は階段席でした。
それぞれみ見え方が違って面白かったです。

今回、ノンストップ2時間は、集中力の限界に近いものがありました。
メディア役の南沢さんの台詞回しが独特で、ものすごい早口で捲し立てるように長々と語る(怒鳴る)ので、結構しんどいです。

10年くらい前に、新進気鋭の演出家だった森新太郎さん演出の「幽霊」を観ました。
シンプルで象徴的な舞台装置と真っ白い衣装と照明の効果に驚かされたノンストップ2時間のイブセンでした。
面白い演出家さんだと思います。

芳雄さんを観に行ったのですが、芳雄さんの印象は果てしなく薄く,薄っぺらいイアソンは大正解かなと思いました。

やっと感想が書けました。









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