世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

オラブ③

2017-11-28 04:12:59 | 風紋


地面に敷いた茅布に色砂をまき、それに息をふきかけて、その文様を見るのだ。ミコルは砂の文様を見ながら、しばらく考えたあと、言った。

「やっぱり山にいるようだな。一度、山狩りをしたほうがいいだろう」

それを聞いたアシメックは、ひとつ息をつき、言った。

「それしかあるまい。だが、今は冬だ。冬山に登るのは危険だ。どうしたものか」

アシメックはしばし考えた。もう寒さの峠は越えたが、山の天気は厳しい。いつ雪が降るかわからない。オラブは一体どうやって暮らしているのだろうか。山の栗や林檎も、いつまでもありはすまい。そこでアシメックは、とにかく山の方にひとりで行ってみようと思った。山には入らない。だが、入り口のところで、何かを呼び掛けてみよう。オラブが聞くかもしれない。

アシメックは肩掛けと足袋を身に着け、イタカの野に赴いた。そしてまっすぐに山に向かった。イタカは冬枯れの様子を呈していたが、そこここに、花芽をつけはじめている草もあった。春がくれば、イタカは花園になる。魚骨ビーズを塗る色をとる赤いミンダの花や、青いクスタリが咲き乱れる。だが今はどこまでもが寂しい冬の野だ。

山の入り口は冬枯れたイゴの木の枝がかぶさっていて、実にうらぶれた様子をしていた。冬の間はだれも人が来ないから、木々も少し寂しそうだった。




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