温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

コスモス温泉

2016年12月16日 | 宮崎県
 
霧島連山の北麓に広がる宮崎県の生駒高原へとやってまいりました。秋になると100万近いコスモスの花が咲き誇るこの高原には、熱い風呂として温泉ファンに有名な日帰り入浴温泉施設「コスモス温泉」がありますので、どれほど熱いのか体感すべく立ち寄ってみることにしました。湯屋は老人福祉施設に囲まれていますので、おそらくその運営母体がこの温泉も兼業しているのでしょう。


 
正しくは「ふれあい交流センター」という名称を冠しているのですね。中華圏の三合院みたいに棟がコの字型に繋がっているのですが、その中でも最も奥まっている屋根の低い棟に玄関がありました。玄関の内側で靴を脱ぎ、通路を歩いて湯屋側へと向かいます。



廊下の先に受付があり、そこに設置されている券売機で料金を支払います。受付の前には休憩用のお座敷が設けられており、私が訪問した時には、地元の方がのんびりと寛いでいらっしゃいました。普段着感覚で気軽に湯浴みするのどかな湯屋です。


 
共同浴場を思わせる鄙びた木造の浴場は、湯水がかかる床や腰部はタイル張りで、奥に後述する浴槽が2つ並び、手前右側に総木造の水風呂が一つ据えられていました。


 
洗い場にはシャワー付きカランが計6基設置されており、またその中央にはベンチが置かれていました。このお風呂では浴槽の縁に腰掛けることが禁じられているため、このようなベンチが用意されたのでしょう。こちらのお風呂はとっても熱いので、湯船に入った後はどうしても体がグッタリしますから、体を休めるためにはこうした腰掛けが欠かせないんですね。



洗い場には袖板のようなものが側壁から出っ張っているのですが、現在洗い場として使われている空間は、元々何か別の設備が設けられていた形跡なのでしょうか。この出っ張りのところには排水のためのグレーチングがあり、シャワーの排水のほか、湯船のオーバーフローもこちらへ流れ込んでくるのですが、オーバーフローが流れるところとそうでないところでは、タイルの色が全然違うことも興味深い点です。それだけ濃いお湯なのでしょうね。


 
浴槽は熱い槽と中温槽の二つに分かれており、今回男湯の暖簾が掛かっていた北側の浴室では、左側の熱い浴槽に石積みの湯口が設けられています。焼け爛れたように赤茶色に染まったその湯口からは、ゴボッゴボッと泡を立てて音を響かせながら、アツアツのお湯が噴き上げられていました。湯口における温度は46.8℃ですから、決して触れないような熱さではないのですが、投入量が多く、浴槽も大きいため、湯口に近づくだけでもひと苦労。肌を真っ赤にしてピリピリする刺激に堪えながら、湯口に近づいて温度を計測し、そのついでに傍に置かれてコップで飲泉してみますと、金気味や土類味、薄出汁味、そして明瞭な炭酸味が感じられました。そして鉄錆系の金気臭がプンプン香ってきました。洗い場のタイルを赤茶色に染めていたお湯は、湯口から出てくる時点でクリアな無色透明ですから、空気に触れたり減圧されたりするうちに、徐々に濁って色が表れてゆくのでしょう。


 

湯口のお湯がダイレクトに注がれる熱い浴槽。大きさは(目測で)2m×3mでしょうか。訪問時の温度は45.2℃でした。熱いでしょ。水入れ禁止ですので、熱い風呂が苦手な方はここに入れませんね。先客のおじさんは澄ました顔をしながらこの湯船に肩まで浸かっていましたが、常連さんのみんながここに入れる訳ではないらしく、次に述べる中温槽だけに入って、そのままお風呂を出て行く方もいらっしゃいました。また熱い湯船に浸かるお客さんは、洗い場のベンチでうなだれたり、水風呂に入ってクールダウンしたり、あるいは洗い場の床でトド寝をしたりと、それぞれのスタイルで火照りを解消していました。


 

熱い浴槽の隣は中温風呂。お隣から流れてくるお湯を受けています。中温といっても(訪問時は)44.0℃という熱さなので、やっぱり人によっては耐えられないかもしれませんね。もし熱くて入れなくても、こちらは加水が可能ですから、常連さんの機嫌を損ねない程度で、水で薄めちゃいましょう。いかにも塩化土類泉らしく湯中ではギシギシと引っかかる浴感が得られ、ただでさえ熱い湯加減なのに、この手のお湯ですから湯上がりも火照りが抜けにくく、まるで全身に真っ赤に熱せられた石炭が埋め込まれたかのように、いつまでもホコホコし続け、発汗もしばらく続きました。



湯口で無色透明だったお湯は、圧力の低下、空気との接触、そして温度低下などにより、急激に濁りを呈しはじめます。2つの浴槽のお湯を比較してみますと、熱い浴槽のお湯は槽内のステップがはっきりと目視できる程度の透明度を有していますが、中温風呂では、同じ深さにあるステップがほとんど見えないほどモスグリーンを帯びた山吹色にはっきりと濁っていました。1〜2℃しか違わないだけでもこれだけ色合いが異なるんですね。温泉は鮮度が命ということがよくわかります。
のどかで渋い湯屋ですが、そこで湧くお湯は熱くて個性的。高原の爽やかな風に吹かれながら、大地のパッションと格闘できる、面白い浴場でした。


小林温泉ふれあい交流センター(コスモス温泉)
ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-炭酸水素塩・硫酸塩・塩化物温泉 47.4℃ pH6.7 60L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質2.759g/kg 成分総計3.146g/kg 
Na+:260.3mg(33.61mval%), Mg++:124.8mg(30.49mval%), Ca++:167.7mg(24.85mval%), Fe++:1.6mg,
Cl-:254.6mg(20.33mval%), SO4--:375.8mg(22.15mval%), HCO3-:1239mg(57.49mval%),
H2SiO3:196.1mg, HBO2:17.9mg, CO2:387.0mg,
(平成21年10月16日)
加水あり(中温槽のみ。源泉温度が高いため)
消毒あり(衛生管理のため。県条例の基準を満たすため。次亜塩素酸ナトリウムを使用)

宮崎県小林市南西方1130-79  地図
0984-22-7085

9:00〜23:00 無休
350円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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