温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯沢温泉 荒川いこいの家

2020年05月24日 | 新潟県

今回は新潟県湯沢温泉を取り上げます。湯沢といっても、全国的な知名度を有する中越地方の越後湯沢ではなく、下越の関川村に湧く湯沢温泉です。越後湯沢には新幹線が停まり、多くの旅館やスキー場、商業施設の他、バブル期に建てられた高層リゾートマンションが随所に屹立していますが、知る人ぞ知る下越地方関川村の湯沢温泉は、行き止まりの路地の左側に小さな旅館が3軒ほど、右手にお寺と公共駐車場、そして公営施設「荒川いこいの家」が並ぶばかり。新潟県内にあって同じ名前を名乗る両温泉地はあまりに対照的であり、関川村の湯沢温泉は、バブル期に誰かさんがスキーへ連れて行ってくれた松任谷由実の世界観から何億光年も離れている、鄙びきった無名の温泉地です。


この湯沢温泉では以前に拙ブログで紹介したことのある共同浴場で入浴することができますが、もう一つ公衆浴場として利用可能な施設が今回ご紹介する村上市営「荒川いこいの家」です。あれ? この湯沢温泉って関川村にあるのに、どうしてお隣の村上市が運営しているんだろう。いちいち考えていたら前に進めなくなりそうなので、ここではその辺りの事情をスルーさせていただきます。


この施設は地域の林業促進を目的として設けられており、越後杉を使って建てられたんだとか。
さて玄関を入って靴を脱ぐと真正面にお座敷があり、私が訪ねた時にはお年寄りの皆さんで賑わっていました。その座敷の手前右側に小さな受付カウンターがあり、ここで入浴利用を申し出て料金を支払うのですが、利用に際しては台帳への記名を求められ、60歳以上か未満か、障害者手帳があるか、一人で入浴できるか、どこから来たのか(村内か県外かなど)、などといった事項を記入することになります。一応公的施設であり村上市民の税金を使って運営しているので、いろんなことを透明にしようということなのでしょうか。ま、利用の際には面倒くさがらずに協力してあげましょう。
お風呂は男女別に分かれており、座敷に向かって左が女湯、右が男湯です。でも案内が目立っていないのでわかりにくいかと思います。かく言う私も迷った一人。どちらに男湯があるのかしら、と狭い館内を右往左往してしまいました。


まだ比較的新しい施設だけあって脱衣室は綺麗。流し台が2つにドライヤーが1つ備え付けられ、使い勝手もまずまずです。脱衣室のスライドドアを開けた向こう側は浴室。この浴室もなかなか綺麗で清潔なのですが、そんな見た目以上に私を驚かせてくれたのが、浴室内に漂う硫黄臭でした。湯気とともに茹で卵の卵黄のような匂いが、弱いながらもはっきりと感じられたのです。川の対岸で湧く雲母温泉のお湯からは確かに淡いタマゴ臭が漂ってきますので、そのご近所である当地の温泉からも同様の匂いが感じられても不思議ではないのですが、それにしてもこの湯沢温泉は金気が強いイメージばかりがあったので、まさか浴室内に漂うほどのタマゴ臭が感じられるとは意外でした。



男湯の場合は入って右手に洗い場があり、5個のシャワーが並んでいます。ひとつひとつの間隔が広いので、隣のお客さんとの干渉を気にせず使用することができるでしょう。アメニティーの備え付けもあるので、タオル一枚持参すれば入浴できちゃいます。なお、この洗い場と反対側(入ってすぐ左側)には立って使うシャワーも2個設置されています。


浴槽は一つのみですが、目測で4m×3mほどの大きさがあり、おそらく10人程度なら同時に入れる大きさがあるのではないかと思われます。タイル張りの浴槽は黒い御影石で縁取られており、オーバーフローのお湯は浴槽奥にある御影石の溝へ溢れ出る構造になっています。素晴らしいことに、こちらのお風呂では加水加温循環消毒無しの完全かけ流しでお湯を提供してくださっています。


浴槽内部は温泉成分の金気によって赤い色が付着しており、なかんずく湯口の直下は真っ赤に染まっていました。いかに金気の強いお湯であるかがわかりますね。なお、お湯を吐出する塩ビパイプの下には黒い布が敷かれており、これでお湯と一緒に流れてくる固形物を濾し取っています。そのおかげなのか、湯舟のお湯では特に目立った浮遊物は見られませんでした。

