写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

青学・原監督の流儀

2017年01月06日 | 生活・ニュース

 2017年の箱根駅伝は、原監督が率いる青山学院大学が下馬評通り見事3連覇を果たした。そのノウハウは、監督就任前の営業マン時代に学んだことばかりだという。

 例えば、「業界の常識を疑うこと」。そのことに気づいたのは、サッカー選手の先輩に対する呼び方であった。サッカー選手は、試合中、選手が先輩・後輩の垣根なく「君」付けで呼んだり、ニックネームで呼び捨てにしたりしている。先輩に敬意を払っていないのではなく、常に瞬間的な判断力を求められる試合で、先輩に形だけの敬意を払っている時間はないということを知った。

 また、人は結果をすぐに求めたがるが、強いチームにするための「土壌づくり」ができれば、誰が監督になっても強いチームであり続けることができる。そのためには選手個々人に目標から逆算した長、中、短期の目標設定とその管理を自らさせる。達成率を自分でチェックさせればモチベーションを自分で高めることができる。

 そのほか具体的な指導方法についての著書もあるようだが、最も力を入れてきたことは「原監督がいなくなっても勝てる組織づくりをしてきたこと」のようである。厳しい上下関係もなく、アットホームで信頼できる関係を築かせ、目標を自主管理させる。今回の偉業は「組織と個人の自主性を促してきた成果」だと評されている。

 勝負の世界は勝てば官軍、何をいっても許される風潮があるが、3連覇となると姿勢を正して素直に拝聴する価値は十分にありそうである。選手と共に寮生活を送りながら、我が子のように一人一人を真近から同じ目線で見ながら育てる。中々出来ることではない。

 原監督がサラリーマンをしていたころの体験から導き出した指導法だというが、私が現役時代でも「目標管理」という手法はあった。所属する組織が成果を出すために何よりも大切なことは「自らが納得をして立てた目標を完全に理解し、自らの意思で目標を達成しようという意欲が持てるような環境であること」だと思っている。

 管理・監督する者の仕事は、部下の出来ばえだけを管理することではなく、成果が出るような環境づくりであろう。原監督は「環境」という言葉を「土壌」と言い変えて選手を育て上げてきた。大きな目標に向かう集団の指導方法は、スポーツであれ会社であれ同じであることが良く分った。