温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

ニセコ小湯沼 2013年10月下旬

2014年02月11日 | 北海道

ニセコ湯本温泉の源泉である「ニセコ大湯沼」は大地のパワーが伝わってくる景観が美しい観光名勝であり、その大湯沼で湧く硫黄の温泉は「雪秩父」などの施設で入浴することができますが、沼のお湯自体は熱すぎますし、観光客の視線が降り注がれますから、この沼で野湯をするにはちょっと無理があるんですよね。ということで、大湯沼から奥に位置し、北海道の温泉マニアによく知られた野湯である「ニセコ小湯沼」へ向かうことにしました。


 
以前は大湯沼から遊歩道が伸びていましたが、その道は廃道になってしまったそうですから、私は事前に調べておいた情報に基づいて林道へ乗り入れ、我が車が停車している上画像のポイントから西の方角に伸びる杣道を歩くことにしました。歩き始める前に、足元をゴム長靴に履き替え、熊よけの鈴も装着し、準備万端♪


 
スタートしてから一部を除いて緩やかな下り坂が続きます。さすがに雪の季節を目前にした晩秋の山ですから、一年草の藪はすっかり枯れており、ルーティングにはちっとも苦労しませんでしたが、しかしクマザサは両側から道を覆い尽くさんばかりに繁っていましたから、腰を屈めながら笹ヤブの中を進むほかありません。



歩き始めてから4~5分で視界が開け、ちょっとした広場に到達です。前方からは小川のせせらぎが聞こえてきますので、小湯沼を源とする馬場川がすぐそばで流れているのでしょう。



この広場から馬場川の流れに沿う形で進む方角を北に変えます。といっても川からは離れているので、ひたすら藪の中を歩くことになるんですけどね。広場の右手に見える、切れ込みのような細い踏跡からヤブの中へ突進です。全行程の中ではこの踏跡を見つけるところが最大の難関かもしれませんが、少なくとも私の場合は、この手の探索を繰り返しているうちに道を見つける嗅覚が鋭くなっているので、苦もなく即座に発見できちゃっいました。



広場からは登りが続きます。そして両側から茂るクマザサも行く手を遮ります。地面を這うほど深く腰をかがめながら、ただひたすら前進あるのみ。


 
坂の途中には苔むした岩が露出する箇所もあり、しかもところどころに泥濘もありますから、結構滑りやすくて注意を要しました。


 
やがて登り勾配が緩やかになり、幅員も若干広くなって、腰をかがめる角度も深くせずに済むようになると・・・


 
スタート地点から13分ほど歩いた地点で、笹ヤブに埋もれて傾いている「小沼入口」の案内杭を発見。


 
案内杭から1分もしないうちに俄然視界が開け、目的地の小湯沼にたどり着きました。灰色に濁る沼の向こう側に聳えるチセヌプリはうっすら雪化粧しています。ちなみに、この時の気温は7℃。しかも頭上には鉛色の雲が垂れ込めていました。



小湯沼を源として、大湯沼の脇を流れ、国民宿舎「雪秩父」の露天風呂をかすめ、まっすぐ南へ流れて、昆布と蘭越の中間辺りで尻別川と合流する馬場川。上画像の地点がその流れの実質的なスタート地点なのでしょう。夏になればこの川でも野湯が楽しめるようですが、この日は気温が低いために川の温度も10℃台まで下がっており、とてもじゃありませんが入浴できませんので、ここは見学のみに留めておきました。


 
岸を歩いて辺りを散策です。灰色に濁る沼のあちこちで温泉が湧出しており、水際では無数の泡が上がっていて、さながら別府の坊主地獄のようでした。



ちょうど半周したあたりで、人工的に掘られたと思しき湯溜まりを発見。


 
明らかに野湯を目的として掘られたものと推測され、そのロケーションたるや素晴らしいものがあるのですが、温度計を突っ込んでみたところ29.1℃という、かなりぬるい湯加減であることが判明。冬のような冷たい外気が温泉の熱を奪ってしまうのでしょうね。



せっかくここまで来ておきながら、ただ見学するだけでは温泉バカの名が廃る。30℃に満たないものの、決して冷たいわけじゃないから、気合を入れたら入浴も無理じゃない。ということで、誰もいないことを幸いに、その場で脱衣して、まずその湯溜まりに入ってみることにしました。
こうしてご覧になってもわかるように、結構大きな湯溜まりでして、深さもいい具合です。底からお湯が湧いていますから、実際に浸かってみますと温度計の数字よりも多少は温かく感じました。