お湯の見た目はほぼ無色透明ながら若干白く霞んでいるように見えます。この湯沢温泉は泉質名こそ単純泉なのですが、実際にお湯をテイスティングしてみますと淡い塩味、芒硝の味と匂い、そして上述したように茹で卵の卵黄の味と匂いがマイルドながらもしっかり感じられます。決して単純なお湯ではありません。分析表を見ますと硫化水素が少ないながらもしっかり含まれており、また金気の要素、そして硫酸塩もそこそこ多いことがわかります。溶存物質が969.2mgですからギリギリのところで単純泉に分類されてしまっただけの話であり、実質的にはナトリウム-硫酸塩・塩化物泉と名乗ってもよさそうなお湯なのです。日本全国には単純泉に分類されてしまったばかりについ軽視されがちな温泉が余多存在していますが、この湯沢温泉もその一つであり、単純泉だからといっても決して侮れない非常に個性的で良いお湯なのです。しかもそんな良質なお湯が完全かけながしなのですから、ありがたいことこの上ありません。

設備が整っている上にスペースも確保され、しかもお湯が良いとくれば、地元の方から愛されないはずがありません。私が訪ねた日も次々にお客さんがやってきて、お座敷でおつまみを食べながら、あるいは湯船に浸かりながら、みなさん楽しそうに談笑していらっしゃいました。どうやら当地では狭い共同浴場よりも、綺麗で設備が整っているこの「荒川いこいの家」へお客さんが偏る傾向にあるらしく、共同浴場はいつも空いているそうですよ。


さて冒頭でも申し上げましたように、同じ県内で湯沢を名乗る越後湯沢と当地を比べますと、当地は知名度、施設の数、客の数、お金の流れ方、あらゆる面であまりにもかけ離れており、おそらく新潟県民ですら知らない方が多いのではないかと思われますが、そんな当地が歴史の教科書に載るような大事件と多少なりともかかわっていることを皆様ご存じでしょうか。
「荒川いこいの家」の手前にある松岳寺の境内には、上画像のような石碑が立っており、そこには「桜田門外の変烈士 関鉄之介 就縛の地」と刻まれています。桜田門外の変と言えば老中井伊直弼が暗殺された事件として誰しもが日本史の教科書で学習しますが、この事件において実行部隊の指揮した水戸藩士の関鉄之介は、井伊直弼を暗殺したのち、一旦関西や四国へ逃げ、そして水戸藩へ戻り、そこでも身の危険を感じて今度はなんと越後へ逃げたんだとか。鉄道もない時代に日本国内をそれだけ逃げ回るのですから、その苦労は想像を絶します。しかしいつまでも逃げられるものではなく、この湯沢温泉で潜伏していたところ、ついに捕まってしまったんだそうです。どうしてこんな僻地に逃げてきたのか、どのようにしてこの地を知ったのか、不勉強な私には知る由もありません。捕らえられた関鉄之介は水戸へ送られ、その後江戸の小伝馬町で打ち首に処されたそうですが、囚われの身となって自由を失ってしまった関鉄之介は、最後に浸かった湯沢温泉のお湯をどのように感じたのでしょうか。

なお関鉄之介がお縄を頂戴するまで籠っていた宿は田屋といい、温泉街のドン詰まりを流れる川の対岸にあったようですが、現在その場所は民家になっています。一見すると何もないように思えるこの鄙びた無名温泉地ですが、実は歴史的な有名事件に所縁がある土地だったんですね。


湯沢温泉(3源泉の混合泉)
単純温泉 47.5℃ pH7.5 湧出量測定不能 溶存物質969.2mg/kg 成分総計984.7mg/kg
Na+:262.3mg(82.50mval%), Ca++:33.0mg(11.93mval%),
Cl-:204.2mg(42.60mval%), Br-:0.9mg, SO4--:286.2mg(44.08mbal%), HCO3-:92.8mg(11.24mval%), HS-:0.2mg,
H2SiO3:56.7mg, CO2:15.4mg, H2S-:0.1mg,
(平成22年2月8日)
加水加温循環消毒なし

