飯坂温泉 導専の湯

東北屈指の規模を誇る温泉街として有名な福島市の飯坂温泉ですが、バブルが弾けて景気の低迷が続いている上、昭和的な歓楽的な街並みが仇となってしまい、近年では廃旅館の姿が目立ってすっかり斜陽な光景が広がっていることは皆様ご承知の通りかと存じます。こうした状況に危機感をおぼえたのか、福島市では平成18年から五ヶ年計画で当地区の都市再生整備事業を策定し、旧堀切邸の開園や駅舎の改修をはじめとして、すっかり草臥れてしまった飯坂の街並みを立て直そうと必死になっています（詳しくは市のホームページをご覧ください）。この事業の一環として一昨年（2010年）12月27日にリニューアルされたのが、飯坂に9つある共同浴場のひとつ「導専の湯」です。リニューアルされた情報は以前から小耳にはさんでいましたが、なかなか行く機会が得られず、先日ようやく訪問してきました。



まずは改修前の「導専の湯」がこちら。夜なので写りはあまりよくありませんが、至ってシンプルで飾りっ気のない共同浴場であることは一目瞭然。



そしてこちらは改修後の姿。すっかり綺麗になっちゃいましたね。以前は文字だけの素っ気ない看板がかかっていましたが、今では立派な扁額が掲げられており、また全体的な外観もなまこ壁が目立つ蔵造のようなデザインとなっていて、観光客でも立ち入りやすい佇まいに変貌していました。尤も、建物左端にあるトイレや男女浴室の入り口などは、以前のままの姿を踏襲しています。



たとえ外観は綺麗になっても、一見の観光客にとって高い障壁となっているのが、飯坂の外湯ではおなじみの熱い湯加減であります。改修後の「導専の湯」ではお湯の温度を表示するようになったらしく、格子窓にくくりつけられた専用プレートには現在の湯加減がマジックで手書きされていました。でもよく見ると「熱い湯」と「温かい湯」の二つに分かれているぞ。以前は熱い浴槽ひとつしか無かったんですが、改修後は熱いお風呂が苦手な客向けに、ぬるめの浴槽も設置されたんですね。それにしてもぬるめでも44℃もあるんですから、やっぱり飯坂は熱いよ…。



夜7時という最混雑時間に訪問してしまい、浴室内には常時5～8人近い利用客がいたため、他の利用客に配慮して内部はほとんど撮影しておりません。唯一撮ったのがこの一枚です。「あつゆ」と「ぬるゆ」に2分割された浴槽の間には石造りの湯口があり、その湯口にとっぷり浸かるようにして福島市観光ＰＲキャラクターである「ももりん」の石像が屹立していました。いかにも温泉地らしく、こちらで佇んでいる「ももりん」は頭に手ぬぐいを載せていますね。この可愛らしいキャラクターの真下で、いかつい顔をしたオッサンが熱いお湯に全身入浴ながらその熱さに苦悶の表情を浮かべている光景を目にすると、両者のあまりのギャップに思わず吹き出してしまいそうになりました。

さすがに改修されて2年しか経っていないために、浴室内は綺麗で明るく広々しています。浴槽とは反対側の壁には湯と水の蛇口のセットが3組、それぞれ離れて設置されていますが、吐出圧力が弱いためか常連さんは誰もこれらの蛇口を使おうとせず、桶で湯船からお湯を直接汲んで利用していました。

上述のように浴槽はぬるゆとあつゆに分かれており、それぞれ5～6人が同時に入れそうなサイズが確保されています。お湯に関しては両者を跨ぐ「ももりん」の湯口にて一定量の加水が行われているようで、ぬるゆの浴槽に設置されたデジタル温度計は43℃を指しており、一方であつゆの方は常連さんが水道の蛇口を全開にしてジャンジャン加水していたため、飯坂にしては低めの45℃まで下がっていました。改修に伴って使用源泉が湯野分湯槽から若竹分湯槽へ変更されたようでして、知覚的特徴としては無色透明でほんのり芒硝臭が漂う飯坂らしいお湯です。なお加水されているものの完全放流式ですからお湯の鮮度は抜群です。

各地の共同浴場は主要な客層が地元の爺さん婆さんに限られていることが多いのですが、こちらのお風呂は老若男女を問わず、実に多くの常連客で賑わっていました。駅からも近く、貴重品ロッカーも用意されているので、鉄道旅行の際にぷらっと利用するのも便利ですね。


若竹分湯槽
単純温泉　60.2℃　pH8.7　溶存物質0.7894g/kg　成分総計0.7894g/kg
Na+:198.6mg,
Cl-:93.8mg, SO4--:321.1mg,

福島交通飯坂線・飯坂温泉駅より徒歩3分
福島県福島市飯坂町湯野導専16　　地図
024-542-4241（飯坂温泉観光協会）
飯坂温泉オフィシャルページ

6:00～22:00　金曜定休
200円
貴重品用ロッカーあり

私の好み：★★