温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯田湯川温泉 鳳鳴館

2020年03月28日 | 岩手県
今回記事から再び半年前のネタを小出しする投稿スタイルに戻ります。今回からしばらくの間は、私の温泉活動における本拠地と表現しても過言ではない東北地方の温泉を取り上げます。私はみちのくを湯めぐりしていると心が落ち着くんです。


昨年(2019年)秋に私が向かったのは、岩手県中西部の湯どころ西和賀町。このエリアには燻し銀と称したくなるような、派手さは無いものの味わい深い素敵な温泉が点在していますが、今回私は訪ねたのは湯田温泉峡(※)の一角をなす湯川温泉のどん詰まりに位置する奥の湯地区です。奥の湯地区では「高繁旅館」が最も規模の大きな宿ですが、その巨躯の裏手に隠れるようにひっそり佇む超渋い宿「鳳鳴館」が今回の主役。訪問時は営業しているかわからないほど薄暗かったのですがが、館内の電気が点いていたので、日帰り入浴利用で訪問してみることにしました。
(※)強すぎる正義感のあまり、鬼の首を取って「温泉『郷』が正しい表記です」とご指摘下さる方がいらっしゃるかと思いますので、先回りして掣肘を加えちゃいますと、峡谷に沿って温泉地が点在している特徴を捉えて、ご当地では湯田温泉「峡」という字を意図的に使っております。


湯川温泉は湯治場としての雰囲気が強い温泉地ですが、とりわけこの「鳳鳴館」はその色合いが濃く、渋い温泉が好きな方にはたまらない佇まいです。
その一方で、玄関やドア(引き戸)などには、クレジットカードやQRコード決済などのキャッシュレス決済が使用可能であることを知らせるPOP類やシール(キャッシュレス対応の新しいもの)が掲出されていました。湯治宿の概念を覆す現代的な対応に驚きつつ、引き戸を開けてお邪魔したのですが、いくら声をかけても返事が無く、おそらくお出かけでお留守の様子。


でも玄関の左側には牛乳パックを加工した手づくりの箱がぶら下がっており、「お湯っこ代300円」と書かれていたので、ここに湯銭を納めて入館させていただきました。キャッシュレス決済と並行して、極めてアナログ且つ性善説に基づく方法を残しているところに、特殊相対性理論も真っ青な時空の歪みを感じます。実に素敵で微笑ましく、私としては胸がキュンキュンしちゃいました。


玄関右側の廊下に浴室が2室並んでおり、手前は女湯、奥が男湯です。
脱衣室は棚とカゴがあるだけの簡素な空間ながら、その棚には誰かさんの私物が無造作に置かれていました。いかにも昔ながらの湯治宿といった風情です。なお室内に扇風機はあるものの、ドライヤーはありません。


お風呂は内湯のみ。タイル張りの浴室は相当年季が入っています。男女仕切りの塀にタイル絵が施されているものの、奇を衒った装飾性は無く、至って実用本位な設えです。


片隅には大きな観葉植物が置かれていました。お風呂の湯気に包まれるおかげか、葉が妙にツヤツヤしており、全体的に大きく育っているようでした。


観葉植物と反対側には洗い場があり、シャワー付き混合水栓が1個だけ設置されています。その傍らにはシャンプー類が置かれていますが、備え付けのアメニティーとして使って良いのか、あるいは常連さんの私物なのか、そのあたりの区分は不明です。



四角い浴槽は3~4人サイズ。温泉のお湯は専用の蛇口からホースを経由して浴槽へ投入されており、浴槽を満たしたお湯は窓下の切り欠けからしっかり溢れ出ていました。湯使いは完全掛け流しかと思われます。
そのお湯は無色透明で、ほんのりと芒硝の匂いや味が感じられます。いわゆる無色透明の硫酸塩泉であり、この手のお湯からは引っかかる浴感が得られる傾向にありますが、こちらのお湯はどちらかと言えばサラサラとした優しい感触と表現すべきお湯であり、しかも湯加減もちょうど良いので、目を瞑っていつまでも入っていたくなります。温泉分析表によれな源泉温度は55℃なので、どうやって湯温を調整しているのでしょうか。それはともかく、
温泉関係の記事を書くライターさんは、静かにじっくりと温泉の味わいを感じ取る際に「お湯と対峙する」という表現を使いますが、こちらのお風呂はまさにその表現がぴったり。余計な設備が無く、ただ温泉の浴槽が1つあるばかりですが、そこに注がれるお湯が上質ゆえに、お湯の良さを正面から感受することができるでしょう。好みが分かれるかもしれませんが、少なくとも秘湯が好きな方なら気に入っていただける一湯です。


