温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

北投青礦名泉(旧北投温泉公共浴室) 2024年1月再訪

2024年02月29日 | 台湾

(2024年1月訪問)
このブログでもほぼ定期的に記事にしているように、毎年私は台湾へ出かけておりますが、最近は台北を観光する機会が減っており、行き帰りの飛行機に乗るために台北を経由する程度です。しかしながら、先日行われた台湾総統選ではやはり大都市の台北市や新北市で選挙運動が盛り上がっていましたので、総統選を見学することが主目的だった今年(2024年)1月の台湾訪問時では台北近郊の新北市板橋で1泊しました。そして、せっかく台北にいるのだから温泉に入らないのはもったいないと考え、MRTに乗って久しぶりに台北の温泉に入ってまいりました。台北は地下鉄に乗れば温泉に入れるのでとっても便利ですね。今回訪ねた台北の温泉は全てこれまで拙ブログで取り上げている施設ですので、改めて拙ブログで取り上げることは避けますが、その中でも例外的に「北投青礦名泉」だけは今回記事に致します。
北投の温泉街から外れた市街地の中にある「北投青礦名泉」は、かつて「北投温泉公共浴室」という名称で営業しており、2010年には拙ブログでも記事にしております(当時の記事はこちら)。
その後、詳しい時期は忘れてしまいましたが、数年前だったか10年ほど前だったかにリニューアルされ、「北投青礦名泉」という名称で再スタートしております。リニューアル後の当施設については、以前から立ち寄ってみようと思っていたのですが、上述のように空港以外で台北を周遊する機会が無かったため、なかなか訪ねられずにいたのです。


本当にこんなところに温泉浴場があるのかしら、と思ってしまうほど温泉地らしくないごくごく普通な台北の市街地にあるのがこの浴場。上画像が正面玄関とその内部にある受付(番台)の様子です。ビルの1階と2階が温泉浴場となっており、1階が裸で入る大衆浴場で2階は個室風呂という基本的な構造はリニューアル前と同様なのですが、料金は大幅にアップしており、以前は1階大衆浴場が80元で2階個室風呂は250元だったものの、現在大衆浴場は150元で個室風呂は400元となってしまいました。倍近い上昇率には驚いてしまいますが、台北は何でもかんでも物価が高騰していますから、仕方ないのかもしれません。
リニューアル後の大衆浴場の様子を見てみても良かったのですが、この時は誰にも邪魔されずに一人で湯浴みしたかった気分だったので、番台でその旨を伝えて400元を支払い、個室風呂がある2階へと上がります。


階段を上がってすぐのところに上画像のカウンターがあり、カウンターを囲むように個室風呂が並んでいます。ここで改めて個室風呂を利用したい旨を伝えると、利用可能な個室を案内してくれます。なお画像は写していませんが、このカウンターの左手にはドクターフィッシュの足湯があります(有料ですよ)。


今回私が案内された浴室がこちら。狭くて飾り気が無く圧迫感しかなかった以前の個室風呂とは違い、以前の約1.2~3倍ほどの広さが確保されたり、部位によって用いる建材を変えたりと、リニューアル後の個室風呂は大幅な仕様変更がなされており、これなら快適に入浴できそうだと期待に胸を膨らませながら・・・


温泉のコックを開けて空っぽの浴槽にお湯を張り始めました。コックのところに書かれた文字のうち、「自来水」は普通の水道水で「熱青礦」は源泉から引いている熱い温泉です。なお「冷青礦」のコックは全開にしても何も出てきませんでした。この浴場に引かれているお湯は北投温泉の青礦と呼ばれているタイプのもので、秋田県の玉川温泉並みに強烈な酸性です。そのためかリニューアルして10年前後なのに、既に湯口周りは強酸にやられてボロボロになっていますね。源泉のままでは熱くては入れないので、相当な量の水道水で薄める必要があります。


