読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

ジャク・カーリー『キリング・ゲーム』を読む

2018年01月25日 | 読書


◇『キリング・ゲーム』(THE KILLING GAME)
                                著者:ジャック・カーリー(Jack Kerley)
                訳者:三角 和代
               2017.10 文芸春秋社 刊 (文春文庫)   

   

 変態本格ミステリーという一見聞きなれないジャンルのベスト5の筆頭に上げられたという作品。
カーソン・ライダーシリーズ第9作。
  
共通点がまるでない被害者が2週間に5人という無差別連続殺人が起きた。
幼稚というか「そんなことで?」という異常な犯罪動機、多様な殺人手段、人種も性別も職業も
 まちまちという無差別性。

犯人が皆目見当がつかなくて右往左往するライダーチーム。


  
  主人公はアラバマ州モビール市警の刑事カーソン・ライダー(異常犯罪特別捜査班のリーダー)
ライダーはモビール市警で傑出した刑事でありポリスアカデミー(警察学校)教官も務め、多く
 の生
徒の支持がある。実は捜査上のヒントも彼らから得た。

  連続殺人犯は東欧ルーマニア出身のグレゴリー・ニーヴス。
グレゴリーは1セント硬貨の裏に自分を辱めた人物の名を書いて花瓶に入れ、これを振って出た
 硬貨の順番に攻撃していくというソシオパス(社会病質者)。他者への共感を欠く。
 ルーマニアの独裁者チャウシェスク時代の孤児収容施設で秘密警察派遣の警官から受けた性的迫
 害がトラウマとなっている。  

  面白いのは主人公のライダーの語りに挟まって犯人の語りがあり、その異常性と背景が次第に明
 らかになっていくところ。一向に犯人像に迫れず焦るライダーにいらいらするのは、読者には犯人
 の考えや行動がすべてわかっているから。
  最後に明かされる作者の罠と布石はなるほどと思わせるがやや安直でもある。

 連続猟奇殺人事件の犯人へのアプローチだけでなく警察署内部のいざこざ(上司と部下、同僚同
 士、警官とポリスアカ
デミー生徒)などエピソードもなかなか興味深い。

  自分を辱めた人物を直接殺すのではなくその人物に最大の痛みをもたらす人物を殺すという犯人
 絞り込みのヒントは、ライダーの新しい恋人ウェンディ(ポリスアカデミーの生徒)がくれた。

                                  (以上この項終わり)

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