写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

庭に孤あり

2017年06月12日 | 生活・ニュース

 「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」というほど苦しいことが多かったわけでもなかろうが、毎日楽しませてくれていたバラも最盛期を過ぎ、咲く花の数も日ごとに少なくなっている。

 そんな庭を眺めながら、奥さんが1週間も前からバラ園の改装案を練り始めた。庭を南北に直線状に埋め込んでいる煉瓦の中央辺りにアーチ状の曲面を作り、バラ庭の景観に変化を持たせたいという。

 ことバラ園に関して、奥さんからこうしたい、ああしたいと言われれば、今まですべて素直に聞いてきた。このたびもその意に沿う姿勢は崩さない。早速棒切れと長い紐を持ち出して、要望通りの弧を地面に描き、敷いてある除草シートをハサミでて切り取っていく。直線上に埋め込んでいる煉瓦を掘り起こして、弧に沿って埋め戻していった。途中「うん、なかなかいいわ」と背中から励まされながら1時間でレンガの埋め直しを終えた。

 翌朝、弧にした庭を眺めながらコーヒーを飲んでいると「いつもの所に電話して真砂土を持ってきてもらうわ」と電話で注文する。直後の朝9時、早くも真砂土を積んだ3トン小型トラックがやってきた。

 ガレージに砂を降ろして帰っていく。あとは奥さんと2人で1輪車に移し替えてはバラ園に運び込む。5往復もすると既存のバラ園の高さに土が入ったところで作業を終えた。あとは奥さんの気が済むよう、いかようにもすることになり私の作業は終わった。

 ガレージに残った真砂土は、食べるわけにはいかない。庭の低地にいずれは運び込むことになるが、それはしばらく休んだ後ということにしよう。庭に出るたび、視線は作ったばかりの張りだした弧の個所に目が行く。「徳は孤ならず 必ず隣あり」というが我が家では「庭に孤あり 必ず妻あり」か。