温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

鶯宿温泉 ホテルレムナント鶯宿

2023年03月30日 | 岩手県
(2022年4月訪問)
まず念頭に申し上げておきますが、今回の記事は私が2022年4月に訪問した際の記録を書き綴っております。また今回取り上げるホテルを運営している宗教法人は、私が調べた限り、2022年7月以降に世間を騒がせている某宗教団体とは別組織であるらしいこともお伝えしておきます。

しがない勤め人の私は日々質素な生活を心がけており、2022年4月の東北旅行でも旅の出費を抑えることが非常に重要な問題でした。とはいえ旅に出ようと思いついたのは出発の数日前。4月下旬の連休に入って間もないタイミングだったため、宿泊料金の相場が全体的に上がっており、しかも既にお部屋が埋まっているホテルや旅館が多く、どうしようか困っていたのですが、そんな中、お部屋が空いていて且つ激安のホテルを大手宿泊予約サイトで見つけたので、ほぼ条件反射のようなスピードで予約してしまいました。
果たしてどんなホテルなのでしょうか。


グーグル先生の指示に導かれるまま車を走らせると、上画像の施設へたどり着きました。ホテルの名前は「ホテルレムナント鶯宿」。そう、鶯宿温泉にある温泉ホテルです。でも外観を見た私はあることに気づきました。あれ? ここって以前は「ホテル鶯宿梅」じゃなかったかな? 


後日調べたところによると、どうやら韓国系プロテスタント教団(福音宣教教会)がここを買い取って運営しているんだそうです。フロントには布教目的と思しきパンフレット類がたくさん用意されているほか、フロントのスタッフさんもどうやら韓国の方のようでした。明るいロビーは「ホテル鶯宿梅」の頃と変わっていないかと思いますが・・・


そこに隣接するレストランは「韓国レストラン ソウル」となっていました。韓国系キリスト教団が運営しているためこのような形態になったのでしょうね。でも訪問時は「準備中」で利用できませんでした。


宛がわれた客室は広いツインルーム。古さは否めませんが、ちゃんと清掃が行き届いており・・・


小さな和室も付帯していて・・・


テレビや冷蔵庫など標準的な備品はひと通り揃っていますし、wifiも飛んでいます。また洗面台やトイレも室内にありますので、とても快適に過ごせました。なお電子レンジは廊下に共用のものがありますので、それを使うことになります。
このお宿はお食事の提供が無いため、原則的に素泊まりになるのですが、このような広くて便利なお部屋に泊まれて、後述する温泉に入れて、一人一泊なんと税込3,850円!(宿泊時点)。驚きの安さです。おそらく布教目的でこのような価格設定になっているものと思われますが、改宗するつもりのない(というか無宗教のままの)私にとっては、寧ろちょっと心配になるほどの安さです。

なお宿泊に際してお弁当などを持ち込む場合は、温泉街のちょっと手前(御所湖の西端)にローソンがあるので、そこで調達することが可能です。


さてお風呂へ参りましょう。1階ロビーから奥の方へ進んだところにあります。残念ながら夜通し入浴できるわけではなく、夜は22時まで、朝は6時からとなっています。

浴室は奥に長く、なぜか手前と奥で浴室が二つに分かれており、入浴できる浴槽は奥の窓下にひとつあるのみで、手前側には使われていないラジウム風呂という怪しげな設備が使われないまま放置されていました。


浴槽は十和田石造りの5~6人サイズ。湯口から「あさひの湯混合泉」が注がれており、しっかりかけ流されています。


このお風呂で面白いというか特徴的なのは、随所に聖書の言葉が書かれていること。たとえば湯口の上にはこのように掲示されており・・・


壁に沿って並ぶ各シャワーの鏡の上にも・・・


こんな感じで聖書の言葉が並んでいるのでした。
響く人には響く言葉なのでしょうけど、宗教方面に鈍感な私にとっては、田舎の道の曲がり角や軒先によく貼られている「神と和解せよ」と書かれた聖書配布協力会の黒いトタン看板と大差ないように思われ、正直なところ少々の気味悪さすら感じてしまったのですが、でも安く宿泊できるのですから文句は言えません。

