栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

先週の雑感~脚長で可動が大きいシーザリオ

2012-10-23 20:57:47 | 血統予想

先ほど「望田潤の2歳勝ち馬評価」先週ぶんから5頭更新しました~

土曜東京最終はパッと見オコレマルーナで堅そうだったのであんまり真剣に前予想はしてなかったんですが、当日パドックと専門紙をにらみながら検討していたらどうみてもスロー必至で、いつも言うように東京でもスローになると小回り向きの俊敏加速がモノをいうことがままあるので、とするとダイワメジャー牝系で小回り向きの加速だけど右回りは手前を替えるのが下手だというヒシカツジェームスにとって、実は東京のスロー想定は裏ワザ的に狙い目かもしれない…という望田らしからぬ鋭い発想が浮かんできたので、オコレと1,2着固定で流してみたらいっくんまさかの3着ですわ…(^ ^;)

土曜京都5R新馬勝ちタマモベストプレイはタマモホットプレイ、タマモナイスプレイ、チャームポットの全弟のおなじみの血統
母ホットプレイはノーザンテースト×ディクタス×ロイヤルサッシュですからサッカーボーイと同血ですが、父と母父が逆になったのでこちらはNearco4×5・5となり、だから5代アウトのフジキセキとの相性は抜群
またノーザンテーストが近い世代にあるので伸びのない体型がONになりやすく、しかしフジキセキとPrincely Giftですから体質は柔らかく出がちで、だから柔らかく緩慢に走る1400m寄りマイラーに出やすい…と
ホットプレイきょうだい、メルヴェイユドール、ドリームパスポートと、「フジキセキ×サッカーボーイ牝系」もニックスと言っていい相性の良さですが、テーストが近い世代にあるればあるほどテースト的体型がONになりやすいのは当然といえば当然

「父母相似配合」というのは似たような血脈構成の父と母の配合で、4~7代あたりに複数のクロスがバランスよくできるものをいうのですが、ようするに特定のクロスやニックスに頼るわけでもなく緊張と緩和のリズムによる爆発力に期待するわけでもなく、「いい意味での現状維持」を狙った配合ですから、ヴィクトワールピサやブエナビスタのように高い競走能力を示した父母を持つ場合が成功しやすいのです

そしてエピファネイア
Kris S.≒Habitat3×4
Hail to Reason4・7×5・6
Striking=Busher≒Blue Eyed Momo=Busanda6・8・8×7
Tom Fool6×7
などをクロスする父母相似配合

素晴しい競走馬だったのに繁殖としては期待ほどは…といわれていたシンボリクリスエスとシーザリオが、相似配合に活路を見出したというのも、こうやって走る馬が出てみると納得です
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010104155/

それにしてもシーザリオの背中と脚を長くして体質をナスキロ柔くしたような馬で(Kris S.とSeattle SlewにSir Gaylordを合わせている)、脚が長くて可動域が大きいのですから、外回りの直線でスピードに乗ったら、あのとおり豪快なストライドになります(^ ^;)

先週は桂川を勝ったミッドナイトクロスや東京マイルで未勝利を勝ったアドマイヤイチバンなど、母系にSir Gaylordを持つシンボリクリスエス産駒の活躍が目立ちましたが、ちょっと調べてみたところ、シンボリクリスエスにSir Gaylordをもってくるとやっぱりナスキロ柔さがONになりやすい…というようなデータが出てきます

母系5代目までにSir Gaylordを持つシンボリクリスエス産駒(中央既出走)49頭の芝コース別成績を出してみると

獲得賞金上位10頭:アプレザンレーヴ、ミッキーミラクル、ミッドナイトクロス、ナンヨースラッガー、ニシノエモーション、ダームドゥラック、ハイゲート、クリスマドンナ、サンライズマヌー、アカシックレコード