新潟県岩船郡関川村大字湯沢697
0254-64-2277
紹介ページ(村上市公式サイト内)

日帰り入浴9:30~16:30 毎週火曜・年末年始定休
村上市外500円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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勝木・ゆり花温泉 交流の館 八幡

2020年05月19日 | 新潟県
今回記事から新潟県の温泉を取り上げます。


新潟県北部の名勝地「笹川流れ」は私が大好きな場所。奇岩や断崖と日本海の白波が織りなすこの上ない絶景を見るため、私は今までわざわざ東京から何度も足を運んでいるのですが、今回はそんな笹川流れの北の端っこ、旧山北町(現村上市)勝木にある公共施設「交流の館 八幡」をご紹介します。公共施設といっても、このブログでご紹介するのですから、施設内には当然温泉浴場があるのです。


羽越本線勝木駅のちょうど真裏(駅舎の裏側)に徳洲会病院がデンと屹立しているのですが、その並びにかつて山北村立南中学校がありました。しかしながら御多分に漏れず、過疎化少子化に伴って平成8年に廃校となったため、せっかくの立派な校舎を放置しておくのは勿体ないということで、宿泊や温泉入浴ができる地域の交流施設として、平成13年に現在の形へ転用されることになりました。
建物の外観はまさに学校そのもの。大人が入っても大丈夫なのかな、制服を着用しなきゃダメなのかな、宿題やったっけな、好きな子は今日も来ているかな、なんて思いながら、立派な扁額がかけられた玄関の扉を開けると・・・


扉の向こう側には広いホールが続いていました。その奥には事務室がありますので、係員の方に声をかけて入浴料金を支払います。この広さから想像するに、このホールは中学校時代に昇降口として使われていたのではないでしょうか。


浴場へ続く廊下は学校の雰囲気がそのまま残っており、誰しもの胸に残るノスタルジーを喚起してくれること間違いありません。教室だった各部屋からは先生と生徒の声がいまにも聞こえてきそうです。


廊下の突き当たりで上画像のようなステップがあり、ちょっとしたサロンのような空間になっています。このあたりは現在の施設へ改修する際に大きく改築されたのでしょうけど、元々はどんなお部屋があったのでしょうか。このステップを上がった先に・・・


淡い色合いの暖簾がさげられていました。
脱衣室は決して広くはなく飾り気も無いものの、必要十分なスペースは確保されており、綺麗に維持されていますので、使い勝手は問題ありません。



お風呂は男女別の内湯ひとつずつあるのみ。窓から陽の光が降り注いで明るいものの、残念ながら曇りガラスであるため、外の景色を眺めることはできません。ここでは湯に浸かることに専念しましょう。
室内には後述する浴槽がひとつの他、洗い場が設けられ、シャワー付き混合水栓5基が横1列に並んでいました。なお浴室入口には某給湯機メーカーの操作パネルが取り付けられていましたので、シャワーから出てくるお湯は沸かし湯かと思われます。


浴槽の大きさは(目測で)4×2.5メートル程度の長方形で、10~11人は同時に入れそうなサイズを有しています。岩を並べて縁取っているため岩風呂のように思われますが、浴槽内部には石板タイルが貼られていますので、完全な岩風呂ではありません。装飾性と実用性を両立させた浴槽です。


お湯は浴槽右奥の筧から投入されていました。筧には白い析出が付着しており、温泉成分の濃さがビジュアルとして伝わってきます。私が利用した時にはちょっと熱めの湯加減でしたが、脱衣室に掲出されていた張り紙には、(湯口のお湯は)温度調整ができないと書かれており、熱かったりぬるかったりする場合は各自水道で調整してほしいとのこと。実際に訪問時の先客は水道の蛇口を全開にしてジャバジャバと加水していました。

お湯の見た目は無色透明で、薄い塩味と芒硝の風味が感じられます。そして湯中ではサラスベの軽やかな浴感と硫酸塩泉的な少々引っかかる感覚が混在して肌に伝わってきました。なお温泉分析表の知覚的試験欄では「苦味 微硫化水素臭」と記載されていたのですが、特に苦味のようなものは得られず、硫化水素臭に至ってはまったく感じられませんでした。そもそも温泉分析表では総イオウ量が0なので、どうして「微硫化水素臭」という記載がなされたのか、よくわかりません。こちらの源泉はここから約1km上流へ遡ったところにあるらしいので、もしかしたら、そこから引湯する過程で湧出時にはあったお湯の特徴が飛んでしまったのかもしれませんね。でも総じて良いお湯であり、かけ流しでもあるので、個人的には満足のゆく湯浴みを楽しむことができました。