なお浴槽に注がれるお湯は無色透明でほぼ無味無臭です。鶯宿に古くからある旅館のお湯からは優しい硫黄感が得られますが、温泉街の手前(盛岡側)に点在する各施設へ供給されている「あさひの湯混合泉」は比較的個性が弱く、味や匂いがあまり感じられません。分析表には硫化水素イオンが0.9mg含まれていますので、おそらくストックして配湯する過程で硫黄感は飛んで行ってしまうのでしょう。でもツルスベの滑らかな浴感はしっかりと得られ、湯中では細かな気泡が肌に付着しました。

宗教に抵抗感がある方にはおすすめできませんが、その辺りをクリアでき、且つとにかく安価で温泉に泊まりたい方には良い施設かと思います。


あさひの湯混合泉
アルカリ性単純温泉 51.9℃ pH8.9 溶存物質0.6075g/kg 成分総計0.6075g/kg
Na+:145.2mg(80.10mval%), Ca++:28.9mg(18.25mval%),
Cl-:45.8mg(16.37mval%), HS-:0.9mg, SO4--:286.3mg(75.63mval%),
H2SiO3:63.7mg,  
(平成16年12月4日)
加水加温循環消毒なし

岩手県岩手郡雫石町鴬宿9-32-8
019-613-2345
ホームページ

日帰り入浴設定無し?

私の好み:★★

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山の神温泉 優香苑 なごみの湯

2023年03月23日 | 岩手県

(2022年4月訪問)
花巻から北西へ伸びる岩手県道12号を進んでいくと、志戸平温泉や大沢温泉、鉛温泉など有名な温泉が点在していますが、この沿道に最近新しい施設が開業して人気を博しているという噂を耳にしたので、実際に行ってみることにしました。今回訪ねるのは旅館「山の神温泉 優香苑」に付帯する日帰り入浴専門施設「なごみの湯」。大沢温泉をちょっと越えた辺りの県道沿いというわかりやすい立地で、どうやら3年ほど前に開業したようです。

黒を基調としたシックで落ち着いた現代的和風といったファサード。広い駐車場には多くの車がとまっており、人気の程が伺えます。下足ロッカーに靴を入れて中に入っているスリッパへ履き替え、鍵をかけます。そして受付の券売機で料金を支払い、下足箱の鍵とともに入浴券を受付に差し出すと、引き換えに脱衣室のロッカーキーを手渡してくれました。


館内も落ち着いた佇まいです。今回は利用していませんがレストランを併設しているので、お風呂上がりにゆっくり食事をすることもできるでしょう(ランチ営業のみ)。受付を過ぎ、砂利の中に木が植わっている枯山水のような中庭を眺めながら浴室へ向かいます。
脱衣室は特段広いわけではありませんが、メンテナンスが行き届いており大変綺麗で気持ち良く使えました。また室内には洗面台が4~5面ほどあり、ドライヤーも4台用意されているので、お風呂上がりもストレスなく身支度を整えることができました。

今回の記事で内湯の画像はございません。悪しからずご了承ください。
天井が高い浴室もやはり黒色基調で落ち着いています。ただ照明はダウンライトのみなので、たしかに現代的でおしゃれかもしれませんが、私が訪問した曇天の日中ですら薄暗かったので、夜になると暗すぎてしまうのではないかと余計な心配が頭をよぎりました。
なお床には十和田石が敷かれており、また側壁には黒塗りの木材のように見たる樹脂の壁材が採用されています。

男湯の場合、入って手前の右側にサウナと水風呂があり、左側に立って使うシャワーが設置されています。その両者に挟まれた通路を抜けると、奥の右手に洗い場が、左手に主浴槽が配置されています。洗い場は二手に分かれており、手前側には計8ヶ所、奥には計12か所のシャワー付き混合栓が取り付けられています。なお各シャワーにはボディーソープ等のアメニティが備え付けられています。