お湯を注ぎ始めてから5分強で浴槽にお湯が溜まりました。温泉だけではなく水道水も大量投入していたので、早くお湯が溜まったのでしょう。
湯船のお湯は一見すると無色透明に見えますが、よく見るとほんのり黄色や緑色を帯びているようでもあります。上の画像を見る限りではその名の通り青っぽい色にも見えますね。この青礦は、いわゆる白濁硫黄泉のようにお湯から硫黄の香りが漂ってくるわけではないのですが、湯面からは酸っぱい匂いがほんのり香ってきます。そしてちょっとでもお湯を口に含むと強烈な酸っぱさが口腔内を刺激してきます。下手に口に含むと歯にダメージを与えてしまうかと思いますので、もし口に入れてしまったらすぐに真水で漱ぐことをおすすめします。

この浴室内で服を脱いで実際に湯船へ入ってみますと、大量加水しているにもかかわらず強酸の猛烈な刺激性は弱まっておらず、カラッカラに乾燥した東京の冬で荒れ放題の私の肌にこの強酸性のお湯がたちどころにしみ込んで、ヒリヒリとして痛いのなんの。湯加減はちょうどよいのですが、とにかく荒れた私の肌には酸の刺激が強すぎてしまい、あまり長湯できませんでした。これはお湯が悪いのではなく、私の弱い肌が悪いのです。もっと言えば、数年前までは強酸性の温泉でも問題なく入れた私の体が、ここ数年で急激に老化し、乾燥や刺激に弱くなってしまったことが原因なのです。あぁ悲しい。以前は強酸性だろうがアルカリ性だろうか強食塩泉だろうが不衛生そうな野湯だろうが、どんなお湯でもヘッチャラで入れたのに、最近は体が刺激を受け付けなくなってしまったようです。かく言う私も肌荒れしていない冬以外に入浴すれば大丈夫だったのかもしれません。
強い酸のお湯ですから、それこそ一部の皮膚疾患などには効果覿面でしょうし、草津温泉や玉川温泉で期待されるような効能もここで十分に得られるかと思います。

なお、北投から稜線を挟んだ東側に広がる行義路温泉では、強酸性ではなく、比較的刺激がマイルドな白濁した酸性の硫黄泉に入れます。もちろん行義路温泉についても拙ブログで過去に何度か取り上げていますので、宜しければご覧ください(台湾の目次から当該ページへ飛んでください)。


台北市北投区中央北路一段12号
電話(02)2895-3030

24時間営業 無休(ただし春節の大晦日のみ18:00~翌朝まで休業)
大衆浴場150元
個室風呂400元

私の好み:★★+0.5
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台中市 清新温泉飯店(日帰り入浴)

2024年02月26日 | 台湾

(2024年1月)
台中市の近郊には麒麟峰温泉など数は少ないものの温泉が点在しています。今回は高鐵(台湾新幹線)台中駅から比較的近い位置にある「清新温泉」を取り上げます。高鐵台中駅から比較的近いと申し上げたものの、約6kmほど隔たりがあるため車で10分強はかかり、しかも結構急な坂道を登り詰めた丘の上の立地しているので、迂闊に駅から歩こうとするとえらい目に遭います。レンタカーなど使えない場合はタクシーを利用しましょう。ちなみに私はレンタカーで現地へ向かったのですが、ナビとして使ったGoogleマップは、なぜか表側の道ではなく、ホテル裏手の山に広がる墓地の中を貫く細い一本道を案内したため、本当にこの道で良いのだろうかと不安を抱きながら運転するはめになりました。


場所柄、車でのアクセスを前提にしているものと思われ、駐車場はかなり広く、余裕を持って止められます。この正面玄関から入館し・・・


ホテルのフロントで温泉に入りたい旨を伝えると、受付はここではなく、1フロア下ったB1階の専用カウンターへ行ってほしい、とのこと。上述したようにこのホテルは小高い丘の上に建っているため、ロビーの窓からの眺望がすばらしく、台中の市街地を一望できます。


