【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

不正選挙

2020-11-09 07:14:22 | Weblog

 「不正選挙」とは「実際の投票結果を無視して、最初から定められている特定の結果を捏造すること」と定義できそうです。
 ところで「不正選挙」を訴えているトランプの主張の根拠は「トランプが勝つはずだったのに負けたのは不正が行われたからに違いない」ですが「トランプが勝つはずだった」こと自体がすでに「自分は不正選挙を画策していた」と言っていることになりません?

【ただいま読書中】『1493 ──世界を変えた大陸間の「交換」』チャールズ・C・マン 著、 布施由紀子 訳、 紀伊國屋書店、2016年、3600円(税別)

 「大航海時代」は、「アジアで繁栄している商業ネットワークにヨーロッパが参加しようとしてイスラムにはじき返された」ことによって始まった、と言ってもよいでしょう。歴史家のアルフレッド・W・クロスビーは「かつて固有の生態域に分けられていた世界が、人為的な交換によって混じり合ったこと」を「コロンブス交換」と名付けました。「イタリアのトマト、フロリダのオレンジ、スイスのチョコレート、トルコやタイのトウガラシ」などがその“成果”です。冒険家や商人の帆船には、人びとの野望や欲望や商品だけではなくて、偶然“乗り込んで”いた植物の種や鼠や昆虫などがたっぷり搭載されていて、それらは寄港地で「外来種」としてその土地の生態系に混じり込んでいきました。そして疫病も。アメリカでは知られていなかった、天然痘・インフルエンザ・肝炎・はしか・結核・コレラ・チフス・猩紅熱……それらの病原体も大喜びで“新大陸”に上陸しました。
 生物学者の中には「コロンブス交換によって『均質新世』(世界が均質化される)という新時代がやってきた」と言う人もいるそうです。とりあえず気象変動がやって来ました。大陸規模でのアメリカ先住民の激減は野焼きの減少となり、草原は森林に戻り、二酸化炭素が地球規模で減少、その結果は寒冷化だったのです。
 大西洋の三角貿易は有名ですが、太平洋でも盛んに貿易が行われていました。メキシコを出発したスペイン船は貿易風に乗ってフィリピンに到達し、黒潮に乗ってメキシコに帰還しました。メキシコ銀は中国や日本にももたらされています。大西洋・太平洋貿易の結節点となったメキシコ・シティは、多民族・多言語・多文化のメトロポリタンシティーに急成長しました。
 ミミズやマラリアという、私にとっては意外なものも「コロンブス交換」によってアメリカに持ち込まれたものだそうです。ミミズは世界中に普遍的、マラリアは中南米が“原産地”だと私は思っていました。
 太平洋でも銀や織物がまっとうな貿易で運ばれましたが、真っ当ではないものもありました。奴隷です。中国人労働者は「カリフォルニアで働く」という嘘の契約書にサインし(サインを拒んだものは誘拐され)焼き印を押され、ペルーに強制的に運ばれてグアノ(島の珊瑚礁に堆積した海鳥の糞を主体とするもの。肥料として重用されました)採掘に従事させられました。大量に輸出された肥料投入による単一作物大量生産は世界の農業を変革し、その流れは現在に至ります。
 「人間以外の病気」もコロンブス交換で移動しました。たとえば、アイルランドで深刻な飢餓を引き起こしたジャガイモ疫病菌。保存されていたDNAはアンデスの疫病菌と一致しました。著者は「グアノ船でアメリカからヨーロッパに運ばれたに違いない」と考えています。そして、この疫病菌が“大活躍”できた要因が「均質化」でした。国全体の農業がたった一つの作物(ジャガイモ)それもたった一つの品種(ランパー)に依存していたのです。この「均質な生態系」は、病原菌にとっては“天国”でした。人間にとっては地獄でしたが。 
 昆虫なども世界中で「均質化」されていきます。そして、人間の遺伝子も各地で混ざり合っていきます。そういえばUSAで「移民排斥」を謳う白人は、自分自身がかつてはヨーロッパの「○○国人」だったのが混ざり合って「アメリカ人」になった過去から目を逸らしているように私には見えます。そういえば「日本人」もどんな過去がありましたっけ?


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