内湯の主浴槽は窓の下にあり、十数人は同時に入れそうなゆとりのある造りです(寸法は失念)。ステップがややゴツく、今時の浴槽では珍しく肩までしっかり浸かれる深さがあります。源泉を41~2℃に加温した上でかけ流されており、浴槽のお湯は若干白く靄掛かっているように見えました。なお浴槽のオーバーフローは全量が窓側へ排出するよう造られており、洗い場側は縁が高くなっているのでオーバーフローしません。


露天風呂もなかなか良い雰囲気です。
広い庭の中に岩風呂が設えられており、周りには木が植えられ花が咲き、塀の向こうの田園風景や山々が借景になっています。緑豊かで且つ静かな良い環境です。
岩風呂は30人近く入れそうな広い造りで、浴槽内には切り出した御影石のような石材が敷かれています。内湯と対照的にちょっと浅めで、普通に座ると半身浴になってしまうので、若干寝そべらないと肩まで浸かれません。といはいえ、寝そべるといい感じに山の景色を眺められるので、寧ろ寝そべって入るのが正解なのかもしれません。
惜しむらくは女湯との境に煙突が立っていてそこから時々ボイラーの運転音(キュルキュル・ゴー・ボーといったような音)が聞こえてくることで、この煙突自体も黒く塗られて建物と統一感を図っているのですが、もう少し端っこに建てられなかったものかと残念な感は否めません。でも(繰り返しになりますが)岩や植木の配置が良く、花々や広いスペースなど、総じて良い環境なので、のんびりゆっくり湯浴みをしながら寛ぐことができました。

最後にお湯に関するインプレッションを。
お湯は無色透明なのですが、上述のように訪問時の内湯はやや白く靄掛かっていました。お湯のコンディションによって笹濁りを呈することもあるのでしょう。湯口から出るお湯からはゆで卵の卵黄のような風味が感じられます。0.5mg含まれる硫化水素イオンがその存在を主張しているのですね。
湯船に入るとではしっかりヌルヌルとした浴感が得られるのですが、これはアルカリ性であることの他、分析表によれば炭酸イオンが29.5mgとかなり多いので、これも滑らかな浴感をもたらす一因かと思われます。湯使いは加温した上でのかけ流しで、内湯は41~2℃という万人受けする湯加減である一方、露天は長湯仕様のぬる湯(約40℃)でした。個人的には景色をじっくり眺め慣れる上に時間を忘れて入っていられる湯加減の露天が大変気に入りました。

開業早々に人気を博しているため、私が訪問した時も混んでいましたが、とはいえ人混みを気にするような程ではなかったので、のんびり寛ぐことができました。今度は旅館にも宿泊してみたいものです。


松の湯
アルカリ性単純温泉 39.7℃ pH9.3 溶存物質0.6585g/kg 成分総計0.6586g/kg
Na+:204.4mg(98.89mval%),
Cl-:61.2mg(19.93mval%), HS-:0.5mg, SO4--:210.0mg(50.35mval%), HCO3-:71.5mg(13.48mval%), CO3--:29.5mg,
H2SiO3:58.1mg,
(平成27年12月1日)
加水循環無し
加温あり(源泉温度は低いため常時加温)
清掃時に塩素系洗剤を使用。

岩手県花巻市下シ沢字53番地1
0198-29-4126
ホームページ

10:00~20:00 
800円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

コメント (2)
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作並温泉 作並ホテル

2023年03月14日 | 宮城県

(2022年4月訪問)
今回記事よりみちのくの温泉を連続してご紹介いたします。
まずは仙台の奥座敷である作並温泉から取り上げてまいりましょう。今回ご紹介する「作並ホテル」は大型旅館「一の坊」の陰に隠れるような場所にあるため、初見では少々わかりにくいのですが、かけ流しのお湯に日帰り入浴できる施設として、温泉ファンから一定の評価があるお宿のひとつです。