全芝[23.14.12.142]勝率12.0%,連対率19.4%
中山[2.0.3.20]勝率8.0%,連対率8.0%
東京[5.2.4.20]勝率16.1%,連対率22.6%
京都内[2.2.0.11]勝率13.3%,連対率26.7%
京都外[4.0.0.2]勝率66.7%,連対率66.7%
阪神内[0.0.2.11]勝率0.0%,連対率0.0%
阪神外[0.2.1.9]勝率0.0%,連対率16.7%

ようするに直線が長く平坦なほどパフォーマンスが上がっているわけで、エピファネイアの走りをみてもそれは納得できるものがありますね~

今こういう柔らかなストレッチランナーを扱わせたら日本で角居師の右に出る人はいないでしょうが、その人が外1800mでおろしたということは、やっぱりそういう馬なのです

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唸るようなニアリークロスはないが、トーセンジョーダンは唸るような名配合だ

2012-10-23 12:02:18 | 配合論

ジャングルポケットはHyperion4・6・6×6・6・7・7・7・8と、血統表の隅から隅までHyperion色のクレヨンだけで塗りつぶしたような配合をしていて、我慢強くて成長力に富むが、体質は硬いしズブくてあまり速い動きができない…というHyperion的な特質を良くも悪くも伝える種牡馬です

この「良くも」をなるべく活かし、「悪くも」をなるべく活かさないようにするには、ジャングルポケットに希薄な米血スピード、それもNasrullahやHaloやTom Foolなどとリンクした柔質のものを取り込み、全体として「父スタミナ×母スピード」の配合形にすることで、母のスピードで先行し父のスタミナで頑張るような脚質にする…というのが教科書的なやり方

アヴェンチュラきょうだいやオウケンブルースリの配合はその典型だし、アヴェンチュラがきょうだいの中で最も成功したのは母のスピードが最もONになっていて最も機動力あるレースができたからでしょう

秋天に出てくるジャガーメイルとトーセンジョーダンの場合は、母系にLady Angela3×2ノーザンテーストを引きHyperionの継続クロスになるため、なおさら他の部分に柔質な米血スピードを入れる必要がありました

ジャガーメイルは母母父がノーザンテーストですが、母父にサンデーをもってきて母はTurn-to4×4

トーセンジョーダンは母父がノーザンテーストなのでジャガー以上にHyperion色が濃い配合ですが、母母クラフティワイフはミスプロとナスキロとTom Foolを持ちNasrullah5×4、しかもHyperionの血は一本も引きません
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006103169/

昨年の秋天はピンナで追い込んで勝ち、つづくJCでバトンを受け継いだウィリアムスは、「ピンナと相談して、今回は先行したほうがいいという結論に達した」とコメントしていましたが、秋天も決して斬れでズバッと差したという勝ち方ではなく、同じく追い込んだダークシャドウとペルーサとの叩き合いにおいて粘り強さや我慢強さで上回った、という内容だったと思います

だからJCで先行したのは正解で、東京2400mでは世界一強いと思われるブエナビスタにこそ惜敗しましたが11.9-11.2-11.0-11.5-12.0のロングスパートを踏ん張りとおし、個人的にはこのJC2着こそがペストパフォーマンスだと思うし、若いころはクラフティワイフ系のスピードでフワッと先行するような中距離馬やったのに、いつの間にか日本で一番Hyperion的な中距離馬になってたんやなあ…と感動しました

「3/4Hyperion(ジャングルポケット×ノーザンテースト)」と「1/4米血(クラフティワイフ)」

スカーレットブーケ≒Storm Cat2×3とかDrone≒Terlingua3×3とか、Hornbeam≒パロクサイド3×3とかNumbered Account≒Foreign Courier2×2とか、血統屋が鼻ふくらませて唸りたがるようなニアリークロスに頼らなくても、「緊張と緩和」や「3/4と1/4」の概念だけで、トーセンジョーダンやステイゴールドやサンデーサイレンスのような馬がつくれるわけです

コメント (9)
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