温泉とは関係ありませんが、館内に貼ってあったポスターに目を奪われてしまいました。一見すると地方の議会選挙ポスターかと思いきや、「きのこまつり総選挙」と書かれているではありませんか。どうやら毎年行われているキノコ祭りの宣伝らしいのですが、言葉のセンスといい、使われている写真といい、適度にゆるくて、絶妙な感じで田舎臭く、個人的にはちょっと気に入ってしまいました。


奥の湯2号泉
単純温泉 55.6℃ pH7.2 溶存物質0.8762g/kg 成分総計0.8885g/kg
Na+:222.2mg(84.51mval%), Ca++:28.7mg(12.51mval%),
Cl-:242.0mg(57.07mval%), SO4--:181.5mg(31.72mval%), HCO3-:72.8mg(9.96mval%),
H2SiO3:100.0mg, HBO2:14.0mg, CO2:12.3mg,
(平成16年10月15日)
加温加水循環消毒なし

岩手県和賀郡西和賀町湯川52地割71番地
西和賀町観光協会公式サイト内の紹介ページ

日帰り入浴10:00~18:00
300円

私の好み:★★+0.5


コメント (2)
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成田空港温泉 空の湯

2020年03月24日 | 東京都・埼玉県・千葉県
いつも半年前のネタを小出しにしている拙ブログにしては珍しく、今回記事は時事ネタから入ってまいりましょう。


麗らかな陽気で桜の花が一気に開いた3月下旬の連休。
いつもだったら多くの利用客で賑わっているはずの成田空港第二ターミナルは、上画像をご覧の通り人通りが絶えてガランと静まり返っており、利用客をはるかに上回る数の空港スタッフがマスクを着用しながら所在なく途方に暮れていました。


フライトの案内板も「欠航 cancelled」の赤い文字ばかりが並んでいます。いつもならこの高い天井のホール内に各種案内のアナウンスが絶え間なく流れていますが、さすがにお客さんへ伝える情報がないためスピーカーも開店休業状態。普段は雑踏や放送にかき消される空調の音が、不思議なほどホール内に響いていました。

さて私は旅立つために成田空港へやってきたわけではありません。新しく開業した温泉施設「成田空港温泉 空の湯」に入ることが目的です。その名前通り空港の目の前で湧く温泉であり、施設内には温泉浴場のみならずカプセルホテルやレストランなどを兼ね備えることにより、空港利用者のニーズに応えようとしています。とはいえ空港ターミナル内ではなく、そこからちょっと離れた場所にあるため・・・


第二ターミナル1階の23番バス乗り場より発着する専用無料送迎バスに乗車することにしました。本記事の後半でも触れますが、公共交通機関でこの施設へアクセスする場合、送迎バスのほか、芝山鉄道の芝山千代田駅から徒歩5分程度で行くこともできます。空港のみならず駅からも至近にある温泉なのです。しかし、無料送迎バスが30分毎の運行であるのに対し、芝山鉄道が日中45分毎であり、しかも京成本線方面にしか行き来できないため、各方面とつながっている空港の第2ターミナルを経由した方が容易にたどり着けるかと思います。


フェンスで囲まれた空港の外縁をバスに揺られること約10分で現地に到着しました。施設へのアプローチ(道路)には、滑走路を思わせるような文字やサインが敷かれていました。


こちらは2019年12月に新規開業したばかりの温泉入浴施設です。私は「このご時世で空港利用者がいないから、たぶん空いているだろう」と見当をつけていたのですが、予想に反して駐車場にはそこそこ多くの車が止まっていました。ナンバーを見ると地元の方が多いようでした。浮き沈みが激しい旅行利用者より、安定した需要が読める地元利用者を固めた方が、商売としては無難かもしれませんね。


バスは入口前で降ろしてくれました。同乗していた他のお客さんは目の前の通路を真っ直ぐ歩いて受付へと向かっていったのですが、子供の頃から注意力散漫で寄り道が多いと先生に叱られていた私は、当然ながら真っ直ぐ歩くことはせず・・・


通路からフラフラと左の方へ逸れてしまいました。と言いますのも、温泉櫓のような形状でオブジェ化されているとはいえ、温泉掘削のボーリングピットが展示されていたからです。傍らに立てられた小さな説明板によると、2018年4月に掘削が始められ、最終的には1013mまで掘り進んだんだとか。このエリアで掘って出てくる温泉は化石海水型になるわけですが、その説明として「チバニアンより古い時代の前期更新世の堆積物に閉じ込められた海水」と表現しているところに、昨年末に千葉県で開業した施設らしい個性が表れています。