作並で営業する他の旅館と比べて明らかに地味な感じが否めない玄関を入ると・・・


ロビーは薄暗くガランとしていて不気味な静けさに包まれているのですが、声を掛けると奥の方からスタッフの方が現れ、丁寧に対応してくださいました。今回は日帰り入浴での利用です。


旅館というより、昭和のお役所というか学校というか、どことなく無機質で前世紀的な佇まいの館内を歩き、案内表示に従って階段を下りると・・・


男女別のお風呂に到着です。女湯は階段に近い方にあり、男湯は奥の方に位置しています(なお階段を下ってすぐのところには貸切風呂があるのですが現在は閉鎖されています)。
脱衣室内は改装されたのか、館内の他の場所に比べると明るく、スノコ敷きの室内には流し台が1台、ドライヤーが1個備え付けられています。ロッカーは室内に無く、階段を下りたところのホールに設置されていますので、貴重品は脱衣室入室前に預けることになります。


お風呂は内湯のみで、男湯の場合は画像に写っている大きな岩風呂がひとつ。岩盤を刳り抜いて作ったようなその浴槽は歪なひょうたんみたいな形状をしており、その形に沿って御影石が縁を囲んでいます。なかなか大きな浴槽で十数人は同時に入れるかと思います。


洗い場に設けられているシャワーは4つで、新しい水栓が取り付けられています。以前はもっと水栓があったようですが、いまは4つに絞られ、使われなくなった配管跡には封栓が嵌められていました。


窓の外に流れる川はおそらく広瀬川の上流でしょう。窓が嵌め殺しになっているため開けることができず(上の窓は排煙窓のような感じで手前に開きますが)、川の風を直接肌に感じながら入浴できないのは残念ですが、季節によっては虫が入ってきやすい環境なので、これは致し方ないのかと思います。


湯口には真っ白いモンスターみたいな硫酸塩の析出がこんもり付着しています。この湯口から注がれた温泉「神の湯」は一旦湯壺に落とされた後、トンネルを通って浴槽内部へ注がれています。無色透明できれいに澄んだお湯を口に含んでみますと、芒硝風味のほか石膏のような風味が少々感じられますが、硫酸塩の味や匂いははっきりしているわけではなく、比較的あっさりしています。一方、浴感はスベスベの中に硫酸塩泉っぽい引っ掛かりがあり、硫酸塩泉としての個性がしっかり表れています。作並温泉は単純温泉が多いかと思いますが、ここは溶存物質がギリギリ1000mgを上回っているため、単純という名前から逃れ、含塩化土類芒硝泉を名乗ることができているんですね。


岩の浴槽は深めに刳り抜かれているため、肩までしっかりお湯に浸かることができ、入り応えがあって私は大変気に入りました。湯船に湛えられたお湯はとても綺麗なので、とても気持ち良く湯あみできます。でもやや熱めですし、温泉が持つパワーによって火照りやすいため、ここで長湯を楽しむのは難しいかもしれません。実際に私は長く浸かることができなかったため、湯船に入ったり出たりを何回も繰り返しました。


湯口のお湯は全量湯船に注がれているわけではなく、結構な量が脇へ逸れて漏れてしまっており、浴槽近くの床を流れて浴用にされることなく排出されていました。また浴槽のお湯は湯尻からトド寝ができるほどの量がオーバーフローしていました。なお湯使いは完全かけ流し。惜しげもなくお湯を捨てられるのですから、それだけ湯量が豊富なのでしょう。良質なお湯が大量に湧くのですから、まさに「神の湯」ですね。

こんなお風呂を私は終始独り占めで楽しむことができました。とっても贅沢な体験です。尤も連休中なのに空いていて大丈夫なのか、という点が心配ですので、お近くにお立ち寄りの際は是非入浴し、神の湯を皆さんで応援しましょう。なお今回ご紹介できなかった女湯には露天風呂もあるそうですよ。


