写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

芭蕉の花

2015年09月09日 | 季節・自然・植物

 「秋の日は釣瓶落とし」というが、日が沈むのが本当に早くなった。久しぶりに夕方の散歩をしたが、曇り空だったこともあって5時過ぎだというのにもう薄暗い。普段とは逆の方に向かって歩いていると、珍しいものに出会った。

 子どもの頃によく遊んだ山裾の家に植えてあるバショウの木に実がなっているが、何んとも奇妙な実の付き方である。しばし立ち止ってよく見ると、小さなバナナの房のようなものがついた太い茎の先に、丸いラグビーボールのような球がぶら下がっている。この球は一体何なのか。開いて花でもつけるのか。小さなバナナは大きく育って食べられるようになるのか。球はこの先どんな運命をたどるのか興味を持って調べてみた。

 バショウは多年草で英名をジャパニーズ・バナナというが、中国が原産といわれている。花や果実はバナナとよく似ている。主に観賞用として用いられる。花は夏から秋にかけて形成される。実はバナナ状になり、一見食べられそうにも見えるが、種子が大きく多く実も綿のようで食用には不適である。琉球諸島では、昔から葉鞘の繊維で芭蕉布を織り、衣料などに利用していた。

 ぶらりとぶら下がった先にある球は雄花であると書いてある。おもしろいがなんとも奇妙な形をした花ではある。バショウといえば俳人・松尾芭蕉。「秋深き 隣は何を する人ぞ」。私にとって隣人といえば我が奥さん。先ほどからパソコンに向かって厳しい表情をしている。「やれやれ」といいながらパソコンを閉じた。家計簿とにらめっこをしていたようであるが、ない袖は振れぬ。「ないならば ないように暮らすしかない 秋の暮れ」。字余り、お粗末の一句でした。