温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

ニセコ湯本温泉 雪秩父

2014年02月13日 | 北海道
※「雪秩父」は2015年9月に完全改築してリニューアルオープンしました。当記事では旧施設の様子をレポートしております。

 

前回取り上げた「小湯沼」で冷えた体を温めるべく、大湯沼の畔に建つ国民宿舎「雪秩父」へと駆け込んだのでした。こちらの施設は日帰り入浴を積極的に受け入れているので、気軽に利用できるのが嬉しいですね。


 
ちなみに上画像は5年前の冬に撮った「雪秩父」でして、今回の訪問はそれ以来ぶりとなります。外観は殆ど変わっていませんね。



 
話を今回訪問時に戻しましょう。
玄関では大湯沼の湯華で作った真ん丸い泥団子が販売されていました。ご当地ならではのお土産ですね。この時は撮影だけに留めてしまったのですが、他では入手できないものですから、買っておけば良かったと後悔しております。


 
券売機で料金を支払い、フロントに券を渡して浴室へと向かいます。館内のボードでは、この日の朝9時半時点での各浴槽における温度を掲示していました。


 
「温泉浴場」と記されたプレートの奥には浴室へ下りる階段がありますが、その手前には昭和の公共宿泊施設らしい匂いを強く漂わせる共用の洗面台が設けられており、フロントで貸し出されるドライヤーはこちらで使用することになります(古い建物ですから、指定場所以外で使用するとブレーカーが落ちちゃうのかもしれませんね)。なおコインロッカーもこの付近に設置されています。



階段を下りて更衣室へ。適宜改修工事が行われているらしく、古い建物の割には広くて綺麗ですが、上述のようにロッカーなどは上の階に用意されており、こちらには棚と籠が備え付けられているのみです。とはいえ、一つ一つの棚の区画は大きく確保されていますし、室内面積も結構広いので、多少混雑しても圧迫感が無くて着替えしやすいんですけどね。


 
浴室には後述する2つの浴槽の他、洗い場が左右に分かれて配置されており、シャワー付き混合水栓が計10基、シンメトリに設置されています。


 
「雪秩父」のお風呂では2種類の源泉が用いられており、内湯では1源泉に対して1つの浴槽が用意されております。大湯沼から引湯している「硫黄泉」は浴室左側に据えられた10人サイズの四角形の槽に張られており、湯口からはしっかりした量の源泉が注がれ、湯船の温度は42~3℃、窓側の切り欠けより惜しげも無く溢湯しています。加水されているか否かは不明ですが、放流式の湯使いです。いかにも大湯沼の温泉らしく、ライトグレーに強く濁っており、湯泥のために透明度は殆ど無く、弱い酸味に苦味と渋味を伴う硫黄感が明瞭です。しかも柔らかい浴感が体を包んでくれるので、いつまでも浸かっていたくなる素敵なお湯であります。


 

一方、浴室右側の平行四辺形の浴槽には「鉄鉱泉」と称する源泉が注がれており、容量としては8人前後、「硫黄泉」の湯船よりもやや熱い43~4℃の湯加減となっていて、こちらも窓側(洗い場)側の切り欠けからお湯がオーバーフローしていました。もちろん放流式の湯使いです。
湯船のお湯は暗くて薄めの山吹色を混ぜたようなライトグレーに濁り、重炭酸土類泉に硫黄をミックスさせたような味と匂いを有しており、具体的には土類味と金気味に炭酸味とえぐみに、イオウ臭と弱い金気臭、そして何かが焦げたような匂いが感じられました。名称は「鉄鉱泉」であり、たしかに金気が感じられますが、総鉄量は3.9mgしか含まれておらず、分析表上の泉質名も単純温泉ですから、どちらかといえば鉄鉱泉というより含土類重曹泉に近いの温泉なのであります。このお湯に似た泉質は、湯本温泉から麓に南下した鯉川温泉・薬師温泉・黄金温泉などでも見られますが、麓の各温泉より硫黄感が遥かに強い点が異なるかと思います。



開放的な露天ゾーンにはいろんなお風呂が設けられていて、こちらも浴槽によって「硫黄泉」や「鉄鉱泉」が使い分けられており、好みに応じて使い分けたり、いろんな浴槽をハシゴしたりと、入浴客のニーズに合わせた楽しみ方ができるんですね。


 
最も手前にある「ふれあいの湯」では、小判型をした石板貼りの浴槽にライトグレーに強く濁る硫黄泉が張られています。頭上には屋根が設けられ、また傍にはベンチも用意されていますので、湯船に浸かりながら、あるいはベンチでクールダウンしながら、多少の雨雪を気にすること無く、名前のとおりに入浴者同士でふれあえるような造りとなっています。5年前の訪問時には、ニセコのパウダースノーを求めてやってきた豪州人スキーヤー達が、この「ふれあいの湯」に集まって日本の温泉文化を満喫していらっしゃいました。