フロントの左手には下へ向かうエスカレーターがあり、その入口には鳥居をモチーフにしたと思しき大きなオブジェが設置されていました。温泉イコール日本というイメージがあるようですので、日本を象徴するような飾りとして鳥居を設置したのかしら。
このエスカレーターで下って、その先にあるカウンターで改めて入浴したいと伝えると、ここはB2階だから、1フロア上がってくれ、とのこと。結構な初見殺しの構造をしているホテルなんですね。エスカレーターではB1Fへ行けそうにないので、近くにあったエレベーターでB1Fへ向かったのでした。


B1Fでエレベーターを降りると、SPAのスタッフがすぐに対応してくれました。料金を支払い、引き換えにロッカーキーがついたリストバンドを受け取ると、スタッフが更衣室及び内湯の入口まで案内してくれました。この入口は一見するとシャッターのように見えるのですが、リストバンドをドアのセンサー受信部にタッチすると、シャッターのようばドアが右手にスライドして開く仕組みになっています。

ロッカーは貸与された鍵の番号の箇所を使うことになります。さすがに高めの料金設定だけあって更衣室内はとっても綺麗で使い勝手良好です。各ロッカー内にはタオルが用意されていますので、水着さえ持参すれば入浴できます(といっても水着だけ持って台湾を旅行する人なんてほとんどいませんよね。失礼しました)。

SPAには水着着用の屋外温泉プールと、裸で利用できる内湯及びサウナがあります。
まずは水着着用の屋外温泉プールへ。



屋外温泉プールには複数の浴槽があり、ぬるかったり適温だったりジャグジーがついていたり打たせ湯があったりと、いわゆるSPAに相応しい各種設備が用意されており、綺麗でよく整備されているため、気持ち良く利用できるのですが、どの浴槽も温泉らしさはほとんど感じられず、本当に温泉を使用しているのか疑わしいところ。


一方、更衣室の奥に設けられている男女別の内湯は日本のように裸で入るタイプで、水風呂、普通の湯加減、ぬる湯の3つの浴槽があり、窓に面している主浴槽のぬる湯は微睡んでしまう37℃くらいの湯加減。私は普通の湯加減の浴槽とぬる湯浴槽を何度も往復しながら、最終的にぬる湯浴槽でうたた寝してしまいました。ちょっと天井が低くて開放感に欠けるのですが、でも落ち着いた雰囲気があり、客層も悪くないので、のんびりゆったりと湯あみして寛ぐことができるかと思います。

お湯は無色透明で無味無臭。やはり温泉らしさはあまり感じられません。ホテルの公式サイトによれば日本の中央温泉研究所に分析を依頼して分析表を発行してもらっているらしいのですが、訪問時にはその分析表を確認することができず、また公式サイトでもデータの内容を見ることはできませんでした。麒麟峰といいこの清新といい、台中市近郊の温泉はどこもお湯の個性が乏しくて掴みどころが無く、入浴しても温泉らしさが体感しにくい泉質であるように思われます。本当に温泉のお湯なのかと疑いたくなるようなお湯なのですが、とはいえ内湯とりわけぬる湯浴槽は副交感神経が優位になる湯浴みを楽しめ、存分にリラックスすることができました。なお更衣スペースと内湯の間にはサウナもありますので、サウナ好きの方にも気に入っていただけるかと思います。

今回記事では取り上げておりませんが、個室風呂もあるそうですので、宿泊の際に利用してみてはいかがでしょうか。
台湾新幹線で旅行する途中で利用するのも良いですし、付近には台中エリア屈指の観光名所である彩虹眷村がありますので、その観光ついでに立ち寄ってみるのも良いかもしれません。


台中市烏日区温泉路2号
公式サイト

営業時間8:00~22:00 (最終受付21:30)
ただし毎週火曜8:00~12:00はメンテナンスのため休業
500元
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★

