まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

単位の実質化 ―自習時間を増加させる方法― (その3)

2014-01-25 14:51:54 | 教育のエチカ
一昨日 「文化創造論」 の学生アンケート結果をご報告しましたが、
「戦争と平和の倫理学」 も学生アンケートは完了いたしました。
ただし、その授業評価に関わる集計結果は後回しにして、
今日はとりあえず1週間あたりの自習時間の部分だけ報告することにしましょう。
「授業時間以外にこの授業に関して1回の講義あたり平均してどのくらい予習・復習、
 あるいは関連の学習をしましたか」 の部分です。
結果は以下の通りです。

3時間以上………… 24名 (37.5%)
2~3時間未満………26名 (40.6%)
1~2時間未満………12名 (18.8%)
30分~1時間未満…  0名 (   0%)
30分未満…………… 2名 ( 3.1%)

この結果、ちょっとすごくありませんか?
「文化創造論」 と比べるとその差は顕著です。
(3時間以上…7.7%、2~3時間未満…9.6%、1~2時間未満…30.8%、
 30分~1時間未満…30.8%、30分未満…21.2%)
30分未満しか自習しなかったたわけ者がたった2名いるだけで、
あとは全員1時間以上勉強しています。
2時間以上と答えた人が8割近く。
大学での講義型授業としてはなかなかの成果だと思うのですがいかがでしょうか?
それにしても、授業内でグループディスカッションやワークショップなどはしているものの、
「文化創造論」 のように授業時間外でやるべきパフォーマンス課題を与えているわけでもないのに、
どうしてこんなに授業外自習時間が多くなったのでしょうか。

自習時間を増やすためにこの授業で私は4つの取り組みをしてきました。

(1) 単位制度の周知

私は毎年の講義の第1回目の授業で 「教室の倫理」 について話していますが、
その話のなかで半期2単位の意味を教えてあげるようにしています。
そして、この講義の単位を取るためには毎週4時間は自習する必要があることを強調するのです。
そう言われたからってすぐに自習するような奇特な学生は存在しませんが、
まずは毎週4時間の自習が課されているという事実を知っておくのが出発点です。

さて、以前にも言ったとおり、単位を実質化するためには毎週課題を課するのが正攻法ですが、
自分自身がそんな真面目な学生ではなかったので、
たかが選択必修の講義科目のためにそんなに学生の時間を奪うのも気が引けますし、
もっとぶっちゃけた話をすれば、毎週彼らにそれだけの課題を課したら、
それを採点したり集計したりする責務が自分に跳ね返ってきてしまいます。
大人数相手だから講義型授業をしているわけで、
その大人数の課題を毎週毎週採点などしていたら教員の時間はいくらあっても足りません。
そこで教員にも学生にも効率的な方式をいくつか実践してみました。

(2) ブログ上での質疑応答

まずはこの 「まさおさまの何でも倫理学」 というブログです。
このブログを開設した一番の趣旨は、学生からの質問に答える場を設けることでした。
私の講義ではたいていワークシートを使っていますが、
そうするとほんの数名からですが、授業内容に関わって質問をもらうことがあります。
最初の頃はそれに対して、質問をくれた学生のワークシートに回答を記入して答えていました。
しかし、それだと1対1のやりとりで終わってしまいます。
学生からの質問は多かれ少なかれ他の学生も疑問に思っていることがよくあります。
そこで次は、授業内で全員の前で質問に答えてあげるようにしました。
学生から出された素朴な質問に答えてあげると、みんなの理解が深まります。
それはたいへんよかったのですが、授業時間が圧迫されることになってしまいました。
素朴な問いに答えるのは意外と難しくて時間がかかるものなのです。
それともうひとつ、ワークシートに回答を記入していたときもそうだったのですが、
ある年にいい質問が出されてそれに答えても、それはその年かぎりで消え去ってしまいます。
そこでブログを開設してブログ上で質問に答えていくという方式を考えたのです。

これによって質疑応答の時間を授業外に持ち出すことが可能になりました。
学生たちには 「こんな質問をもらったんだけどブログに書いておいたから見ておくように」
と指示すれば、自ずとこのブログを見る時間が自習時間に加算されることになります。
さかのぼってくまなくブログのなかを探すと過去の先輩たちからの質問もあるので、
ヒマなときには見ておくようにとも指示して、さらに自習時間を稼いでいきます。
まあ、その後いろいろな経緯があって授業に関連する内容ばかりではなくなっていますが、
まあこの世は 「何でも倫理学」 ですので、それはそれで倫理学の勉強だと言えるでしょう。
それに堅い話ばかりだとブログを見る気も失せてしまうでしょうから、
日々の私のバカ話の合間に何かしら倫理学的な気づきがあればそれでOKだと思っています。