 
露天エリア自体は馬場川へ向かって段々状に下っていますが、「ふれあいの湯」と同じく最上段にあるのが上画像の「檜の湯」で、こちらにも同じく硫黄泉が張られています。こちらには屋根が無く、また他の浴槽より視線が高いのでとても開放的。しかも41℃という比較的ぬるめの湯加減となっていたので、この時の私はこの湯船で周囲の景色を眺めながら、のんびり長湯してしまいました。



「ふれあいの湯」や「檜の湯」より一段下がったレベルに設けられている「よぞらの湯」は、周りを大きな岩に囲まれており、しかも丸太の梁が頭上を横切っているので、他の浴槽と較べて眺望の面で劣りますが、夜の帳が下りて周囲の景色が闇の中に消えると、ようやくこの湯船の本領が発揮されるらしく、開放感を求めるには上方を向くしか無いロケーションを逆手にとって、浅い造りのこの湯船に浸かりながら、寝湯のような姿勢で上を向いて夜空の星々を眺めようじゃないか、という提案が名前に込められているものと想像されます。そのネーミングには、温泉施設の活用方法という側面を超越し、どんなものにも見方を変えれば必ず一つは長所があるんだ、という教訓を訴えかけているように感じられたのですが、ま、明らかに大袈裟な解釈ですね。失礼いたしました。



「よぞらの湯」と同じ段にあるのが「やすらぎの湯」で、こちらは円形のタイル貼りの浴槽に「鉄鉱泉」が注がれています。外気に触れて冷却されるためか、内湯の「鉄鉱泉」よりも濁り方が強く、お湯の見た目だけでは「硫黄泉」と見分けがつきにくい程でした(若干こちらの方が暗い色合いかも)。設置位置が低いために眺望面では「檜の湯」よりやや劣りますが、湯加減はこちらの方が熱い(42~3℃)ので、露天でしっかり温まりたいなら、この「やすらぎの湯」の方が良さそうです。でもこの日は、小湯沼で私を襲ったものと同種のブヨが、何故かこの「やすらぎの湯」に集中しており、あまり近寄りがたい環境であったことも事実でした。お湯から放たれる炭酸ガスに誘われて集まってしまうのでしょうか。先ほどブヨに刺されたばかりの私は、残念ながらここではやすらげませんでした。



最下段には大湯沼をモチーフにして造られた「大湯沼の湯」があるのですが、温度低下のためこの日はクローズされていました。


  
そういえば、5年前に訪問したときにも「大湯沼の湯」はクローズされていましたっけ。源泉温度の関係で、雪が降ろうと降らまいと、気温が下がれば閉鎖されちゃうのかも。



全ての浴槽で放流式を実現しており、しかも2つの源泉を多様な浴槽で楽しめるという、お風呂好きにはたまらない温泉施設。今回再訪して改めてその魅力を実感しました。噂によれば2014年度に改装するそうですが、どんな姿に生まれ変わるのでしょうか。


硫黄泉
単純硫黄泉(硫化水素型) 56.8℃ pH3.9 湧出量記載なし(自然湧出) 溶存物質0.161g/kg 成分総計0.557g/kg
H+:0.1mg(6.80mval%), Na+:8.5mg(25.17mval%), Mg++:5.7mg(31.97mval%), Ca++:8.4mg(28.57mval%), Al+++:0.4mg, Fe++:0.6mg,
Cl-:4.3mg(8.11mval%), HS-:0.0mg, S2O3--:1.0mg, SO4--:64.2mg(90.54mval%),
H2SiO3:65.4mg, CO2:380.7mg, H2S:4.6mg,
(平成20年11月10日)

鉄鉱泉
単純温泉 62.8℃ pH6.2 湧出量記載なし(動力揚湯) 溶存物質0.746g/kg 成分総計0.841g/kg
Na+:58.3mg(36.87mval%), Mg++:25.1mg(30.04mval%), Ca++:33.8mg(24.53mval%), Fe++:3.9mg,
Cl-:8.7mg(3.82mval%), SO4--:53.5mg(16.95mval%), HCO3-:315.5mg(78.93mval%),
H2SiO3:227.6mg, CO2:95.0mg, H2S:0.2mg,
(平成19年9月10日)


北海道磯谷郡蘭越町字湯里680
0136-58-2328
ホームページ

日帰り入浴9:30~20:00
500円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーは帳場貸出、

私の好み:★★★

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