評価 (3点/5点満点)
新型コロナウイルスの災厄は、日本企業の非効率性・低生産性の実態を炙り出しました。
・書類にハンコが必要だ
・会社にかかってくる電話を取らなければならない
・重要なデータが会社のデスクトップパソコンに入っている
・経費申請書を紙で提出する必要がある
・日報が会社のパソコンでないと入力できない
・会議や打ち合わせができない
・社員の仕事ぶりをチェックできない
これらは、GAFAMのみならず、世界トップ集団に属する企業で働く方々にしてみれば、実に不可解なものかもしれません。
この本では、日本企業に顕著に見られる「DXが進まない原因」を掘り下げ、その解決策をステップを踏んで分かりやすく述べています。
日本でDXが進まない原因として、マインドの問題が深く横たわっていると言います。「頑張る」とか「耐え忍ぶ」といった価値観は、少なくともビジネスの世界では捨てるべきで、世界トップクラスの企業の経営者や社員たちは「いかにラクをして、業績を伸ばすか」をいつも考えているのです。
経営者自身が本気で向き合い「会社を根っこから変える」という決意で自ら動くことが必須です。
ただ、IT活用が大幅に遅れている会社には、むしろ未来に大きな可能性があるとも言えます。
本書は「日本の産業界は遅れている」と嘆くために書かれているのではなく、むしろ「日本の会社はどれも宝の山である」というメッセージも込められています。
【my pick-up】
◎社員はチャレンジしたくても余裕がない
事業には、常に更新していくべき部分があるわけですが、そのためには試行錯誤できる余裕が必要です。「新しいことにチャレンジする」とは「あえてムダなことをする」ということでもあります。日本の企業は、なにかトライをするにしても、一発で決めなければならない。会社の上層部は「ミスをしないことが上手な人」で占められるようになります。結果、日本の産業界では「仕事ができる人」に対する勘違いの連鎖が生まれてしまうのです。
◎必要ないのに出勤させる経営者は恥ずかしい
少し厳しい言い方をすれば、本当は必要ないのに「社員が出社せざるを得ないような業務プロセスをそのままにしている」ことが恥ずかしい、という社会になっていくのだろうと思います。社員の出社率が低いほど業務の効率化が進んでいる証拠であり、外から見れば業務改革に熱心で、組織としてスピーディな印象をもたれる。グローバルでは明確な必要性を認識して出社する/しないを区別して使い分けるところまで進んでいるのです。できる限りリモートワークを推進してみて、何がどこまでできるのかという経験を蓄積していかねばなりません。リモートワークを推進することで、削減できる作業や労力はとことん削減し、その結果、会社の生産性を高めることは、もはやすべての経営者の使命なのです。
◎リモート化に積極的に取り組まない組織には、若い人材が集まらない
学校と会社は違う。もちろんです。しかし、学校から会社に移るとき、新人は自分が属する場が進化したことを感じたいはずです。なのにその反対に「よりデジタルでない環境」が待っていたとしたら、時代の波に乗っていける感度の高い新人ほど「なんだ、こんなもんか」とがっかりするに違いありません。IT環境の充実が進まないせいで、若い人が集まらない。そのせいで、ますます多数派となる年配者層に合わせた仕事環境に甘んじる。すると、ますます若い人が寄りつかない、というように悪循環が生まれてしまいかねないのです。
◎アプリケーションの存在目的をきちんと理解する
社内で使う文書のフォーマットをExcelで作成しているという人をよく見かけます。しかし、Excelとは本来、表計算をするためのアプリケーションです。確かに、その機能を用いれば、複数のテキストの行頭を揃えて配置する、といったことに使うことも不可能ではありません。でも、それはExcelが想定した使い方ではありません。Excelに〝逃げる〟理由は意外と簡単で、単にWordの機能をすべて理解していないだけ、という場合がほとんどでしょう。アプリケーション本来の目的と機能を学ぶ手間を惜しんで、適当に使い分け「効率があがらない」と言っている人は非常に多いのです。
◎「紙の書類を処理するため」という理由で出社しなければならないのは非効率的
おそらく「紙のほうが仕事がしやすい」と感じている人もいるに違いありませんが、経営側は「紙の書類によるオペレーションが正しい」という立場は認めないスタンスを明確にしていますので、「ペーパーレスでは仕事がやりづらくなる」といった声が抵抗勢力のような形で表立つようなことは、今のところ起きていません。個人レベルでも、古いやり方に固執するのではなく、リモート化、ペーパーレス化の流れに合わせて、いかに自分の仕事の質を高め、効率化を実現するかを、それぞれ工夫していってほしいと思っています。自分の予定表に人とのアポイント以外に一人の作業時間も記入するようにした、といったケースがありました。このように、仕事のスケジューリングのような基本的な部分すらも、仕事のやり方を変えていく、といったアイデアが必要なのです。