訪問時、私は開業時間の朝10時ちょうどに入館したのですが、すでに浴室では2〜3名のお爺様方がシャワーや湯浴みをなさっていました。おそらく地元民向けに少々フライングで開けているのでしょう。でも、そのお爺様たちが上がってしまった後は、ひたすら独占状態が続き、結果的には」とても静かな環境での入浴となりました。そもそも過疎地なので人は少ないですし、当地を訪れる観光客は同じ源泉を使っていて、露天風呂や休憩所がある上に料金が100円も安い「ゆり花会館」へ行ってしまいますから、誰にも邪魔されずゆっくりのんびりお風呂に入りたい方はこの「交流の館 八幡」が良いかもしれませんね。また、こちらは掛け流しで消毒もなく加温加水も行われていませんから、お湯の質にこだわる方も同様にこちらを選ぶことになるでしょう。


Na・Ca-硫酸塩温泉 54.5℃ pH7.9 250L/min(動力揚湯) 溶存物質2669mg/kg 成分総計2670mg/kg
Na+:565.0mg(64.14mval%), Ca++:265.7mg(34.60mval%),
Cl-:156.1mg(11.66mval%), Br-:0.5mg, I-:0.3mg, SO4--:1559mg(86.06mval%), HCO3-:36.0mg,
H2SiO3:61.8mg,
(平成27年6月16日)
加温循環なし
限定的な加水あり(浴槽にお湯を張るときのみ温泉供給量の不足を補うため水道水で加水)

新潟県村上市勝木1099番地
0254-60-5050
ホームページ

入浴利用10:00~21:30(最終受付21:00) 第4月曜・年末年始休業
350円
ロッカー・シャンプー類・ボディーソープあり

私の好み:★★+0.5
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湯の瀬温泉 湯の瀬旅館 その3(大露天風呂)

2020年05月12日 | 山形県
前回記事「湯の瀬温泉 湯の瀬旅館 その2(内風呂)」の続編です。

その1ではお部屋や食事、その2では24時間入れる内湯の様子を取り上げました。そして最後となる今回(その3)では、「湯の瀬温泉 湯の瀬旅館」の目玉である巨大な露天風呂をご紹介します。大変長らくお待たせいたしました。ようやく当地の象徴的存在の登場です。湯の瀬温泉で巨大露天風呂を紹介しないだなんて、ニューヨークで自由の女神を、ロンドンでビックベンを、北京で紫禁城を無視するようなもの。でも美味しいお食事や湯量豊富な内風呂を邪険に扱うわけにはいかなかったので、結果的に最後になってしまいました。勿体ぶってごめんなさい。とはいえ、真打ちは殿(しんがり)で高座へ上がるものですから、私個人としてはこうした順序をとることで巨大露天風呂に敬意を払っているつもりなのです。


巨大露天風呂は階段で2階に上がり、長い廊下をどんどん進んだドン詰まりにあります。山間に建てられたこちらのお宿は、奥に長い建物自体が地形の傾斜に沿っており、2階の廊下は途中でステップを挟みながら奥へ行くに従い勾配を登るような構造になっていますので、その先にある露天風呂も旅館の敷地内でも比較的高い位置に設けられていることが推測されます。

前回記事(その2)で取り上げた1階内風呂は24時間入浴可能ですが、この大露天風呂は入浴時間が限られており、夜は通常20時にクローズされます。闇夜に広いお風呂を開けるのは安全上宜しくないという考えによるものだそうです。しかしながら、連休などの繁忙期になると利用時間が延び、私が訪ねた秋の連休では22時まで延長されていました。こちらの脱衣室は1階内風呂の3倍近い広さが確保されているので、ノビノビ着替えることができます。また1階同様にアメニティー類がたくさん用意されているほか、ドライヤーや扇風機などの備え付けもあり、使い勝手良好です。