神の湯
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 54.0℃ pH7.6 溶存物質1010.5mg/kg
Na+:191.3mg(56.41mval%), Ca++:123.6mg(41.83mval%),
Cl-:128.1mg(26.39mval%), SO4--:450.3mg(68.57mval%), HCO3-:38.8mg,
H2SiO3:58.4mg, HBO2:11.4mg,
(令和元年12月23日)
加水加温循環消毒なし

宮城県仙台市青葉区作並長原3-2
022-395-2341

11:00~16:00
600円(1時間以内)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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宮ノ下温泉 太閤湯

2023年03月08日 | 神奈川県

(2022年4月訪問)
拙ブログは私が行き当たりばったり的にご紹介しておりますので、有名なのにご紹介が漏れていた温泉施設も数多くあります。箱根の宮ノ下温泉にある公衆浴場「太閤湯」もその一つ。てっきり取り上げていたつもりだったのですが、記事を振り返ってみたところ「太閤湯」の「た」の字も見当たらなかったので、今回ご紹介させていただきます。

宮ノ下の「太閤湯」には私が温泉巡りをするようになってから何度か利用しているのですが、それからしばらく足が遠のいていました。特に理由はないのですが、灯台下暗しと申しましょうか、どうしても遠方の温泉を優先するばかり、箱根など近場の温泉は優先順位が下がってしまうのですね。今回はおそらく約20年ぶりの再訪ではないかと思います。

以前は箱根という観光地にもかかわらず常連さん相手の共同浴場という感が強く、他所者が利用するとつっけんどんな対応をされることがしばしばでしたが、現在は諸々の体制が変わったらしく、国道1号には観光客に浴場の存在をアピールする看板や幟が立つようになりました。なお国道からはわかりにくいのですが、奥の方に3台分ほどの駐車場もあります。

久しぶりの再訪なので浴場の様子をほぼ忘れかけていたのですが、それでも建物を目の前にして違和感というか、以前と異なる印象を受けました。外観が綺麗になっているばかりか、明らかに以前と比べて湯屋がスッキリしているのです。その場で以前の画像を検索してみたところ、かつてはいかにも増設した感が強いプレハブと思しき2階部分があったのですが、外装改修に当たり2階部分を完全に取り払ってしまったようです。これによって外観が大幅に変わったんですね。


外観は大きく変わりましたが館内は昔のまま。以前はぶっきらぼうな年輩の方が番台にいらっしゃったような記憶があるのですが、現在は東南アジア系の若い女性が店番をしており、実に愛想よく接客してくださいました。時代は変わったんだと実感します。

男湯は奥の方にあり、脱衣室の先には2つの浴室に分かれています。脱衣室の右手にあるドアを開けると小浴室、左手のドアを開けると大浴室につながります。脱衣室内に用意されている施錠可能なロッカーは5個か6個程度であり、全部の棚に鍵が掛けられるわけではないので、その辺りは運次第なのかもしれません。室内には扇風機が取り付けられている他、天井からドライヤーがぶら下がっていて無料で使えます。


大小どちらの浴場を使っても良いのですが、今回は大浴場を利用させていただきました。窓から燦燦と春の陽が射し込む明るい室内には、しっかりとお手入れされている綺麗なタイル張りのお風呂がひとつ据えられています。浴槽は台形のような歪な四角形をしており、縦2.5m×横1.5mほどでしょうか。4人は入れそうな容量がありますが、訪問時はひたすら独り占めできて幸せでした。浴槽には無色透明のさらりとしたお湯が掛け流されています。


この大浴場は早川が深く刻んだ谷に面しており、窓からは向かいの山を眺められます。訪問時は窓を開けて半露天風呂状態にし、新緑の中で咲く山桜を鑑賞しながら湯浴みを楽しませていただきました。


洗い場にはお湯と水の水栓の組み合わせが3ヶ所設けられています。石鹸類の備え付けは無いので、持参するか番台で購入するか、いずれかになります。番台にはタオルやボディーソープがセットになった「手ぶらセット」が250円で販売されていますので、入浴グッズを持参せず行き当たりばったりで太閤湯に入ることもできますね。