ボーリングピットを拝見し、玄関まわりに誰もいなくなったところで、私も玄関から入館しました。下足箱には精算用チップのリストバンドが差し込まれており、靴を収めてリストバンドを抜くことにより、下足箱が施錠されます。そしてそのリストバンドを受付に差し出し、利用したい料金プラン(時間制限ありの入浴、あるいは岩盤浴を含むプランなど)を選択することで、そのプランがリストバンドの番号に登録されます。入浴料金は、館内で利用する各種有料サービスや飲食の代金と共に、退館時に一括精算することになります。なお、料金支払いには現金やクレジットカードのほか、交通系ICも利用できるので便利です。


受付を済ませた後は、上画像の自動改札にリストバンドのセンサー部分をタッチさせて、お風呂がある3階へ上がります。


なお岩盤浴や貸切風呂、カプセルホテル、休憩スペースは2階に設けられており、レストランは1階の改札前です。2階休憩スペースには漫画本の蔵書がたくさん開架されていました。近年の岩盤浴併設施設では、館内でゆっくり過ごしてもらうツールの一つとして、大きなビーズクッションとともに漫画本をたくさん用意するところが多いですね。子供の頃から今に至るまで漫画を読む習慣が無い変わり者だった私には残念ながら全く役に立たないのですが、でもこちらを含めた各施設では漫画を手にして思い思いの格好で漫画を読み耽るお客さんがたくさんいらっしゃいますから、やはり時間つぶしにおける漫画需要は無視できないことを、温浴施設へ行く度に実感させられます。


3階にあがり、マッサージチェアが並ぶ明るい廊下を包んだ突き当たりに、紅と紺の暖簾が下がっています。


浴場内は撮影禁止なので、以下文章を中心にレポートさせていただきます。
上画像は男湯の案内図です。
暖簾をくぐった先の脱衣室にはロッカーがたくさん用意されており、リストバンドの番号とは関係なく任意の場所を使うことができます。さすがに開業したばかりですから、どこもかしこも綺麗で清潔ですが、土地が余っている割には、空間的に少々狭く感じるかもしれません。また、お風呂から上がった後に身支度を整えるパウダーゾーンはそこそこの広さが確保されているのですが、なぜか流し台がなく、手を洗ったりタオルを絞ったりしたければ、一旦浴室入口に設置されている洗面台まで移動しなければなりません。

脱衣室を抜けて浴室へ。
内湯は明るくて天井が高い開放的な造り。男湯の場合、後述する露天風呂出入口を挟んで右側手前に洗い場が配置されており、計21個のシャワーが設置されています。各シャワーブースには仕切り板が取り付けられているので、隣客との干渉が気になりません。また各種アメニティーも置かれています。
露天風呂出入口の右手窓側には高濃度炭酸風呂、左手窓側には入浴剤を溶かした「人工温泉」の各浴槽が据えられています。両浴槽とも沸かした真湯です(温泉ではありません)。なお私の訪問時、人工温泉には由布院の湯と称する入浴剤が投入されていたようです。内湯にはこの他、水風呂とサウナ(定時でロウリュウあり)が設けられていますが、いずれも温泉は使われていません。


(上画像は公式サイト内の予約ページよりお借りしました)
露天風呂はテラスのような場所に設けられています。確かに開放的なのですが、「空の湯」という名前ながら成田空港に背を向けるような位置にあるため、露天風呂から滑走路や駐機場などを眺めることはできません。かといって、周囲には空港以外に見るべき目立つ景色もなく、ただ北総台地の畑が広がるばかり。まわりに何も無さ過ぎて、却って周囲からお風呂の様子が丸見えなので、視線を遮るための目隠しが露天風呂のまわりに立てられています。

滑走路こそ眺められないものの、すぐ目の前が空港であるというロケーションゆえ、いつもだったら、頻繁に離発着する飛行機を間近で見上げることができるのでしょう。でも上述のように今のご時世はとにかく飛行機が飛べませんから、私が露天風呂に入っている時間帯で飛んでいた飛行機は4機程度だったような気がします(しかも半数はカーゴかな)。なお滑走路の位置の関係で、飛行機はお風呂の真上を飛ばず、東や西の方角を飛び交うことになります。