脱衣室を抜けた先には、いきなり露天風呂が広がっているわけではなく、まずは体を綺麗にする内湯がお客さんを出迎えます。1階のお風呂とは色調こそ違うものの、タイル貼りの実用的な設えであり、広さもこちらの方が若干広い程度で双方とも似たような感じのお風呂と言って差し支えないでしょう。つまりこちらのお宿には男女別の内湯が2種類あるのです。浴室内にはシャワー付き混合水栓が3つ並んでいるほか、1階内風呂と同様に黒い石材で縁取られたタイル貼りの浴槽が設けられ、滾々と注がれる温泉のお湯がその縁から惜しげもなく溢れ出ていました。浴槽の大きさは1階内風呂より一回り大きかったような気がします。


浴室で体を洗ってから奥の引き戸を開けると、そこには大きなドーム状のテントに覆われた巨大露天風呂がお湯を湛えていました。その大きさは、幅約13メートル、奥行約23メートル、深さ1.2メートルとのこと。学校のプールに匹敵する大きさです。人間ですらその大きさに驚いてしまうこと必至ですが、もし小動物がこの露天風呂に対峙したらどんな気持ちになるのでしょうか。「井の中の蛙大海を知らず」と言いますが、夏にカエルくんが迷ってこの露天風呂に入り込んでしまったら、それこそ日本海に飛び込んでしまったかのような錯覚に陥るのでしょうか。いや、その前にゆでガエルになってしまうのかもしれませんが…。


逆の方からこの巨大露天風呂を捉えてみました。奥に行くへ従い徐々に狭まってゆく形状をしており、海のごとく大量のお湯を湛えるお風呂全体が、まるで海洋を進む船体のようなスタイルをしているのであります。
なお脱衣室や内湯は男女別ですが、この露天風呂は混浴です。しかしながら女湯側の一部には囲いがされており、女性でも露天風呂に入れるよう配慮されています。また湯浴み着を着用しての入浴も可能です。


宿の説明の寄れば深さ1.2メートルとのことですが、私が実際に入った感覚によれば、奥に向かって左側が深く、右に向かって徐々に浅くなり、右側の槽内側面にはステップが設けられていました。1.2メートルという深さは、泳げる人にとっては大したことありませんが、泳げない人にとっては多少の恐怖を覚えるかもしれません。従いまして泳げない金槌さんがこのお風呂に入る場合は、できるだけ右側を目指すようにしましょう。あるいは上画像のように浮き輪も用意されていますので、これにつかまって入浴するのもよいかもしれません。私は水泳が大好きなので全く怖くありませんでしたが、それでもこの浮き輪を使い、プカプカ浮いて浮力を感じながらのんびりと気持ち良く湯浴みさせていただきました。


浴槽自体は岩風呂であり、ゴツゴツとした大きな岩が屹立しながら並べられています。岩とお湯が接する湯面より上の表面には、温泉成分の白い析出がビッシリと付着していました。溶存物質389.7mg/kgと比較的薄いタイプのお湯でありながら、これだけしっかり析出が付着するんですね。なかなか興味深い現象です。


繰り返しますがこの露天風呂は小中学校のプールと比肩するほどの広さを有しており、そこへお湯を張っていますので、いくら湯量が豊富でも湯加減にムラができてしまいます。そこでこのお風呂では複数箇所に湯口が設けられていました。それでも手前側が比較的熱く(適温に近く)奥がぬるめでしたので、好みの湯加減にお風呂の中を移動すると良いでしょう。

お湯は無色透明でほぼ無味無臭です。前回記事でも申し上げましたが、アルカリ性でありながら硫酸塩が比較的多く、それゆえに岩の表面を白い析出が覆っているものと思われます。またアルカリ性単純泉にもかかわらずツルツルスベスベといったような浴感ではなく、少々の引っかかりを感じるアッサリした浴感であることも特徴のひとつであり、これも温泉に含まれる硫酸塩の影響であろうかと推測されます。無色透明の硫酸塩泉は、その没個性な見た目とは裏腹にパワフルな温浴効果を発揮しますが、アル単なのに硫酸塩泉っぽいこのお湯でも同様に力強い温まりが得られ、露天の奥のぬるいゾーンで長湯していても、湯上がり後には不思議なほど体の芯から強力にあたたまりました。
あ、そうそう申し忘れましたが、内風呂・露天共に100%源泉完全掛け流しの湯使いです。素晴らしいですね。