浴槽の温泉は専用の蛇口から投入されており、そのコックを開けると源泉がたくさん投入されますので、ご自身のお好みに合わせて湯量を調整することが可能です(とはいえ公共の場ですから、極端な熱さやぬるさは避けましょう)。なお温泉の蛇口にはパイプがはめられており、熱いお湯が底面で供給されるようになっています。これによって湯船の温度均衡を図っているのでしょう。

以前に入浴した時はすごく熱かった記憶があるのですが、今回は温泉の投入量が絞られていたためか、入りやすい温度というか、むしろ若干ぬるめでしたので、蛇口を開けて源泉を大量投入させてもらいました。これにより完全かけ流し状態。癖が無く滑らかで体を優しく包んでくれるような、実に心地良いお湯で、いつまでも浸かっていたくなりました。やっぱり宮ノ下のお湯は良いですね。


お風呂上がりに小浴場も見学。
もちろん大きなお風呂と同じお湯が使われています。


お風呂上がりは、小さな冷蔵庫に入っている三ツ矢サイダーで喉を潤しました。なお代金は番台へ直接支払います。この冷蔵庫には三ツ矢サイダーのほかバヤリースなど懐かしい銘柄の瓶ジュースが売られていました。このレトロな感じもうれしいですね。

今回再訪して個人的な心理障壁が下がり、以前よりはるかに利用しやすくなったように感じました。
箱根はいつでも気軽に行ける場所なので、また気が向いたらふらっと太閤湯へ出かけてみようかと考えています。


太閤湯(温泉村第28・29号混合)
ナトリウム-塩化物温泉 63.9℃ pH7.8 溶存物質1.321g/kg 成分総計1.324g/kg
Na+:341mg, Ca++:40.5mg,
Cl-:545mg, SO4--:60.7mg, HCO3-:144mg,
H2SiO3:134mg, HBO2:19.5mg,
(平成30年3月5日)
加水あり(源泉温度が高いため)
加温循環消毒なし

神奈川県足柄下郡箱根町宮ノ下223
0460-82-4756

13:00~21:00(受付20:30まで)、第2・第4の火曜及び水曜定休
600円
ロッカー、ドライヤーあり。石鹸類販売あり(備え付け無し)

私の好み:★★★
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強羅温泉(大涌谷造成泉) 国民宿舎太陽山荘

2023年03月03日 | 神奈川県

(2022年4月訪問)
久しぶりに箱根の温泉を取り上げましょう。まずは強羅から。
箱根登山鉄道強羅駅の改札を出てすぐ右に曲がり、地下通路を潜って駅の裏手に出て、線路と並行する坂を登って函嶺白百合の脇を通り過ぎると、その先の右手に今回の目的地である「国民宿舎太陽山荘」があります。できれば宿泊したかったのですが、今回は日帰り入浴で利用させていただくことにしました。


お手頃なイメージがある国民宿舎ですが、建物はなんと重文指定を受けており、戦時中の昭和17年に建てられた木造2階建(一部3階建)の伝統的な木造建築なのです。重文に入れるというだけでワクワクしちゃうのは私だけでしょうか。
玄関の手前から建物を眺めると、2つの棟を連絡する渡り廊下が掛けられていたり、玄関横に掛けられている扁額が立派だったりと、外観だけでもとても風情があります。


建物自体は古いのですが、館内は綺麗にリニューアルされており、建物の躯体も耐震化改修工事が施されているんだそうです。日帰り入浴の場合、まず扁額が掛けられている本館の玄関を入り、帳場で入浴したい旨を申し出て入浴料を支払うとタオルを貸してくれます。その際、お風呂までの手順について簡単に説明してくださいます。
なお本館1階には休憩室があり、お水のサービスも用意されていますので、お風呂上がりにひと息つく際は、この休憩室を利用すると良いでしょう。帳場で借りたタオルは、利用後に帳場の真下にあるカゴへ返します。


