まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

日本カント協会公開シンポジウム 「カントと日本国憲法」

2013-11-23 06:38:19 | 哲学・倫理学ファック


というわけで (どういうわけだ?) とうとう今日が日本カント協会第38回学会です。
いやあ、苦しみました。
けっきょく研究室に2連泊してしまいました。
ずっと来なかったはかどりネコさんでしたが、最後の最後でやっと来てくれて、
なんとか間に合わせることができました。
ていうか、前日 (金曜日) の昼には出来上がりましたので、
それまでのありえない遅れぐあいからするならもうミラクルと言ってもいいくらいです。
他の提題者や司会者の方々に何とか事前にファイルを送り、
(むろん私が一番ビリでしたが)
印刷して丁合もしっかり終えました。
事務局に問い合わせたところ、会員で学会に来るのは100名くらいだけど、
今回は公開シンポジウムなので200部資料を用意してくれとのことでした。
いやいや、そんなに一般の方がこんな学会なんかに来てくれるわけないでしょう、
と思いましたが、まあ指示なのでしかたありません、200部作りました。
2時間近くかかりましたよ。

日本カント協会というのは、カント研究者である私にとってはある種メインの学会なんですが、
その学会でシンポジウム (これは学会のメインイベントです) の提題者を依頼されるというのは、
もちろん初めての栄誉ですし、まさか私がそんな場に呼ばれるとは思っていませんでした。
(妻には年取ったってことやね、と言われました。)
その初めての晴れ舞台が何の因果か、公開シンポジウムだなんて
日本カント協会のシンポジウムが公開になることなんてそうそうあることではありません。
そんなめったにないチャンスに当たってしまうなんて
頼まれたときも特に 「今回は公開ですけど」 と言って頼まれたわけではありませんでした。
冒頭のポスターが送られてきて初めて知ったくらいで。
なお、事務局に問い合わせてみたところ、非会員の方が参加する場合、
参加費 (資料代って言ってたかな?) として500円が必要だそうです。
この話を聞いて純ちゃんが聞きに来ると言い出すし…。
まあ、ぼくの駄話くらいは福島でいくらでも聞かせてあげられるけど、
山室先生のお話を直接聞けるのはめったにないチャンスかもしれないのでいい機会でしょう。
東京近郊の方で興味のある方はぜひっ!

ところで冒頭に掲示したポスターですが、
けっこうセンスいいと思うんです。
この絵のカントはちょっと精悍すぎて私のイメージと違いますけど、
ま、でもポスター的にはカッコいいと思うんです。
ただ1つ気に入らないことが…。
最初の3行の欧文ですが、これ読める方いらっしゃいますか?
カントなのでドイツ語です。
だけど一般語学でドイツ語を履修していたとしても、
この文字がなんと書いてあるかわからない人がけっこういらっしゃるのではないでしょうか。

これはヒゲ文字です。
(正式名称は知りません。私はそう教えられてきました。)
ドイツ語には他の言語にないウムラウトという点々のついた文字とかがありますが、
そういうのとは関係なく、普通のアルファベット文字をちょっと崩して、
何となくエラそうというかカッコよく表したのがこのヒゲ文字です。
フツーの文字とはちょっと違いますから、初めて見るとまったく読めませんが、
だんだん慣れてくると頭のなかでフツーのアルファベットに置き換え可能になってくるので、
読めるようになってきます。

これに初めて出会ったのは東京外国語大学の図書館ででした。
4年生になりカントで卒論を書き始めた私は、
理想社版のカント全集などで純粋理性批判とかを読んでましたが、
ある日、どうしても解釈に困って原文を知りたくなり、
図書館で原書のカント全集を探したらヒゲ文字に出会ったのでした。
カントを原書で読むときに一番権威があるのは、
アカデミー版カント全集というやつで、
これはディルタイという生の哲学者が20世紀の初頭に刊行を始めて、
今もなお完結してないというものすごい全集なのですが、
これが徹頭徹尾ヒゲ文字なんですよ。
表紙のタイトルだけとかじゃなくて、中の文も全部ヒゲ文字です。
ホント、驚きました。
初心者には何のことやら、まったく1文字も読めないのです。
そんなバカなことをやってるのはアカデミー版カント全集くらいで、
他のところから出ているカントの原書はフツーの文字です。
ドイツ語の力が足りないからたしかに読みこなせないけど、
1個1個の単語くらいはわかるんです。
そして、知らない単語が出てきたら辞書で引くこともできるんです。
スペルがわかるんですから。
ところがヒゲ文字だとそもそもスペルが何て書いてあるかがわからないのです。

これには苦労させられましたねぇ。
カント研究の世界では、カントから引用するとき、
アカデミー版カント全集の頁付けを記すという慣行がずっと昔からあります。
(それくらい権威のある全集なわけです。)
だからカントで論文を書こうと思うとヒゲ文字が読めないとお話にならないのです。
これはホント大変でした。
スラスラ読めるようになったのはいつぐらいからだったでしょうか。
とまあ、それぐらいヒゲ文字っていうのは、
カント研究者にとっての最初の躓きの石だったわけです。

そんな文字をポスターに使う意味はあるのでしょうか?
しかも今回は公開シンポジウムですよ。
誰も読めないじゃないですか。
まあ最初の3行が読めなくてもホントに聞きに来たいと思ってる人には関係ないと思いますが…。
しかし、わざわざ日本国憲法をシンポジウムのテーマに取り上げて、
一般の人にも参加してもらいたいと思っているのだとしたら、
今回ヒゲ文字を使う意味はあったのでしょうか?
私にはその意味が見えません。
ただでさえ遠い存在であるイマヌエル・カントを、
より遠く感じさせる効果しかなかったんじゃないでしょうか?
アカデミー版カント全集に親しんでいて、
それがヒゲ文字で書かれているということを知っているコアなカント研究者以外に、
あのポスターはなんらかのメッセージを届けることができたんでしょうか?

せっかくですのでフツーの文字に変換しておきますね。
あ、ヒゲ文字見たいですか?
もう一回画像掲げておきます。



    38.Jahrestagung
Japanische Kant-Gesellschaft
    Tokyo 11.23.2013


こうやってフツーの字で見てみるとどうってことないですね。

1行目は 「第38回学会」(年に1度の大会)、
2行目は 「日本カント協会」
(Gesellschaft はゲマインシャフトとゲゼルシャフトのゲゼルシャフトです)
3行目は東京で今日やるよってことです。
というわけで今日やりますので、どなたでもご参加ください。


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