栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

チチカステナンゴとファビラスラフインの配合~「満腹×空腹」の緊張と緩和

2011-08-10 09:01:29 | 配合論

チチカステナンゴはリュパン賞とパリ大賞典に勝った一流馬ですが、父Smadoun(仏16勝,2着アンドレバボワン賞-仏G3)も母スマラ(仏1勝)も目立った競走実績はなく、母父Antheusも伊G1ジョッキークラブ大賞典に勝ったぐらいで種牡馬として特に成功したわけでもないのですが、母方は代々クロスが強くかなりがっついた配合をしていて、これを4代母Selerinaから牝系図的にみると

Selerina(Nasrullah≒Royal Charger3×4)
└Summer Parties(Nearco3×5・6,父Vaguely NobleはHyperion3×4)
 └Small Partie(Nearco4×4・6・7,Native Dancer4×4,Belladonna≒Aureole4×4,父Fabulous DancerはMahmoud4×3)
  └スマラ(Northern Dancer2×3,Sir Gaylord=Swansea3×5,父AntheusはNearco3×5)

となります

代々Nearco,Hyperion,Mumtaz Begum≒Mahmoudなどのクロスを重ね、それをNorthern DancerとSir Gaylord=SwanseaとBelladonna≒Aureoleへと累進し、もうどのラインのクロスもお腹いっぱいに満たされたところで配されたのが、Northern DancerもTurn-toも持たず、Nearco6・6×5・6の薄いクロスしか持たないSmadounでした
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a011135/

Northern Dancerとナスキロとハイインローでお腹いっぱいのスマラに、流行の血・主流の血に飢えたSmadounを配したという、「満腹×空腹」の緊張と緩和のリズムによってチチカステナンゴは生まれたのです

この配合の緊張と緩和のリズムといい、Fabulous DancerとGrey Sovereignとフランス血脈の使い方といい、どこかで見たような…と思ったらファビラスラフインですね~
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1993109944/

Northern Dancer直仔でMahmoudとPharos=FairwayとHyperionのクロスを持つ相似配合のFabulous Dancerに、Kaldoun(Caro×Le Haar=グレビオ)やCarvin(Worden×Fine Top=逆ディクタス)やNeptuneといったフランス異系血脈で固めたMercalleという組み合わせは、チチカスとは父母の役割が反対になっただけで、やってることはかなり似ています

そしてディクタスといえば、Nearco4×4・4、その父Lady Angela3×2のダイナサッシュに、NearcoもHyperionも持たないディクタスが配されて生まれたのがサッカーボーイで、これもフランス異系血脈を使った「空腹×満腹」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1985103538/

サンデーサイレンスも「満腹×空腹」の典型的パターンで、父HaloはSun Princess≒Mahmoud4×3,Pharos≒Pharamond5・5×3,Blue Larkspur4×4ですが、母Wishing Wellは一番強いクロスがSir Gallahad=Bull Dog5×6・7・7という腹ぺこアウトブリード
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a00033a/

笠シショーがこないだメルマガで書いていたダイアナソロンの配合も、TourbillonとPharosのクロスでお腹いっぱいパーソロンと、Man o'WarやThe Tetrarchなど異系の血ばかりを引く空腹ベゴニヤ…という斬り方はできます
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1981107046/

…とまあそんなわけで、チチカステナンゴの活躍産駒の配合について書くつもりが、「満腹×空腹」の話が長くなってしまいました(^ ^;)

まず代表産駒のVision d'Etat(仏ダービー,香港C)はというと、母UberabaはRialto5×4ぐらいでちょっと小腹すかしとる感じですが、母父Garde RoyaleはMahmoud≒Mumtaz Begum4×4,Prince Rose4×4,Hyperion5×5ですから、ようするに「満腹の父×空腹の母」の配合で、自身はナスキロラトロのクロスでまとめた…という感じ
http://www.pedigreequery.com/vision+detat

モーリス・ド・ニュイユ賞(仏G2・芝2800m)のBlekは、母ExandeがNever Bend4×4で自身はNorthern DancerとSir Gaylord=Swanseaのクロスですから、スマラが持つ二つのクロスを累進継続しています
http://www.pedigreequery.com/blek

今年の仏ダービー2着Bubble Chicは母がSecretariat≒Sir Gaylord4・4×4,Northern Dancer4×4ですから、自身はNorthern Dancer4・5×5・5にSecretariat≒Sir Gaylord=Swansea5・7×5・5・5となりこれもNorthern DancerとSir Gaylord累進
http://www.pedigreequery.com/bubble+chic

フォンテンブロー賞(仏G3・芝1600m)のChichi Creasyは母Folle GardeがGarde Royale産駒でNasrullah4×4
http://www.pedigreequery.com/chichi+creasy

レゼルヴワール賞(仏G3・芝1600m)のチナンデガは母Europian StyleがHyperion5×5で、母父Ezzoudはラストタイクーン産駒でNasrullah4×4・5
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a0111c5/

こうしてみるとどの馬もスマラの持つSir Gaylord=Swanseaにナスキロ血脈を合わせていて、Sir Gaylordのクロスはもちろん、ナスキロラトロのMill ReefやRivermanやCaerleonと相性が良いのはフランスにこの血が流布しているのもありますが、スマラがThe Axeを通じてLa Troienneの血を引くからというのもあるでしょう

サンデーサイレンス牝馬との配合はお互いにとって可もなく不可もなくだと私は思っていますが、まあCaroとナスキロとサンデーですから体質的には柔いほうに出そうで、残りの1/4にはナスキロよりナスキロラトロをもってきたほうがいいんじゃないだろうか…という仮説を立てておきましょうか

ちなみにこれも社台に輸入されたスマラはアグネスタキオンとの間にランペイア4勝、シンボリクリスエスとの間にミッキーミラクル3勝を産んでいます

※「満腹×腹ぺこ」より「満腹×空腹」のほうが見た目や語呂が良いのでそこを書き直しました(^ ^;)

遊びのある女
http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/174ae171e1a480910d07f2574c371fb6

コメント (16)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする