温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

サラク山麓 チガメア温泉

2017年02月05日 | インドネシア

人口100万の都市ボゴールの南方には、標高2211mのサラク山が聳え立っています。私はボゴールのバスターミナル付近に建つホテルに宿泊していたのですが、客室の窓からもその雄姿を眺めることができました。活火山であるこの山の周辺でも温泉が湧いているので、実際にその麓へ向かうことに。


 
ボゴールの市街を抜けるまでは激しい渋滞に巻き込まれましたが、サラク山へ近づくにつれてのんびりとした田園風景が広がり、山麓の傾斜地へ入ると、平坦だった耕作地は幾重にも弧を描く美しい棚田へと姿を変えました。麗美な景色に思わず足を止めてしまいます。


 
ボゴールから1時間40分でようやく目的地の「チガメア温泉(Cigamea)」へ到着です。地図上ではボゴール市街から大して離れていないのですが、何しろ渋滞がひどく、市街を出てからも随所で質の悪い渋滞にハマってちっとも進まなかったため、こんなに時間がかかってしまいました。専用のゲートでRp100,000という高価な入園料を支払い・・・


 
川に沿って伸びる小径を進んで坂道を下って行くと、やがて川岸に屋台が連なるエリアへ入り・・・


 
屋台に挟まれた通路をさらに奥へと進んでゆきます。屋台のまわりにはニャンコがたくさんいて、地べたでジッとしながら私のことを凝視していました。日本でもインドネシアでも、国を問わず温泉と猫は相性が良いようです。


 
小径が川岸と同じレベルまで下ると、温泉らしい施設が目に入ってくるようになりました。手前側に設けられている足湯(左or上画像)は空っぽでしたが、奥の方にある打たせ湯(右or下画像)ではしっかりとお湯が落とされていました。いずれも追加料金無しで利用可能です。


 
上述の足湯と打たせ湯の間に階段があり、そこを上がると追加料金を要する入浴ゾーンとなります。"AIR PANAS"(温泉の意味)と書かれた窓口でRp5,000を支払うと、引き換えに上画像のような半券を手渡してくれました。


 
有料ゾーン内には、2つのアメーバ形をした温泉プールが段違いに設けられていて、いずれにも濃いグリーンに濁ったお湯が張られていました。温泉のお湯であることはわかりますし、実際にたくさんの男性客がこの温泉プールで湯浴みしていたのですが、でもどうしてここまで濃い緑色に濁るのでしょう。バスクリンを溶かしたならわかりますが、そうでないなら、とても衛生的だとは思えません。このお湯を見ていたら、「ドリフ大爆笑」の「もしも威勢のいい銭湯があったら」という名作コントを思い出してしまいました。ご覧になればわかりますが、コントのお風呂と全く同じ色をしていますよね。




決して私はコントのいかりや長介みたいにバックドロップ状態でお風呂へぶっこまれたい訳ではありません。私が入りたいのはプールサイドに建つ個室風呂です。個室風呂は4室あり、訪問時には全室空いていたようですが、番号順に客を入れたいのか、窓口のおじさんは私を最も右側の1号室へ通しました。


 
室内にはタイル張りの浴槽がひとつあるばかりですが、部屋自体は4畳近い広さがあるので、個室風呂にありがちな圧迫感はさほど伝わってきません。窓は鎧戸になっており、その隙間から漏れてくる光で室内は十分な明かりが確保されています。室内に棚はなく、窓枠に打ち付けられたフックがあるだけ。シャワーなどの水栓類も無く、至って簡素なお風呂です。



入室時、浴槽の湯面は一面が石灰の結晶で覆われていました。このお風呂をしばらく誰も使っていない証と言えるでしょう。タイル張りの浴槽は2人サイズで、詰めれば3人でも入れそう。私のように1人で入れば王様気分です。後述する湯口から注がれたお湯は、浴槽右奥のオーバーフロー管から排出されています。この周りだけは湯面の結晶が吸い込まれてしまうので、そこだけお湯が露わになっていました。