前置きが長くなりましたが、この露天ゾーンには「かけ流し湯」「くつろぎ湯」「ジェットバス」「寝ころび湯」「つぼ湯」という計5種類の浴槽が設けられています。このうち温泉が張られているのは「かけ流し湯」「くつろぎ湯」の2つで、あとの3つは真湯です。個人的な感想として真湯の3浴槽に特筆すべき点は無いかと思われましたので(異論がある方、ごめんなさい)、ここでは温泉槽のみについて述べてまいります。温泉が張られている「かけ流し湯」と「くつろぎ湯」は隣りあっており、いずれも槽内に段が設けられていて、一定方向を向かって座湯するスタイルがとられています。上段に座ると半身浴になり、下段に座ると全身浴になるのですが、自分の好きな格好で入浴できないのがちょっと残念。こうした浴槽の造りは東京国立市の「湯楽の里」など複数の施設でも見られるため、おそらく同じ設計事務所が手がけているのではないかと勝手に想像しています(間違っていたらごめんなさい)。

つづいてお湯について見ていきましょう。「かけ流し湯」では名前通り放流式の湯使いが実践されています。具体的には加温消毒あり加水濾過循環なしという湯使いのようです。開業してまだ3ヶ月しか経過していないのに、お湯の濃さを物語るように、早くも湯口は赤茶色に染まっていました。浴槽のお湯は3ヶ所の切り欠けからオーバーフローしており、うち2つは「くつろぎの湯」へ流下し、残る1つは浴槽ステップ脇から排水口へと捨てられています。
一方「くつろぎ湯」は同じ温泉を使いながらも加水加温循環ろ過消毒ありで、お湯の見た目は「かけ流し湯」と大きく異なります。濾過されていない「かけ流し湯」のお湯は緑色を帯びた黄土色(下品に表現すると青っ洟みたいな色)に濃く濁っており、濁り方が強いために浴槽の底は全く見えません。一方「くつろぎ湯」はジャスミン茶のような色を帯びつつも底がはっきり見える透明度を有しています。当然見た目のみならず味や匂いも大きく異なり、「かけ流し湯」のお湯からは非常に塩辛い味とともに少々苦味や金気の味と臭い、そしてヨウ素臭がしっかりと感じられる一方、「くつろぎ湯」はしょっぱいが強烈ではなく、金気やヨード感もかなり弱まっているようでした。源泉の成分がほぼそのままの状態で注がれる「かけ流し湯」は、その濃さゆえに温浴効果も強く、非常によく温まるのですが、あまり長湯をすると強烈に火照って強い疲労感を覚えますから、長湯せず適当なところで湯船から上がることが大切です(特に夏は要注意)。一方で、加水循環によってマイルドになっている「くつろぎ湯」は、湯加減もややぬるめにセッティングされているため、「かけ流し湯」に比べると体にとっては優しく、まさに寛ぐにはもってこいのお湯と言えそうです。
ちなみに、黄土色に濁る塩辛い化石海水型の温泉は、千葉県内、特に下総・北総エリアでよく見られます。たとえば拙ブログで取り上げた「牧の原温泉 リスパ印西」はその好例ですし、2019年夏にオープンしたばかりの新習志野駅前「湯~ねる」も同様です。従いまして、この手のお湯自体は決して珍しいものではありませんが、比較的大きな浴槽で掛け流しの湯使いを実践しているという点では貴重な存在と言えるかもしれません。


最後になりましたが、冒頭でも申し上げましたように、こちらの温泉は空港の目の前でありますが、同時に電車の駅前でもあります。京成と一体運用されている芝山鉄道の芝山千代田駅から徒歩5分程度で辿りつくことができるので、東京方面から京成電車に乗ってアクセスするのも良さそうに思われるのですが・・・


この芝山鉄道は平日ラッシュ時ですら20分に1本、日中になると45分に1本という超ローカル路線になってしまい、その殆どは京成成田と芝山千代田の折り返し運行ですから、接続や乗り換えの手間・時間を考えると、意外と不便なのです(しかも芝山千代田駅は交通系ICカードが使えません)。もしこちらへ公共交通機関で訪れるならば、空港の第二ターミナルから送迎バスに乗ってしまった方が便利でしょう。

