評価 (3点/5点満点)
京都大学経営管理大学院教授の末松千尋さんが、時短、生産性向上、多様性強化といった、日本企業に求められている喫緊の課題に対して、いかにワークスタイル改革に取り組むかについて考えます。
特に対応策の容易性、即効性、実効性の高さから、本書では会議に着目して改革を進める施策について議論しています。
ただし、会議自体を削減することを直接的なねらいとはしておらず、決定を確実に行い、そしてそれを言いっぱなし、決めっぱなし、やりっぱなしにしないことに注目します。その作業時間のほうが会議よりはるかに大きく、膨大なムダ時間を削減することができるのです。
~よい会議とは?~
<会議前>目的が明確であること、参加者の役割と責任が明確であること、進行手順が明確であること、参加者のベクトルが合っていること、何を議論しているか常に参加者全員のフォーカスが定まっていること、参加者が厳選されていること、計画・準備がよくなされていること、目的が明確であること(再掲)
<会議中>発言のポイントが明確にされていること、意思決定が迅速かつ的確に行われていること、コミットメント宣言の場として使われていること、決定事項を全員で確認していること、改善提案が多く提起されること、発言者数・発言数が多いこと、ディモチベーションが放置されないこと
<会議後>決定事項が確実に実行されていること、課題の抽出と改善が行われていること
~日本企業の課題とその変革の方向性~
ダメ出しばかりのカルチャーから挑戦するカルチャーへ、提案しないカルチャーの転換、モジュール志向への転換、部分最適のカルチャーから共有するカルチャーへ、間接部門の有効活用へ
会議を通じて日本の労働生産性を考える際には、「お互いを思いやること」「社員が自発的に自らの強みを提供し合い相互に助け合うこと」も忘れてはならないと本書を読んで考えました。
【my pick-up】
◎共通パターンを抽出する
企業内では「標準化」というような呼び方で共通パターンを抽出しようとする試みがよく行われる。そしてその際には、各部門がそれぞれ自分たちのやり方を細部にわたって採用するように要求してくる。それが非常に特殊であっても、それが全体最適からはみ出して大きなコスト増につながっても、自分たちさえよければよいという考え方である。全部門が身勝手を主張し始めたら、大混乱である。そして共通部分を抽出するには、それらの多くを切り捨てざるをえない。だからそれを実行しようとする者は疎んじられる。しかしそのような業務に積極的にチャレンジしようとする人材は、大変な逸材、企業にとっての至宝なのである。