 
続いて沼自体の温度も計測してみました。温泉の湧出箇所にはムラがあるため、ポイントによって温度が異なっているのですが、この時は最も熱いところでも21.2℃でして、冷たいわけじゃないのですが、かといって入浴するに相応しい温度でもなく、実に中途半端な感じなのであります。



でも上述の湯溜まりに入るべく裸になったついでなので、この沼でも入ってみることにしました。
入った感想を一言で申し上げるならば「怖かった!」
たしかに沼の表面は温度計の数字通りなのですが、温泉は底から湧いているので、足もとは火傷しそうなほど熱い。しかも底なし沼のように泥が堆積しているため、迂闊に足を踏み入れると、そのまま沈んで底に引きずり込まれそうになってしまう…。熱さの恐怖と、底なしの恐怖。これら2つの恐ろしさに、万一のことがあっても誰も助けてくれない「孤独」という要素が加わって、沼では落ち着いて野湯を楽しむことが出来ず、しかも空からチラチラと小雪が舞い始めたため、今回は残念ですが早々に撤退することにしました。ま、入浴を果たしただけでも良しとしましょう。

湯泥で全身灰色の泥だらけになった体を、沼に注ぐ清冽な沢の水で洗い落とし、タオルで水滴を拭って着替えようとすると、肌の至る所に黒い斑点が付着しているではありませんか。よく見るとその斑点はブヨなのでした。こんな寒い季節にもかかわらず、湯沼の温かさによって生きのび、最後の生命力を振り絞って吸血活動に勤しんでいたのでしょう。私はまんまとその餌食になってしまったのでした。
慌ててブヨを払い落とし、急いで着衣して冷えきった体の体温を維持しつつ、小雪が舞い散る中、クマザサの藪を小走りで戻っていったのですが、それから一週間は強烈な痒みと腫れが止まらず、あまりの痒さに掻き壊してしまった箇所は今でも跡が残っています。野湯を楽しむことって、なかなか一筋縄ではいかないものですね。


野湯につき分析表なし


北海道磯谷郡蘭越町字湯里  地図(国土地理院)

野湯につき無料

私の好み:★★

コメント (10)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ニセコ薬師温泉 | トップ | ニセコ湯本温泉 雪秩父 »

10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
無事で何よりでした (hiro)
2014-02-24 05:28:43
底なし沼にはまらず無事に帰還できて良かったです。
すごいチャレンジ精神ですけど、くれぐれもお気をつけて(笑)
返信する
Unknown (K-I)
2014-02-24 09:20:01
hiroさん、おはようございます。
無事に戻ってこられてホッとしました。こういう時は一人だと心細いものですね。今のところ何事も無くこの手の温泉を巡れていますが、いずれは大怪我するのではないかと、内心不安です。
返信する
生々しいレポートにびっくり! (ちゃたろうくん)
2014-02-27 21:30:42
久しぶりにこちらへ立ち寄ってみましたら、ニセコ小湯沼のレポートにビックリでした。
底なし沼かもしれない恐怖(これはドキドキでした)、ブヨからの攻撃、冷たい温泉、行きつくまでの困難。
大変な経験でしたね。
一人というのも危険率が高まりますね。

私も鳥海山で危ない目にあったことを思い出しました。
去年5月末、鉾立から五合目の見晴台へ。途中の石の階段はUの字にカーブしている部分が雪渓で覆われていて、たまたま現場で一緒になったご夫婦は足跡がある通りに雪渓を歩けば大丈夫と進みました。
私は滑りやすいただのスニーカーを履いていました。
行きは何とかわたっても帰りの下りは・・・と躊躇
しかし、大丈夫、大丈夫の言葉に上ってしまいました。

帰り、その場所に来たとき、あ、降りられない、どうしよう・・・でした。(見晴台でゆっくりしていたため、ご夫婦はとっくに帰られた)
20メートルほどの雪渓の下り。前の人の足跡をたどりながら30分はかかったでしょうか・・
やっとの思いで雪渓を渡り、無事下りた時は助かった、と思いました。両手の指先が3時間ほどジンジンとしびれていました。山側の雪渓にしがみつきながら下りた為です。  
非常に後悔しました。まだ山開きもしておらず人もほとんどいませんでした。