空港至近で温泉施設がオープンしたことにより、当然ながら空港利用者の利便性向上が期待されていたわけですが、これから軌道に乗せてゆこうとした矢先に、全世界を失望のどん底に落とす厄介な疫病の影響を受けてしまいました。実際に私が訪問した時も、空港利用者の姿はあまり見られませんでした。しかしながら、空港からの無料送迎バスは早朝や深夜にも運行されていますし、なにしろカプセルホテルがありますから、レガシーキャリアの国際便のみならず、深夜早朝に離発着するLCCの利用者にこそ便利な施設と言えましょう。COVID-19という疫病禍から全世界が抜け出て、再び自由に空の旅が楽しめるようになったら、この施設も脚光を浴びることになるでしょうね。一日も早く世界中に日常が戻ってくることを祈念して本記事をアップさせていただきました。


含ヨウ素-Na-塩化物強塩温泉 29.3℃ pH不明 溶存物質31160mg/kg 成分総計31200mg/kg
Na+:10850mg(89.07mval%), NH4+:112.9mg, Mg++:363.5mg, Ca++:269.0mg,
Cl-:18510mg(98.23mval%), Br-:123.5mg, I-:83.3mg, HCO3-:426.3mg,
H2SiO3:67.9mg, HBO2:12.5mg, CO2:40.1mg,
(平成30年9月5日)
加水あり(一部の浴槽において温泉の供給量不足を補うため)
加温あり(入浴に適した温度を保つため)
循環ろ過あり(一部の浴槽において衛生管理のため)
消毒あり(一部の浴槽において衛生管理のため塩素系薬剤を使用)

千葉県山武郡芝山町香山新田27-1
0479-78-2615
ホームページ

入浴営業11:00~翌朝8:00
入浴のみ(時間制限あり):平日1000円、土日祝1200円、朝5~8時:500円
岩盤浴や館内着のセット料金、カプセルホテル宿泊、貸切風呂など各種料金は公式サイトでご確認ください。
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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赤倉温泉 赤倉ホテル 後編「楽々の湯」

2020年03月17日 | 新潟県
前編記事からの続編です。
お宿ご自慢の「有縁の湯」は明るくて開放的で、ゆったりのんびり寛げるお風呂として大変素晴らしかったのですが、へそ曲がりで偏屈な私はお湯から得られるフィーリングにマニア的な消化不良感を覚えたため、館内にある別のお風呂を目指すことにしました。


一旦着替えて、フロントまで戻り、その手前を曲がってアネックス(別館)へと進みます。アネックスと称していますが、建物の造りから推測するにおそらく旧館なのでしょう。内装に木材を多用した構造でm天井がやけに低く、全体的に造りが思いっきり昭和です。このアネックスには「楽々の湯」と「石割の湯」という2つの浴室があるのですが、後者は清掃中で利用できなかったため、「楽々の湯」を利用することにしました。


本館フロント付近から伸びるアネックス1階廊下を進んだ先に、上画像のような螺旋階段があります。「楽々の湯」は男女で階層が分かれているらしく、男湯はこの螺旋階段を上がった2階です。
階段を上がって右に折れた場所にある男湯の脱衣室は縦に細長い造りをしており、廊下と同じく天井が狭くくて、昭和の面影を色濃く残す造りなのですが、お手入れ自体はしっかりされており、古いながらも綺麗です。


浴場は大きな六角堂のような形状をしており、北側の駐車場へ突き出るように建てられています。古いけれどもそこそこ広く、場内には大小1つずつ浴槽が設けられています。いずれもアメーバのような形容しがたい形状をしているのですが、それぞれ人研ぎ石でつくられており、肌に触れた時に表面から得られる感触がとても滑らかです。前回記事の「有縁の湯」ができる前は、こちらがメインの大浴場だったのでしょう。


洗い場にはシャワー付きカランが5つ並んでおり、アメニティーも揃っています。



2つある浴槽のうち、小さい方のお湯は入りやすい温度に調整されていました。ぬるめと言わず「いやし」と表現するところが素敵ですね。



一方、大きな方は勾玉のような形をしており、その中で大小の円を刳りぬく感じで入浴部分が造られています。それぞれに対して湯口があり、ひとつは適温に調節されたお湯が出てくる口で、他方は熱いままのお湯が出てくる口なのですが、大小の円はひとつにつながっているので、大小で湯温の差はあまりなく、全体的にちょっと熱めの湯加減でした。


湯使いは純然たる掛け流し。湯尻から惜しげもなくオーバーフローしています。



それぞれの湯口には析出こびりついており、特に熱いお湯を吐出する球体の湯口には、あたかもサンゴ礁のごときトゲトゲにびっしりと覆われていました。マニア的にはこうした光景を目にすると興奮せずにはいられません。


