評価 (4点/5点満点)
この本が提案するのは、スケジュール管理の単なる手法やテクニックではありません。スケジュール管理においてもっとも重要なのは、「時間とは何か?」を理解すること。その意味で、まず「時間が失われるしくみ」を理解してもらうことを第一義としています。
・進行中の時間によるタイムロスは「所要時間の延長」。停止中の時間によるタイムロスは「開始時間の遅延」と「不履行」。
・進行中の時間におけるタイムロスの原因は「業務スピードが遅いこと」が中心となり、その大きな原因は「能力」の不足と「意識」の不足に大別される。
・停止中の時間におけるタイムロスの原因は「開始時間の遅延」と「不履行」であり、その原因は「忘失」と「放置」に大別される。
また、本書のサブタイトルである、〝「期限」が仕事を遅くする〟というのは以下の趣旨です。
・「余裕をもって期限を設定する」ことが、最短の完了時期を間延びさせてしまう元凶。
・ゴールから逆算してスケジュールを立てるのは、社内業務においては何の効果もないばかりか、反対に時間を無駄にする元凶。
人生の問題は、「本来自分が持っている能力をいかに早く開花させるか」という時間の問題。時間に対する考え方、そして実践的な時間管理術が体系的に整理されており、新入社員はもとより、管理職・経営幹部などの上級職の方にも、参考にして頂きたい1冊です。
【my pick-up】
◎スケジュール帳に記載すべきは、「情報」ではなく「行動」である
本当にスケジュール帳に記載するべき項目とは、「日時が決まっている予定」や「納期や期限」という「情報」ではありません。記載すべきは自分自身の「行動」です。スケジュール帳に記載すべきは、「書類作成」という「行動」と、「書類提出」という「行動」の2つです。この2つの行動を認識すると、「期限」は「行動」ではなく、ただの「情報」ということがより明確にわかります。「書類の提出期限」だけをスケジュール帳に記入するのは、いつ書類作成するかも不明確で、初めから前倒しの提出を考えていないことにもなるのです。
◎「早さ」と「速さ」の混同による放置
もちろん書類作成のスキルを高めて作業時間を短縮する努力は大切ですが、開始時間を早めることには無頓着なのです。書類の作成自体の効率化は追い求めながらも、それ以前に、1時間でも2時間でも早く書類作成に着手するほうが、よほど完了時期を早められる点に気づいていません。「速さ」より「早さ」の方が大切なのです。