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廬山温泉 仁愛郷農会農特産品展售中心

2024年02月21日 | 台湾

(2024年1月訪問)
前回記事で取り上げた廬山温泉の源泉付近から温泉街へ戻る途中、歩道に面して建つ施設の塀から湯気を立てながらお湯が捨てられている光景を目にしました(上画像)。あれれ?と思って塀の隙間から内側を覗いてみますと、露天風呂のようなものがあるではありませんか。


ダメ元でこの塀を擁する「仁愛郷農会農特産品展售中心」と書かれた建物を訪ねてみることに。位置としては源泉へ向かう歩道の入口付近、警光山荘の斜前に当たります。はたして旅館ではない施設でも温泉に入れるのでしょうか。


農会農特産品展售中心、つまり地元農協の特産品販売センターといったところでしょうか。でも観光客の姿がすっかり消えてしまった現在の廬山温泉で商売などできるはずもなく、保存の利く飲料や乾燥した物などが僅かに売られている程度で商売っ気はほとんど感じられません。
玄関を入ってみますと、中から帽子をかぶったお爺さんが出てきて、要件を聞いてきます。そこで私が「温泉に入りたい。水着は持っている」と伝えますと、300元と即答してくれました。ちょっと高いかなぁと思いつつも、お風呂に入ってみたい欲求の方が勝ったため、300元をお爺さんに手渡すと、お爺さんはお金をズボンのポケットにねじ込み・・・


あそこで着替えなさい、と建物裏手の更衣室を指さしたのでした。2室ある更衣室にはそれぞれシャワールームが併設されており、空いている方を使えば良いのですが、台湾の古い温浴施設によくある話で、このシャワー室は薄暗くジメジメしているため、この手の雰囲気に慣れていないとちょっと着替えにくいかと思います。


さて、水着に着替えたら露天風呂へ向かいましょう。
茶具やいろんなものがゴチャゴチャとたくさん置かれっぱなしになっているテーブルの前を通過すると・・・


こちらが塀の隙間から見えた露天風呂です。
いわゆる岩風呂のような構造で、面積自体はそこそこ広いのですが、頭上は落ち葉除けのネットで覆われており、また周囲の塀などで囲まれているため、露天風呂に期待したくなるような開放感はあまり得られません。


こちらは温泉の投入口。「熱水」と書かれた配管から結構熱い温泉が注がれ、その右手の配管からは冷水が投入されています。配管を覆い隠さず剥き出しにしちゃっているのが、いかにも台湾らしいところ。この配管の後ろに黒くて丸いタンクが見えますが、源泉から引いてきたお湯は一旦このタンクに貯められ、適量が浴槽へ注がれた後、余剰のオーバーフローが道路へ捨てられていたのでしょう。


湯加減は日本人好みの41℃前後で、なかなか良い湯でしたよ。廬山温泉らしいお湯で、ほぼ透明ですがほんのりと黄土色を帯びており、カルシウム分を感じさせてくれる土類泉的な味と引っかかる浴感が得られます。湯使いはおそらく加水かけ流しかと思われます。


ちなみに、露天風呂には「大衆池開放時間」というものが設定されているようですが、私はこの時間を過ぎた時間に入っても全く問題なく、他のお客さんも同様に設定時間を無視して湯浴みを楽しんでいらっしゃいました。そのあたりの鷹揚さも台湾のいいところでもあります。

南投県仁愛郷榮華巷45號

入浴時間9:00~10:00, 15:00~22:00
(しかし本文中でも述べたようにこの時間は守られていないようです)
300元
ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5

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台湾 廬山温泉の現状(2024年1月)

2024年02月16日 | 台湾
(2024年1月訪問)
拙ブログでは珍しく鮮度の良い情報を記事に致します。
私は2024年1月に数日だけ台湾へ出かけてまいりました。その主たる目的は4年に一度行われる総統選の様子を見学することでしたが、せっかく台湾へ来たのですから温泉もいくつか巡ってきました。
今回の記事ではその中でも日本統治時代から温泉地として台湾の方々に長年親しまれてきた南投県・廬山温泉の現状についてお伝えいたします。