お湯は温泉地内の各宿泊施設などが共同で管理・引湯している共同源泉ですから、前々回記事の「滝の湯」や前回記事の「有縁の湯」と同じですが、にもかかわらずお風呂によってお湯の感じ方が異なるのは、それぞれで湯使いが違うからに他なりません。「楽々の湯」の脱衣室に掲示されている湯使いの説明によれば、「源泉掛け流し風呂です」と表記されています。「有縁の湯」の「源泉循環式掛け流し」という謎めいた方式ではない、純然たる掛け流しであると思われます。

お湯は無色透明ながら微かに青白い色を帯びているように見え、湯中では白い湯の花が少々舞っています。お湯からは軟式ゴムボールのような硫黄風味の他、甘い味とほろ苦み、そして粉っぽい味が感じられました。肩まで湯船に浸かると、さらっとした軽やかな感触と同時にキシキシと引っかかる浴感が拮抗しながら肌に伝わってきます。お湯のコンディションは断然この「楽々の湯」が良く、おかげですっかり「赤倉ホテル」のお風呂に対する印象が好転しました。

私はついついマニア受けするようなお風呂を選ぶ傾向にあるため、世間一般との志向に乖離が生じ、しばしばブログの読者の方から苦情を頂戴するのですが、こちらのホテルでしたら多くの人に好印象を与えるであろう大きくて明るい大浴場と、お湯に拘る人を納得させるトラディショナルな浴場を両立させていますので、余計な心配をせず安心してご紹介することができます。さすが歴史ある赤倉温泉のお宿であると感心しました。


カルシウム・マグネシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩温泉 50.2℃ pH6.6 湧出量測定不能(自然湧出) 溶存物質1262mg/kg 成分総計1321mg/kg
Na+:79.0mg(24.02mval%), Mg++:43.0mg(24.72mval%), Ca++:129.4mg(45.11mval%),
SO4--:327.3mg(48.64mval%), HCO3-:354.7mg(41.50mval%),
H2SiO3:243.1mg, CO2:59.4mg,
(平成27年8月4日)

新潟県妙高市大字赤倉486
0255-87-2001
ホームページ

日帰り入浴9:00~21:00
1000円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★(有縁の湯)、★★★(楽々の湯)
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赤倉温泉 赤倉ホテル 前編「有縁の湯」

2020年03月14日 | 新潟県

前回記事で取り上げた新潟県赤倉温泉「滝の湯」を出た私は、もう一軒お風呂をハシゴしたくなったので、温泉街をうろうろと歩いていたところ、「源泉かけ流し露天風呂 ご入浴できます」と書かれた看板を見つけたので、その看板を出している「赤倉ホテル」を訪ねることにしました。行き当たりばったりで訪ねるお風呂では、果たしてどんなお湯に出逢えるのでしょうか。

「赤倉ホテル」は温泉街の中でも有数の規模を誇る老舗ホテルであり、また午前中の早い時間帯から日帰り入浴を受け入れてくれる貴重な施設でもあります。

立派な玄関でスリッパに履き替え、フロントで日帰り入浴したい旨を伝えて料金を支払いますと、フロントの方は領収書を切ってくれました。これが入館証の代わりになるんだとか。
館内には3つの大きな浴室の他、宿泊者専用の家族風呂(2室)や期間限定の混浴露天風呂「風雪の湯」があるのですが、日帰り入浴の場合は3つの大きな浴室を利用することになります。3つもあるとどこから入るか迷ってしまいますが、まずはフロントの方が奨めてくださった「有縁の湯」へ向かうことにしました。


骨董品や美術品などが陳列された広い廊下を進み、緩やかな階段を上がってゆくと、やがて別棟へと導かれます。




この別棟には期間限定の露天風呂や宿泊客専用の家族風呂などがあるのですが・・・


日帰り入浴客の私が利用できるのは「有縁の湯」。まるで舞台を思わせる立派な構えに驚き、きっと素晴らしいお風呂なんだろうなという期待を抱くと同時に、或る予感も頭をよぎりました。その予感とは後程・・・。


広く綺麗で快適に使える脱衣室を抜けた先が、とても大きくて明るく開放的な「有縁の湯」大浴場。非日常的な空間で寛ぎを得ることこそ温泉旅館の醍醐味ですから、なるほどフロントの方が奨めてくださったのも理解できます。
男湯の場合、右手壁側にシャワー10基が1列に並んでいます。そして窓側にはとても大きな主浴槽が据えられ、お湯が湛えられています。主浴槽の湯口は横幅の広い滝のような形状をしており、室内に音を轟かせながら絶え間なくお湯を落としていました。この他、浴場内にはサウナやジャグジー槽(おそらく真湯)なども設けられています。