K-Iさんも無事でよかったですね。


 
返信する
Unknown (K-I@タイ)
2014-02-28 02:19:04
ちゃたろうくんさん、こんばんは。
>鳥海山で危ない目に
私のニセコ小湯沼なんかよりも遥かに恐ろしい体験ですね。スニーカーでの雪渓歩きは、滑る・染みこむ・冷たいの三拍子が揃っちゃいますから、想像するだけでもブルブル震えてしまいます。そのご夫婦の大丈夫という言葉も、雪渓歩きに相応しい装備があってこそなんでしょうね。5月末はまだ山によっては雪がたくさん残っていますから注意を要しますね。私も登山を嗜む人間として、ちゃたろうくんさんのご経験を今後の教訓にしたいと思います。それにしても本当に無事下山できてよかったですね。
ちなみに私は今タイにおり、一昨日には野湯っぽいことをしていたのですが、そこでしっかりブヨの猛攻に遭い、体中が赤く腫れて、痒くてたまりません!
返信する
タイでもブヨに(*_*; (ちゃたろうくん)
2014-02-28 09:57:07
タイにいらっしゃっているんですね。
タイでもブヨに! 自然の中では当然なのでしょうか。
野生の生物たちは日々命をつなぎながら生きているのですから。カモが来れば食らいつきますか・・・(^_^;)

素朴な疑問をK-Iさんに。

いろんな思いをされて温泉に行く行動力はどこから出ているのでしょうか~?
飽きずに長い間持続されている要因も。

返信する
なぜでしょう? (K-I@タイ)
2014-02-28 14:04:37
>ちゃたろうくんさん
どうして温泉巡りを続けていられるのでしょうね?
自分自身のことながら、よくわかりません。あはは。
休みの度に遠征してばかりいますので、蓄えがほとんど無くなっていますが、それでも出掛けてしまうのは、外出が好きな性分もさることながら、温泉は全てが異なる個性を有しており、一つとして同じものがないので、その全てを知りたい、よりよい出逢いを求めたい、という探求心や好奇心が、私を温泉巡りに駆り立てるのかもしれません。
返信する
一つとして同じものがない (ちゃたろうくん)
2014-03-02 23:03:36
確かに地質(温泉質といいますか・・)はその土地によって千差万別だと思いますからここはどうかな、あそこはどうかな、となるのでしょうか。
おなじ場所でも泥湯温泉の場合などは道路を挟んでこちらは乳白色、向かいは透明、隣は泥の色、で、とても奥深いものがありびっくりしました。不思議です。
そして入ると必ずああ、いいなぁ、となり寿命が延びる気がします。(笑)

しかしながら長く情熱を保ちながら続けられることがあるということは、大変幸せなことですね。

蓄えも上手にやりくりして、でしょうか(笑)




返信する
Unknown (K-I@プノンペン)
2014-03-04 00:27:22
>ちゃたろうくんさん
>泥湯温泉
そうなんですよね。あんな狭いエリアでありながら、施設によってお湯の性格が違うんですよね。自然って本当に面白いものです。源泉によってお湯の質が異なることもさることながら、同じ源泉であってもお湯の使い方によって、湯船におけるコンディションがかなり異なってきますので、そのあたりの違いを体感することもまた一興です。

>蓄え
ちっともやりくりできていません(笑)。江戸っ子の血を引く者として「宵越しの金は持たねぇ」というスピリッツで、毎日青色吐息で過ごしております。
返信する
宵越しの金は持たねぇ ^。^ (ちゃたろうくん)
2014-03-04 11:23:00
気風のいい心意気でうらやましいです。^・^
私は東北地方に住んでいるせいか、性格なのか慎重かもしれません。

時々思います。

「アリとキリギリス」  どっちの生き方が幸せかな、と。^。^
返信する
Unknown (K-I)
2014-03-07 08:34:19
>ちゃたろうくんさん
諸般の事情で返信が遅くなり申し訳ございません。
>「アリとキリギリス」
私の場合はそのいずれでも無いような気がします(笑)。気の向くままフラフラしているので、アメンボあたりかもしれませんね。アメンボはイソップには出てこないでしょうけど…。
温泉が身近にある東北地方にお住まいとのことで、その環境がとっても羨ましいです。この春からETC割引が縮小されちゃうので、いままでのようにヒョイヒョイと行動できなくなりそうです。
返信する

コメントを投稿