(3) 学生の諸活動との関連づけ

とはいえ、このブログを見ているだけではとうてい週4時間の学習時間は確保されません。
一番いいのは本を読んでもらうことです。
私の講義では教科書を指定したことはまずありませんが、、
参考文献リストを最初の授業で配ったり、講義のなかでも適宜紹介したりしています。
ただし、いくらこちらが紹介してあげても、
今どきの学生さんで参考文献をわざわざ買ったり借りたりして読む人は本当に少数派です。
そこで、学生たちの日常のなかでのさまざまな活動と講義内容を結びつけるよう、
授業のなかで繰り返し強調するようにしています。
彼らは別に倫理学の専門書は読まなくとも、小説などなら読んでいますし、
マンガはことのほか熱心に読んでいます。
また、テレビや映画もよく見ていて、意外とニュースやドキュメンタリー番組など見ていますし、
ドラマや映画などでもけっこう倫理学的な問題を考えさせられるものは多いです。
というか、私に言わせればどんな小説でもドラマでも映画でも必ず倫理学的テーマに絡んできます。
で、それらに割く時間を積極的に推奨してあげるのです。
何を見ていてもこの授業の中身と関わってくるはずだよ、と。
また、彼らが受けている他の授業も倫理学の授業内容と関わってくるかもしれません。
例えば、道徳教育や生活指導の授業は戦争や平和というテーマと関わるでしょうし、
経済学や歴史学の授業内容だって戦争や平和の問題を考えるために必要となってくるでしょう。
関連性に気づかなければ、それぞれ別々の授業をただ受けただけということになりますが、
他の授業を受けながらこちらの授業のことと関連づけて思考を働かせていれば、
その授業を受けている時間は、私の授業のための自習時間ともなりえます。
また、バイトや部活や家庭生活のなかで何かトラブルがあったりしたときに、
それにどう対処したらいいかと考えるのも戦争や平和の問題と繋がっています。
こういった日々の生活のなかの諸活動を私の授業内容と関連づけて捉えることができれば、
それはまさにこの授業のための 「関連の学習」 をした時間と言えるだろうと思うのです。
このことは毎回のように繰り返してあげて、この授業を授業時間のなかで終わらせないで、
日々の生活と結びつけてこの授業の内容を反芻できるようにしてあげると、
授業の理解度が飛躍的に高まっていくように思われます。

(4) 自習時間の意識化

とどめは (2) や (3) のために割いた時間を思い出させてあげることです。
私がほぼ毎週やっているワークシートには1週間の自習時間を書く欄を設けています。
氏名記入欄の横に、「今週の学習時間   /4h」 という枠があります。
この1週間で4時間自習しなければいけなかったはずだけど、
今週はどれくらい勉強しましたかという質問です。
これを記入させるときに (3) の話を繰り返して、
何かこの授業と関連する学びの時間はなかったかと振り返らせてあげるわけです。
最初のうちは 「0.5/4h」 とか 「0/4h」という回答が多いのですが、
毎回繰り返しているうちにだんだん増えてきますし、
4を大きく超えて10とかの数字を書き込む学生も出てきます。
人によっては具体的に何をやったか横に小さく書いてくれる人もいます。
また、授業の終盤になってくると、特に私が指示したわけでもないのに、
前週に休んでしまった人は自分で 「/4h」 のところを 「/10h」 と書き直し、
2週間分の学習時間を自己申告してくれるようになりました。
(「/8h」 でないのは休んだ前回の授業時間分も加算されるからです。)
ふだんからこのように毎週の学習時間を意識してもらっていますので、
「授業改善のための学生アンケート」 に答えるときには、
学生たちは自分が今までだいたいどれくらい勉強してきたかわかっているわけです。
(3) と (4) はある種セットとも言えますが、
この2つが何と言っても効果的だったのではないかと思います。
(逆に言うと 「文化創造論」 ではこの2つを怠っていたのが敗因なのかもしれません。)

「戦争と平和の倫理学」 で私が取り組んできたことはこれくらいです。
学生にも教員にも負担のないこの程度の取り組みで、
冒頭に掲げたような結果を出すことができました。
そもそもあの学生アンケートは選択肢の設定の仕方が間違っていて、
「4時間以上」 という項目が設定されていないのは大学設置基準に反していると思います。
しかも3時間までをあんなに細かく刻んで分類する必要もないでしょう。
一番少ない項目が 「30分未満」 ではなく 「4時間未満」 でいいはずなのです。
ただまあ現実問題、すべての講義科目で毎週4時間以上自習させるようにするというのは、
ただちには難しいだろうと思います。
(誰も部活もバイトもできなくなってしまうでしょう。)
私としてはお互いに無理のない範囲内で少しずつ学習時間を増やしていく方法を、
これからも模索していきたいと思います。


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