 
浴槽中央の湯口からトポトポと落とされているお湯の温度は43.0℃。もしかしたらここへ供給される前に加水されているのかもしれませんが、実際のところはよくわかりません。湯面を覆う結晶の下には、オレンジ色を呈するお湯が張られており、明らかに屋外の温泉プールとは違う色合いと濁り方が異なっています。この個室風呂のお湯こそが、チガメア温泉の本来の色合いであり(更に言えば湧出時は無色透明だったはず)、屋外のお湯は劣化がかなり進んだ後の姿なのでしょう。浴槽内の水色タイルは温泉成分によってうっすらとオレンジ色に染まっており、殊に湯口周りでは濃くはっきりと金気のような色が着いていました。


 
湯使いは完全放流式。湯加減38.8℃という長湯仕様。pH値は7.11でした。
湯口のお湯をテイスティングしてみますと、甘塩味、清涼感を伴うほろ苦味、石膏味、そして弱めの金気味が感じられます。見るからに金気が強そうな色合いですが、実際に金気は然程強くはありません。その代わり、弱いながらも炭酸味がしっかり得られました。そして石膏系の匂いと金気臭が嗅ぎ取れました。おそらくは含食塩-重炭酸土類泉かそれに近い泉質かと思われます。
このお湯を手桶で掛け湯をしてから・・・



入浴させていただきました。ちょっとぬるめなので、湯疲れすることなくいつまでも入れますし、湯船は広くお湯の鮮度も良いので、入り応えも十分。貸切なので日本と同じスタイルで湯浴みできるのも嬉しいところ。湯中では温泉が肌のシワ一本一本へ砥の粉みたいに入り込み、全身にまとわりつくようなしっとり感で包まれます。日本の温泉で例えるなら、大分県の長湯温泉、あるいは鹿児島県の新川渓谷温泉郷(妙見や安楽といった各温泉)といった濁り湯に近いかもしれません。40℃未満なのに湯上がり後は全身しっかり温まり、しばらくは汗が引きませんでした。今回は立ち寄り入浴のみの利用でしたが、もし可能ならば宿泊してじっくり何度も長湯してみたくなるような、湯治向きの良いお湯でした。


 
参考までに入浴前と入浴後の湯船を比較してみましょう。入浴前は湯船一面を結晶が覆っているため白く見えますが、私が湯船に入ると結晶は全て排水溝へ流れ去ってしまったため、オレンジ色のお湯が全貌を現しました。

さて、お湯に満足して個室から立ち去り、小径を歩いてゲートの方へ戻ろうとすると、受付のおじさんが必死の形相で私を追いかけてくるではありませんか。インドネシア語で訴えかけるので何をしゃべっているのかわからなかったのですが、どうやら個室風呂には更に料金が必要とのことで、その額はRp30,000。てっきりRp5,000の中に個室風呂料金が含まれているのかと思いきや、別料金だったようです。とはいえ、彼の口から出た金額は事前に調べていた料金よりもはるかに高いので、私はボッタクられているのではないかと懐疑的だったのですが、昨日の「チソロック噴泉」の公園内にある温泉プールの個室がRp50,000だったことを思い出すと、現在の相場はそんなものなのかもしれないと強引に自分を納得させ、面倒ないざこざは嫌なので、言い値を彼に手渡して公園を立ち去りました。結局この温泉公園では合計Rp135,000(日本円で1,200円弱)も支払ったのですが、インドネシアの物価から考えると結構な高額なので、料金に関しては悪い後味が残ってしまいました。お湯が良かっただけにちょっと残念でしたが、いまのインドネシアの物価ってそんなものなのでしょうか…。




入園料Rp100,000、温泉ゾーン入場料Rp5,000
備品類なし

私の好み:★★+0.5

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