プールのような巨大露天風呂に浸かって、他ではなかなか体験できない湯浴みを楽しむのはもちろん、日本海の海の幸に舌鼓を打つこともでき、非常に充実した時間を過ごせました。
人里離れた山奥の温泉で、非日常の世界を存分に楽しむことができるこちらのお宿。温泉ファンなら一度はこの巨大露天に入ってみたいと思うはずですが、宿泊しないと入浴することができませんので、庄内地方をご旅行の際は是非宿泊なさってみてはいかがでしょうか。


佐藤2号源泉
アルカリ性単純温泉 48.1℃ pH9.3 掘削動力揚湯 溶存物質389.7mg/kg 成分総計389.7mg/kg
Na+:55.1mg(45.98mval%), Ca++:55.9mg(53.45mval%),
Cl-:10.7mg, SO4--:222.5mg(89.04mval%), HCO3-:6.8mg, CO3--:4.2mg,
(平成27年1月23日)

山形県鶴岡市戸沢字神子谷103-2
0235-45-2737
ホームページ

日帰り入浴不可
宿泊プランについては公式サイトか電話でご確認ください。

私の好み:★★★
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湯の瀬温泉 湯の瀬旅館 その2(内風呂)

2020年05月09日 | 山形県
前回記事「湯の瀬温泉 湯の瀬旅館 その1(客室・食事)」の続編です。

前回記事では客室(1~2人用)やお食事について述べてまいりましたが、今回記事ではようやく温泉のお風呂に触れてまいります。でも、まだ焦ることなかれ。湯の瀬温泉名物のプールのような巨大露天風呂は次回(その3)に回し、今回は24時間利用できる内風呂に焦点を絞ります。私は食事の際、好物を最後に残しておく性格なので、このブログでも目玉となる内容は後廻しにさせていただきます。


館内には2種類のお風呂があるんですね。ひとつは名物の大露天風呂。もうひとつは1階の内風呂です。どちらも源泉をかけ流しているのですが、前者は利用時間に制限がある一方、後者は宿泊利用中なら24時間いつでも入浴することができる実用的なお風呂です。今回記事で取り上げるのは後者です。
1階を貫く長い廊下の中ほどに、上画像に写っているような紺と紅の暖簾がさがっています。暖簾をくぐった先にある脱衣室はコンパクトな造りで、きちんとお手入れされているものの、3~4人が同時に利用すると窮屈な感覚を覚えるかもしれません。なお室内の洗面台にはアメニティー類が所狭しと並べられているほか、大きなドライヤーが1台備え付けてありますが、ロッカーはありません。


寒色系のタイルが張られた浴室は、脱衣室同様に比較的コンパクトな空間です。旅先の温泉で非日常の癒しを楽しむというより、旅の汗や垢を洗い流して身を清めることを目的とした、極めて実用的なお風呂です。


洗い場にはシャワー付き混合水栓が3基取り付けられています。


黒い石材で縁取られた浴槽は約2メートル四方。浴槽内は青いタイル張りとなっており、お湯の清らかさがより際立っていました。また黒い縁からはお湯が惜しみなくオーバーフローしており、特に人が湯船に入ると大量のお湯が勢いよく溢れ出し、排水口からの排水が間に合わずに床が洪水状態になっていました。湯量が豊富なのです。


お湯は獅子の口からドバドバ吐出されています。その口の周りは析出で真っ白く覆われており、あたかも白いヒゲをフサフサと蓄えているかのようです。お湯に関する詳しいインプレッションは次回記事で述べますが、こちらのお湯は無色透明でほぼ無味無臭のアッサリとしたタイプであり、アルカリ性でありながら硫酸塩が比較的多く、それゆえ獅子の口の周りには白い析出が付着するのでしょう。また湯船に浸かった際に、ツルスベではなくアッサリ且つ少々の引っかかりを感じるのも、温泉に含まれる硫酸塩の仕業ではないかと思われます。

次回は湯の瀬温泉名物の大露天風呂を取り上げます。

次回記事に続く。
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湯の瀬温泉 湯の瀬旅館 その1(客室・食事)