現状をお話しする前に、ここ数年の廬山温泉を巡る状況について簡単にご説明します。
拙ブログでも過去記事でお伝えしておりますが、日本統治時代に富士温泉と呼ばれた廬山温泉は、急峻な地形が災いして土砂災害に遭いやすく、ここ20年近い間でも大雨に伴う土砂災害に何度か見舞われています。2008年や2012年6月の豪雨では土石流が温泉街を集中的に襲い、谷底の温泉旅館は一部が倒壊し、あるいは1階部分が悉く浸水して、甚大な被害が発生しました。2012年6月の災害については拙ブログの過去記事をご参照ください。

さらに2023年8月には台風が一帯を直撃して再び土石流が発生。また周辺の山肌も崩壊して山崩れも発生。廬山温泉は惨憺たる姿と化してしまいました。当時の様子を捉えたニュース映像がYoutubeに複数上がっていますので、その中のいくつかをご紹介いたします。




このように雨や地震などですぐに災害が発生してしまう非常に危険な状況のため、地元の南投県当局は廬山温泉を閉鎖し、温泉街を代替地へまるごと移転する計画を立てていますが、この移転計画は全くといって良いほど上手くいっていません。以前から廬山温泉で旅館を営んでいる業者の多くが無許可であり、資金調達ができず、移転に関する補償を行政から受けることができないためです。

さて上述のように、私が廬山温泉を訪ねたのは2024年1月。2023年夏に発生した台風被害の惨状がまだ生々しく残っていました。ここからは、その時の様子を画像と共にご紹介してまいります。


14号線を東進して廬山温泉エリアへとやってまいりました。温泉街に近づくにつれ、道路の舗装面が割れて凸凹になり、砂埃がしきりに立つようになってくるのですが、道路右手の谷側の視界が妙に開けていると思ったら・・・


温泉街手前にある公共駐車場は斜面崩壊によって基礎が大きく抉れてしまい、いまにも谷側へ倒壊しそうな状況でした。応急的な仮設の柱を立てることによって辛うじて倒壊を免れていますが、もし今後地震や風水害が発生したら、ひとたまりもありません。


川沿いに広がっていた温泉街の建物はことごとく姿を消し、道路も消失しています。その一方で災害復旧工事が行われており、仮設の砂利道や橋は一般の方も通行できます。


道路のどん詰まりには小規模な旅館や飲食店が立ち並んでいますが、多くは休業しており、一部の飲食店のみ営業していました。


廬山温泉の象徴的な景色であるこの吊橋ですが・・・


橋の手前には「川の土石流堆積がひどく安全性に影響が出ているので、もし必要なければ通行しないでください」との看板が立っていました。とはいえ、見たところそこまで危険だとは思えなかったので、自己責任で渡ってみることに。



かつてこの吊り橋は結構な高度感がありましたが、今回吊り橋を渡ってみたところ、土石流災害によって河床が埋め尽くされ、谷状の地形が失われて、以前とはまったく異なる景色に変わり果てていました。周辺の旅館は下層階が完全に土砂で埋まり、廃墟と化していました。


吊り橋を渡った対岸も旅館などが建ち並んでいますが、多くは休業中。わずかな商店や宿だけが開いていましたが、週末だというのにここを通る観光客の姿はほとんどいません。


川の上流に向かって歩いてゆくと、営業している温泉旅館を発見。


警察の保養所である「警光山荘」は休業しているようでした。


川沿いの遊歩道で上流へ向かうと廬山温泉の源泉があり、その途中にも商店が立ち並んでいるのですが、どのお店も閉まっていました。完全なシャッター商店街です。


さて、私がなぜ災害後の廬山温泉を訪問したかったのか。その理由は、源泉付近が以前とすっかり姿を変え、実質的なキャンプ場になってしまったという噂を知ったからです。源泉に向かう川沿いの遊歩道を進んでいきましょう。


