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No246「トンマッコルへようこそ」~男たちが最期に交わした、とびっきりの笑顔~

とても不思議な世界。
こんな世界が現実にあったら本当にすてきだ。
久石譲のセンチメンタルで大らかな音楽がぴったりで、
観る者をトンマッコルへいざなってくれる。

汗をかいて畑で働き、草そりで子どものようにスリルを味わい、
家族と食事をし、
笑顔を絶やさず、
優しさを忘れない人たちの村。

朝鮮戦争の最中、
辺境の村トンマッコル(架空の村の名前)に、
連合軍のアメリカ兵が1人、韓国軍の兵士が2人、人民軍の兵士が3人、迷い込んでくる。
村の人たちは戦争があることさえも知らない。
敵意をむきだしにして、憎みあい、ぶつかりあっていた兵士たちが、
村で生活しているうちに少しずつ変わっていく。

この警戒心が溶けていくきっかけが、
食事や排泄に関わっていたりして、妙に人間くさくて、
くすっと笑ってしまう。

最後は、悲しいけど、
男たちのとびっきりの笑顔で終わる。
まっくろに汚れた顔で、にこっと笑って
白い歯を見せた顔は忘れられない。
微笑みを交し合い、互いを確かめ合える相手がいることのすばらしさ。
ショッキングなラスト。
でも、限りなく美しく尊い。

前半の見せ場である
ポップコーンが空から「降ってくる」というファンタジックなシーンが、
最後の「落下」を、より強烈に心に刻み付ける。
同じ「落下」という動きでも、両者は全く異なる。
このクライマックスをスローモーションも使って、
美しく撮ったパク・クァンヒョン監督にロマンを感じる。

原作は、人気劇作家による舞台劇で、
兵士を演じる主演のシン・ハギュン、チョン・ジェヨンとも、
舞台作品にも出演していたそうだ。
こういう作品にクチコミで観客が集まる韓国はすてきだと思う。

久石譲の音楽が好きな人は、ぜひお薦め。

5人の兵士たちの間に、兵士と村人たちの間に生まれた、信頼の絆。
目と目の会話。
信頼してもらえることは、人を自信付け、心を満たしてくれる。
人間ってやはりつながっているのだ。

トンマッコルは、
平和を愛する人たちが住んでいる村という意味では、
「風の谷のナウシカ」の風の谷に似ている。
こんなすてきな村が、一人ひとりの心の中にもあるといい。

満足度★★★★(星5個で満点)
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