2020年05月06日 | 山形県

まるでプールのような巨大露天風呂が有名な、山形県鶴岡市の湯の瀬温泉「湯の瀬旅館」。こちらのお宿は日帰り入浴を受け付けていませんので、お風呂に入るならば宿泊しなければなりませんが、それでも全国から多くの温泉ファンがその巨大露天を目当てにこの山奥の秘湯へとやってきます。かく言う私も昨年(2019年)秋に宿泊致しましたので、その時のレポートを3分割にして述べてまいります。

ちなみにこの外観画像はチェックアウト後の朝に撮ったのですが、前日に宿へ着いた時には既に日が暮れた後だったため、辺りは漆黒の闇に包まれており、あまりの暗さゆえ誇張抜きで本当に何も見えず、現地までの細い道を運転しているときは路肩から脱輪しないか不安に苛まれ、やっとのことで現地に到着した後でも、宿の窓からぼんやり漏れる薄明かり以外に光源が見当たらなかったので、車を降りてからはスマホのライトで足元を照らしながら玄関へと向かったのでした。所在地こそ鶴岡市内ですが、その場所は完全に人里離れた仙境と称すべき山奥なのです。


帳場前のロビーからは鯉が泳ぐ池が眺められます。でもこの池の存在を知ったのは、チェックアウト時にロビーでコーヒーをいただいている時のこと。上述のように宿へたどり着いたのは日没後でしたから、その際には池があることに全く気が付きませんでした。私が玄関に入って声をかけると、4畳半程度の小部屋で待機していた女将と思しき女性が、強い庄内訛りの言葉を発しながら、あたかも親戚と接するような人懐っこい感じでお部屋へと案内してくださいました。


昭和の面影を強く残す館内は奥に長く、初めての訪問だとちょっと迷ってしまうかもしれません。私が訪ねた時間帯は、ちょうど各客室へ夕飯の配膳を行う準備の真っ最中でしたが、こちらで働く方は皆さん普段着らしく、しかもその子供たちも一緒に廊下や厨房などにいるため、誰がスタッフで誰がお客なんだか、見分けがつきませんでした。総じてかなりアットホームな雰囲気なので、好みが分かれるかもしれませんが、このような宿では着飾らず肩肘張らずに地元の素の姿と接することができるので、私個人としては歓迎です。


今回通された客室は、長い廊下を進んだ奥の6畳半。室内にはテレビと冷蔵庫、そしてエアコンがあり、厳冬期対策のため暖房も設置されています。なお水回りは全て共用のものを使います。一人客向けの至ってシンプル且つリーズナブルなタイプの客室ですが、たまたま運悪く部屋にタバコの臭いが残っていたためちょっと残念でした。また私の携帯電話はauなのですが、この辺りはauのカバレッジの圏外らしく、携帯が使えませんでした。でも、そのかわりお部屋にwifiが飛んでいたので、データ通信の面ではさほど苦労しませんでした。


さて上画像は夕食の様子です。夕食はお部屋出しです。今回は2食付きのプランで予約しました。というか、上述のように辺りには何もない山奥のお宿ですから、素泊まりして外で食事を済ませようということができないのです。私の旅は常に節約重視の一人旅なので、この時も電話予約で受け付けてくれる安いプラン(おそらくネット予約だと表示されないかと思われる)でお願いしたのですが、最安プランとは思えないほど豪勢な献立にびっくり仰天!! フライ(エビ、白身魚)、鯛の塩焼き、お造り、シャケの冷製、ハタハタ、カニ等々、日本海の幸がてんこもりなのです。そしてご当地名産の赤カブも美味のみならず、庄内は米どころですからお米も実にうまい。もちもちして甘みも強いため、ご飯だけでも食が進み、気づけばお櫃を空にしてしまいました。海の幸と大地の恵みで満腹になった私は、食べすぎのためにしばらくその場で身動きが取れなくなってしまいました。コストパフォーマンス的には最高ですね!


こちらは朝食。朝は大広間に移動していただきます。朝も海の幸を中心に、いかにも日本旅館らしいお料理が提供されます。こちらも美味しかった!

さて、まだお風呂のことにはまったく触れていませんが、今回の記事はここまで。
次回記事では内風呂の様子を取り上げます。

次回に続く。
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