途中で土砂崩れのため通行できなくなるのですが・・・


その手前には、土石流の影響で斜めに傾いでしまった階段がありますので、これで河原へ下りてみますと・・・


噂通り、かつては深い渓谷だった廬山温泉の源泉付近は土石流によって埋まって広い河原と化してしまい、その広い河原にはいくつものテントが張られ、多くの方々がキャンプを設営していました。


災害後も源泉はまだ活きており温泉の湧出も続いているのですが、そこから温泉街へお湯をもってゆくホースの一部が外れて河原へ漏れているらしく、キャンパーたちが河原に穴を掘ってそのお湯を溜め、水着に着替えて野湯を楽しんでいました。


こちらは源泉(温泉頭)にあるお茶屋さん。かつては飲料や温泉卵を売っており、足湯もあり、頼めば露天風呂にも入らせてくれました。拙ブログでも以前取り上げたことがありますが(当時の記事はこちら)、当時の画像と2024年1月の画像を比較すると、大量の土砂で埋まることにより河床が5~6メートルほど上がってしまったことがわかります。また建物も半壊状態になっていることが見て取れます。源泉のお茶屋さんも廃墟になってしまったのでは・・・


そう思って建物の脇から階段を上がると、逞しいことにこの状態でも営業を続けており、店のお爺さんは出来上がったばかりの温泉卵を抱えて店の外へ出ていきました。


またお店の下層にあった露天風呂も残っており、この日もお湯が張られてお客さんが湯浴みを楽しんでいました。



お店の周りでも温泉が湧き続けており、まだまだ廬山温泉の源泉は健在であることを確認することができました。



2023年夏の台風襲来による土石流災害で廬山温泉では甚大な被害が発生し、温泉街は廃墟同然となってしまい、源泉付近の渓谷も景色が大きく変わってしまいましたが、むしろその状況をキャンプすることで楽しもうとする台湾の方々の逞しさには、ただただ感心するばかりです。
とはいえ廬山温泉一帯が災害が発生しやすい場所であることに変わりはありませんので、あまり迂闊に当地を訪れることはお勧めしません。


ところで、廬山温泉の代替地として行政側が用意しているのが、南投県埔里近郊の福興エリアです。
このエリアについては昨年も拙ブログでご紹介しましたが(昨年の記事「福興温泉エリア(廬山温泉移転先)の現状」はこちら)、2024年1月現在(上画像)も造成されたままの空き地が広がるばかり。見た感じでは昨年から全く進展が無いのです。


インフォメーションセンターや農協の直売所等も、昨年同様に常時閉鎖されたままで開く気配がありません。しかしながら、この造成地各区画も既に買い手がついているらしいので、今後徐々に開発が始まってゆくのかもしれません。

最後に、移転に消極的な廬山温泉の旅館業者の嘆きニュース映像になっていましたのでご紹介します。
内容を簡単に言ってしまえば「お金がないのにどうやって移転するんだ」ということです。


福興温泉エリアは表向き廬山温泉の代替地として開発されましたが、どうやら廬山温泉の業者がこの新天地で再出発できるわけではなく、資金力がある全く別の資本家が新たに温泉リゾートを開発してゆく形になりそうです。高速道路の出入口から近く、また中国大陸からやってくる団体観光客が大好きな中台禅寺にも近いため、展開によってこの広大な空き地は大化けするかもしれません。

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房総半島 入浴できない鉱泉めぐり

2024年02月12日 | 東京都・埼玉県・千葉県
(2023年9月訪問)
今回の記事は久しぶりに小ネタを取り上げます。房総半島にはマニア受けするような、入浴できないけれども興味深い鉱泉がたくさん湧出していますが、今回はその中でも比較的見つけやすく訪問も容易な2ヶ所をご紹介します。