お風呂は一旦玄関を出て、向かいの離れへ移ります。お風呂がある離れは一見するとかなり古そうに見えますが・・・


本館同様に内部は綺麗に改装されており、外観とのギャップに良い意味で面食らってしまいました。


男湯の更衣室は、右手にタイル張りの大きな流し台があり、左手に衣類や荷物を収める棚が設けられています。なお施錠できるロッカーは本棟にあるので、本館の帳場で支払いを済ませたら、こちらへ来る前に預けておきましょう。
この脱衣室も綺麗に整備されており、天井が高くて気持ち良い環境です。



浴室に入って更にびっくり。決して広くはないのですが、綺麗で明るい室内からは不思議な開放感が得られ、我々が温泉のお風呂に求めたくなる非日常的空間との邂逅をしっかりと実現しているのです。一部にステンドグラスのような色ガラスが採用されていたり、天井が高かったり、屋根は明かり取りのためガラスが使われていたりと、なかなか凝った造りなのです。しかもその高い天井も脱衣室とつながっており、余計に広さを感じさせてくれます。でもよく見ると、脱衣室側とつながっているのかと思いきや、その部分の天井にはガラスが嵌められているので、湯気が脱衣室へ流れることはなく、それでいて高天井の開放感や明るさを脱衣室と浴室の両方にもたらしているのです。岩、木材、ガラスそれぞれの素材の美しさが活かされているお風呂です。


浴槽は岩風呂1つのみで、ちょっと浅めの造りです。湯船には灰色を帯びた白濁のお湯が張られ、湯口からパイプを通じて湯面下へ供給されています。このパイプを湯面から上げてお湯が出てくる様子を見たところ、投入量それほどは多くないものの、しっかりとかけ流されており、湯船のお湯はまずまずのコンディションがキープされていました。温泉を入れすぎると熱くなってしまうため投入量を絞っているのかもしれません。

こちらに引かれている源泉は強羅エリアでおなじみの大涌谷造成泉。湯船から硫黄の香りが漂い、お湯を口に含むと明瞭な酸味が口腔内を刺激し、同時に砂消しゴムを思わせる風味も広がります。タマゴ味も得られます。それでいて天然の硫黄泉のような強い刺激や主張はなく、味も匂いも、さらには浴感もマイルドなので、総じて湯浴みしやすいお湯と言えるでしょう。火山活動の噴気に水を当てて人工的に作る造成泉については賛否が分かれるところですが、天然の硫黄泉よりマイルドで優しいにも関わらず、硫黄感や酸味など酸性硫黄泉の特徴が得られて温泉気分が楽しめるので、私個人としては大好きなタイプのお湯です。

趣きたっぷりな重文の本館、綺麗で雰囲気の良い浴舎、そして白濁の温泉。
どれをとっても良いですね。
なお今回は岩風呂の浴室を紹介しましたが、もう一つのお風呂はぬくもりが伝わる木のお風呂なんだそうです。
次回こそ宿泊で利用したいものです。


大涌谷温泉 蒸気造成混合泉3号線(強羅方面)と箱根登山鉄道株式会社5号、6号井蒸気造成泉(宮城野第133,134号)の混合泉
酸性-ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 56.3℃ pH2.5 成分総計1.286g/kg
H+:3.19mg, Na+:155mg, Mg++:29.8mg, Ca++:81.1mg, Al+++:6.28mg, Fe++:19.8mg,
Cl-:402mg, HSO4-:41.3mg, SO4--:390mg,
H2SiO3:120mg, H2S:0.1mg, H2SO4:0.43mg,
(平成27年10月21日)
加水あり(冬季に湯温が足りないときはお湯を足す)、加温循環消毒なし

神奈川県足柄下郡箱根町強羅1320-375
0460-82-3388
ホームページ

日帰り入浴11:00~15:00終了 不定休
1100円
ロッカー、シャンプー類、ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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