脱衣室の脇には露天風呂(岩風呂)もあり、こちらも大きく、ゆったり寛げる造りになっています。雪対策なのか完全に屋根掛けされているため頭上の開放感に乏しく、また周囲は他の宿の建物であるため、景色も正直なところ風情や眺望性に欠けます。でも妙高の爽やかな風が流れてきますので、お湯で火照った体をクールダウンしながら快適に湯浴みすることができるでしょう。


さて脱衣室に掲示されていた「有縁の湯」の湯使いに関する表示です。これによれば「源泉循環式掛け流し」とのこと。ん? 循環しながら掛け流しとはこれ如何に? その下には、加水・加熱は一切行っていないが、清潔を保つため濾過しているとの説明がありますから、不純物を除去するため循環濾過装置を使いつつ、手を加えていない新鮮源泉も投入していますよ、ということなのでしょうか。当記事の中盤(浴場へ入る時点)で私は「或る予感」を覚えたと申し上げましたが、それはお風呂の温泉を循環させているのではないか、という懸念でした。そしてその不安は的中していました。理由は様々ですが、大きな浴場ではお湯を循環させていることが多いので、立派な構えを目にした瞬間、経験則に基づき私はそのような予感を覚えたのでした。実際にこちらのお風呂へ入ってみますと、内湯・露天ともに湯加減は実に良い塩梅で入りやすいのですが、前回記事の「滝の湯」に比べると湯の花が少なく、お湯の特徴も全体的に薄くなっていて、赤倉温泉のお湯が持つ個性が弱まっているように感じられました。私のようなマニアは湯の花が多かったり、匂いや味に癖があったり、湯加減の調整が難しかったりする温泉にこそ魅力を感じるのですが、一般的には湯の花など体にまとわりついてくる物がなく、匂いや味や色なども少ない(弱い)タイプのお湯の方が好まれるのでしょう。しかも広く明るくて綺麗なのですから、一般的なお客さんにはまさに相応しいお風呂なのです。
でも私はちょっと変わった(偏屈な)客・・・。たしかに良いお風呂だと思うのですが、お湯に関しては物足りなさを感じてしまいます。そこで、私は早々にこの「有縁の湯」を出て、別の浴室へ向かうことにしました。

次回記事へつづく・・・

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赤倉温泉 滝の湯

2020年03月10日 | 新潟県

前回記事では妙高山の麓に湧き上杉謙信の隠し湯としても知られる関温泉で宿泊したことを述べましたが、その翌朝、私は路線バスに乗って近所の赤倉温泉へ立ち寄り、何軒かお風呂をハシゴすることにしました。まず訪ねたのは、当地のランドマーク的存在である公衆浴場「野天風呂 滝の湯」です。温泉街の北側を東西に延びる真っ直ぐな坂道を上がった奥に位置しており、無料で利用できる足湯公園の近くです。赤倉温泉の開湯170周年を記念して1986年に開業したんだそうです。私はいままで2度利用したことがあるのですが、最後の訪問から10年近く経過しているので、薄く霞んでしまった記憶を掘り起こすべく再訪することにしました。なお拙ブログでご紹介するのは今回が初めてです。

階段を上がり、受付横の券売機で料金を支払います。受付周りは昭和の公営プールみたいな雰囲気ですが、受付スタッフの方は作務衣を着ており、まるで旅館のように丁寧な対応をしてくださいました。お疲れ気味のハード面を人的要素のソフト面でカバーする努力に思わず心が温まります。


吹きさらしの通路に男女別の入口があり、階段を上がった2階には休憩室が用意されています。脱衣室は昭和の香りがする懐かしい作りで、私が子供の頃によく通った市営プールを思い出させてくれました。


こちらの施設には夏季限定営業のプールも併設されているのですが、私が訪れたのは秋でしたから、既にクローズされていました。上述のようにいままで私は数度訪れているのですが、いずれも夏以外のため、このウォータースライダーが使われているところを見たことが無く、岩の間から雑草が茂るプールを見て、本当に夏になったら営業しているのだろうかという疑問が頭をもたげてしまいました。