●大多喜町某所のガス井戸
夷隅郡の大多喜町と言えば、千葉県内に地産地消の天然ガスを供給している都市ガス会社「大多喜ガス」の名称として、千葉県内では有名かと思われます。いすみ鉄道の大多喜駅前には「天然ガス記念館」もあり、また当地は房総エリアにおける天然ガス掘削発祥の地でもありますので、大多喜は天然ガスの街と言っても過言ではないでしょう。

房総エリアの地下には膨大な天然ガスが埋蔵されていますが、ガスだけで湧出することはなく、水溶性ガスとして鉱泉と一緒にメタンガスが地下から上がってきます。温泉マニアとしてはガスと一緒に存在しているこの鉱泉が目当て。


大多喜町の中心部から養老渓谷方面へ西進し、山間部の集落に入って細い路地を進んでゆくと、上画像のような、飛び石で川の対岸へ渡る長閑な場所に行き着きます。ここをちょっと下りてみると・・・


丸いトタンの屋根で覆われた井戸を発見。一定時間毎にジーっという電磁音が聞こえるので、ポンプで汲み上げているのでしょう。この井戸の中を覗いてみると・・・


ヒューム管の井戸にはタールのような黒い鉱泉が張られていました。表面には白くて細かい泡が浮いています。
ご当地の観光案内地図ではこの井戸を「ガス井戸」と称しており、おそらくはメタンガスを伴いながら、この黒い鉱泉が汲み上げられているものと思われます。この黒い鉱泉に触ってみますと、強いツルスベ感が伝わり、口に含んでみるとほろ苦味が感じられました。いわゆる黒湯の類であり、いわゆるモール泉のようなタイプの鉱泉です。でも「ガス井戸」という名前のわりには、メタンガスの存在を感じさせるような匂いを嗅ぎ取ることはできませんでした。私の鼻が悪いだけかな。


井戸内の鉱泉の水温は18.2℃。


井戸から川へちょっと下ると、井戸の水が川へ排出されている箇所があり・・・


その水を手にしてみると、この画像でもわかるほど濃い茶褐色を呈していました。
暑い日にこの鉱泉を浴びたら気持ち良いだろうなぁ。


●増間(真杉)鉱泉
続いて、南房総市の旧三芳村エリアへやってまいりました。旧三芳村の増間地区には平家の落人伝説が残ってるそうですが、この増間地区には温泉マニアが喜ぶような鉱泉の跡も残っており、いまでも鉱泉が湧き続けているんだそうです。


鬱蒼と茂る木々の奥へ入ってゆくと・・・


コンクリブロックで組まれた筒状の構造物を発見。


上部に「真杉鉱泉」と記されたこの構造物の下部には蛇口が取り付けられており、開けてみると・・・


無色透明の鉱泉が出てきました。
この鉱泉は増間鉱泉と呼ばれたり、真杉鉱泉と呼ばれたり、あるいは三杉鉱泉と称されたり、名称には何パターンかあるようです。かつて当地にはこの鉱泉で湯治をする鉱泉宿があり、皮膚疾患に効能があったそうですが、関東大震災の頃に閉鎖されてしまったようです。


蛇口直下の温度は23.2℃。湧出時の温度はわかりませんが、温泉を名乗るのであれば1.8℃足りませんね。ギリギリのところで冷鉱泉に分類されてしまいます。
上述した大多喜町の「ガス井戸」で湧く鉱泉は黒いモール泉のようなタイプでしたが、この鉱泉は無色透明で、はっきりとしたタマゴ味とタマゴ臭が感じられました。いわゆるタマゴ水です。総硫黄の量が分からないので何とも言えませんが、もし総硫黄が2.0mg以上あれば単純硫黄冷鉱泉に分類される泉質かと推測されます。この鉱泉も暑い日に浴びたらさぞ気持ち良いことでしょう。

房総エリアの鉱泉はまだまだ面白いところがたくさんありますので、また訪問する機会があれば取り上げます。

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