温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

雲仙温泉 国民宿舎青雲荘 その3(露天風呂)

2015年12月03日 | 長崎県
前回記事「雲仙温泉 国民宿舎青雲荘 その2(内湯)」の続編です。

●朝の露天風呂

内湯や家族風呂の出入口が並ぶ廊下の突き当たりが露天風呂。前回記事で申し上げましたように、露天風呂は別棟ですが、本棟のすぐそばに隣接しており廊下で接続されていますから、意識しなければ別棟と気づかないでしょう。


 
この露天風呂棟は平成24年に開設されたばかり。扉を開けて館内に入ると、そこには大きな窓が円弧を描くウッディーなホールが広がっており、ゆったりと寛げる休憩スペースとなっていました。このホールは傾斜地の上に設けられているため、開放感があって見晴らしもまずまずです。


 
綺麗で使い勝手の良い脱衣室は、木材を多用してぬくもりを生みだしつつ、濃淡のカラーリングでめりはりを効かせた現代的な内装デザインです。室内は広くてストレスフリー。洗面台は5台あり、ロッカーにはリストバンド付きの鍵が用意されています。


 
露天風呂棟ですので、その名の通りお風呂は露天風呂のみですが、脱衣室から出る戸を開けて目の前に広がる景色を目にした瞬間、日本庭園のような純和風の美しい佇まいに思わず息をのんでしまいました。しっとりとした落ち着いた雰囲気の中、軒先に大きな岩風呂が横長に伸び、その向かいに植えられたツツジがちょうど見頃を迎え、新緑のモミジが添え色となって、露天風呂に張られた白濁湯の鮮やかさが一層映えていました。また建物側壁の羽目板にはシックな色調の塗装が施され、こちらも白濁湯とのコントラストをより際立たせていました。
ちょっと穿った見方をすれば、近年九州各地の温泉地でよく見られる、黒川温泉に影響されたかのようなデザインの模倣に思えなくもないのですが、これはひとつの時流ですし、そもそもデザインが周囲の環境によくマッチしている上、白濁湯との相性も良いので、違和感はなく、むしろ風情たっぷりで、うまい具合に馴染んでいました。

なお奥の方には洗い場が設けられており、シャワー付きカランが6基並んでいました。


 
石臼の湯口からお湯が絶え間なく注がれています。なお湯口の形状は男湯と女湯で異なっているんだとか。湯口から出てきたばかりのお湯は無色透明ですが、空気に触れることにより濁りを呈し、石臼を真っ白く染め、湯船では青白色を伴う神秘的な白濁をもたらしていました。お湯はれっきとした掛け流しであり(季節により加温や加水が行われるそうです)、出入口付近にある切り欠けから惜しげも無く溢れ出ていました。外気による冷却の考慮してか、訪問時は内湯より投入量が多かったのですが、それゆえお湯の鮮度感も内湯より優れているように感じられました。尤も常に露天の方が投入量が多いというわけではなく、おそらく季節や天候などに左右されるものと思われます。こうした湯量の妙により、内湯・露天風呂とも、絶妙な湯加減が保たれていました。

お湯は内湯と同じく小地獄から引いている自家源泉。お湯を口に含むと収斂する酸味が感じられますが、同じ雲仙温泉でも新湯地区の源泉より酸っぱさがマイルドで、柑橘類の搾汁のようなストレートな酸味が優しく口の中に広がります。酸味が穏やかである一方、苦みや渋みは控えめで、イオウ感はしっかりと強く、湯口からは鼻の奥をツーンと刺激する硫化水素臭がタマゴ感を伴いながらはっきりと香っており、湯中ではパウダリーな浴感の他、サラサラスベスベの中に弱いキシキシ感が混在し、湯上りの体にはイオウの匂いがいつまでもこびりつきました。そしてイオウの血管拡張効果により、湯上り後は長い時間にわたって温まりが持続し、部屋に戻ってフカフカの布団に潜り込んだら、まさに秒殺で忽ち夢の世界へと誘われてしまいました。


 

露天風呂の端は傾斜地に突き出たテラスになっており、手すりにもたれかかりながら景色を眺めますと、朝霧に包まれた山の深緑が広がっていました。なおこのテラスにも洗い場(シャワー付きカラン4基)が設けられているのですが、奥の洗い場と違ってこちらはテラスを吹き抜ける風が直撃するため、シャンプーしている最中はちょっと肌寒いかも。


 
上述したように、私が訪れた時季はツツジがちょうど満開を迎えており、ツツジの赤、モミジの新緑、そして温泉の白濁というトリコロールが実に神秘的で、湯浴みしているときには風景画の世界に紛れ込んだかのような錯覚に陥りました。実に見事なツツジです。


●夜の露天風呂
 
露天風呂は宿泊中に朝晩1度ずつ利用しました。お日様が出ている時と隠れている時とでは、同じ露天風呂も趣きを変えるので、夜間の様子もちょっとご紹介します。夜間のホールはなぜか怪しい色の照明が灯っていました。長崎名物のビードロをイメージしているのかな。


 
夜間の露天風呂は、山の静寂に包まれたしっとりと落ち着く大人の空間。


 
白濁湯の真上で灯りに照らされた満開のツツジは、陽気で快活な美しさを放つ日中とは対局の、婉容ながらもどこか妖艶さを感じさせる姿を見せており、日中が振袖の町娘ならば、夜は艶やかな花魁のようでした。いずれの場合でも、白濁湯がまるで白粉のようにその美しさを際立たせていることには違く、紅白の対比が実に秀麗でした。
このように私が訪れた時季にはツツジが美しかったのですが、その隣にモミジが植わっていることからもわかるように、この露天風呂では四季に応じたそれぞれの美しさが愉しめるのでしょう。
お湯よし、雰囲気よし、値段よしという良いもの尽くしの素敵なお宿でした。


雲仙温泉(小地獄)
単純硫黄温泉(硫化水素型) 63.5℃ pH3.85 自噴(湧出量未記載)(※) 溶存物質0.184g/kg 成分総計0.426g/kg
H+:0.1mg, Na+:6.8mg(21.75mval%), NH4+:4.2mg(17.12mval%), Mg++:2.3mg(13.91mval%), Ca++:7.1mg(26.05mval%), Al+++:0.8mg(6.54mval%),
Cl-:4.4mg(7.47mval%), SO4--:72.1mg(90.38mval%), S2O3--:2.0mg,
H2SiO3:80.5mg, CO2:238.5mg, H2S:3.5mg,
(※)公式サイトによれば湧出量は日量440トン。自家源泉。

長崎県雲仙市小浜町雲仙500-1  地図
0957-73-3273
ホームページ

日帰り入浴10:30~18:00
660円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

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