お風呂は露天風呂のみ。巨大な岩が屹立する中で、淡く青白い色を帯びたお湯が池の如く湛えられています。20人近く入っても全く問題無さそうな大きなキャパシティを擁していますが、訪問時の利用客は私一人だけでしたので、この広大な湯船を独占しながら思いっきりノビノビとさせていただきました。圧倒的な開放感の中で何物にも邪魔されることなく湯浴みする快楽を得たいからこそ、わざわざ遠方まで足を伸ばすわけであり、それが達成されたときの爽快感たるや言葉には言い表せません。
なおこちらの施設に内湯は無く、寒い時期には湯温も下がってしまうため、冬季には施設まるごと休業するそうです。建物の壁側にシャワーが付いた混合水栓が3つ並んでいますので、ここで体を洗いましょう。私の訪問時、シャワーの水圧が強すぎたため使用に難儀したのですが、これはいつものことなのでしょうか。


上画像のように、脱衣室から出てすぐのところには、温泉のお湯が溜められた小さな湯枡がありますので、3つしかないシャワーが全て埋まっていたら、ここで掛け湯しても良いでしょう。


メインの浴槽である大きな湯の池の手前には、小さな浴槽もあるのですが、こちらのお湯は熱すぎて入ることができませんでした。


赤倉温泉といえば温泉ソムリエ発祥の地。私はあまり御縁がないのですが、この民間資格を通じて積極的に温泉ファンとの交流を図っている方も多いかと思います。お風呂のまわりにはこのソムリエによる説明書きがあちこちに立てかけられていました。そもそもは立札だったのでしょうけど、風雨で支柱が倒されてしまったのかな。


滝の湯という名前の通り、お湯は大きな岩の上から滝のように落とされています。訪問日は風が強かったためか、落ち葉の類いが湯面にたくさん浮いていました。その一方で露天風呂を囲む植栽の周りを見ますと、根元から折れて放置されている照明器具が目につきました。また奥には木のベンチも設けられているのですが、こちらも木材がやや腐食しており、全体的な老朽劣化が気になってしまいました。豪雪地帯に開業して30年以上が経過しているため、どうしてもいろんなところが草臥れてしまうのでしょう。仕方ありません。

でもお湯が良ければ問題なし。先述したように湯船には淡く青白みを帯びたお湯が張られており、湯中では白い湯の花が浮遊していました。湯加減は私の体感で約40℃。体への負担が少なく、いつまでも長湯できる優しいコンディションです。お湯からは軟式テニスボール的なゴム臭やゴム風味、甘味、そしてほろ苦みが感じられました。そして湯の中に浸かるとサラサラとした軽やかな感触とキシキシ引っかかる浴感が混在して得られました。カルシウム・マグネシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩温泉という泉質は、一見するとどこにでもありそうに思われますが、実はかなり珍しいタイプではないでしょうか。それゆえお湯から得られる浴感も一種独特です。なお湯使いに関しては、一度源泉から注がれたお湯を冷ましたものと、50℃近い源泉そのままのお湯の両者をブレンドする「循環併用かけ流し方式」を採用し、加水などは一切行っていないとのこと。
高原の清らかな空気のもと、お風呂から漂う湯の香を楽しみながら、ゆっくりのんびりと湯浴みを楽しませていただきました。


温泉が大好きな方ならご存知の通り、赤倉温泉の源泉は妙高山の中腹にある北地獄谷にあり、そこから延々と温泉街まで引湯して各施設へ配湯しています。上画像がその源泉施設。引湯の歴史は大変古く、なんと200年以上前の江戸時代にまで遡るんだとか。日本人が温泉に掛ける情熱って、昔からただならぬものがありますね。


カルシウム・マグネシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩温泉 50.2℃ pH6.6 湧出量測定不能(自然湧出) 溶存物質1262mg/kg 成分総計1321mg/kg
Na+:79.0mg(24.02mval%), Mg++:43.0mg(24.72mval%), Ca++:129.4mg(45.11mval%),
SO4--:327.3mg(48.64mval%), HCO3-:354.7mg(41.50mval%),
H2SiO3:243.1mg, CO2:59.4mg,
(平成27年8月4日)
一度源泉から注がれたお湯を冷ましたものと、50℃近い源泉そのままのお湯の両者をブレンドする「循環併用かけ流し方式」を採用。加水なし。

新潟県妙高市赤倉11
0255-87-2958
赤倉温泉観光協会ホームページ

9:00~17:00(木曜は16:00まで) 4月下旬~11月上旬営業(冬季休業) 
500円
ドライヤーあり、ロッカー有料(100円)

私の好み:★★+0.5
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