まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

Q.哲学って何ですか?

2010-04-17 23:49:38 | 哲学・倫理学ファック
こんな質問を頂戴しました。
「高校の世界史で哲学は全ての学問の根源だと習った気がするが、あいまいでわからない。」
うーん、いい質問ですね。
要するに、哲学って何ですか? という問いだと思います。
これにお答えするのもいろいろ手順を踏まなきゃいけないのでたいへんなんですが、
順番にお答えしていくことにしましょう。
先日、哲学は 「フィロソフィア」 であり、「知への愛」 だと書きました。
そして、「知への愛」 は、
自らが 「無知」 であって、知を有していないことを自覚しているがゆえに、
知を愛し求める営みのことなのである、とも説明しました。
ここが大事なポイントです。

日本人は 「知」 というと、なにか正しい答えがどこかにあるかのように考えます。
その感覚でいうと、「知への愛」 とは、
正しい答えを手に入れて、それを大事に愛することのように思われてしまうかもしれません。
しかし、「知への愛 (=哲学)」 の 「知」 とは、
正しい答えという意味での 「知」 ではなく、
答えがわからない問題の答えを何とか知ろうとする努力という意味での 「知」 なのです。
もっと言うならば、なにか答えが与えられていたとしても、それを鵜呑みにしてしまわないで、
その既存の答えを疑ってかかる営み、それが 「知」 の営みだと言えるでしょう。
したがって、「知」 = 「疑」 という公式が成り立つのです。

「フィロソフィア」 が生まれたのは古代ギリシアであり、
神話や宗教をみんなが信じている時代でした。
神話とか宗教というのは、この世のさまざまな出来事を、神や来世など、
私たちがこの世で見たり触れたりすることのできない、
自然を超えたもの (=超自然的なもの) によって説明しようとする営みです。
つまり、神話や宗教は、超自然的な答えを与えてくれているわけです。
超自然的な答えというのは、それを証明することができない代わりに、
それを反証することもできませんから、
みんながそれに納得してそれを信じている限り、絶対的な価値を持ち続けることができます。
みなさんもこの世でなにかいいことや悪いことが起こったときに、
それは霊のせいであるとか、前世のせいであると言われると、
そんなものはないとは証明できないので、
なんとなく信じてしまったりすることがあるのではないでしょうか。
科学がこれほど発達した現代においてもそうなのですから、
古代ギリシアにおいて、神話や宗教がみんなから心底信じられていたとしても、
それほど驚くにはあたらないでしょう。

そんな時代のなかで、みんなが信じている答えを、
本当にそうなんだろうかと疑ってかかる人々が登場しました。
それが 「フィロゾーフ (知を愛し求める者=哲学者)」 たちでした。
彼らは既存の答えに満足しないで、自分で考え、自分なりの答えを探し求めたのです。
彼らが考え出した答えが 「思想 thought (=考えられたもの)」 です。
答えがはっきりしない難しい事柄について自分なりに考えて出した答えが思想ですから、
それが正しい答えであるという保障はありません。
本人たちは自分の出した答えが正解だと自負しているかもしれせんが、
それを聞いたり読んだりした人たちは、一時的に納得したとしても、
そのうちに、あれちょっと待てよ、ここはヘンじゃない?
とまた疑い始めることになります。
そうして再び自分で考え、自分なりの答えを探し求め始めることになるのです。

自分はまだ本当の答えを知らない、
だからこそ本当の答えを知りたくて知りたくてしかたがない、
これが 「知への愛 (=哲学)」 なのです。
近代に至るまでは、超自然的なものに頼る説明方式はあいかわらず維持されましたので、
爆発的な進歩を遂げることはできませんでしたが、
それでも既存の答えを鵜呑みにするのではなく、
それを疑ってかかって、より説得力の高い説明方式を求め続けるという営みは、
人間の知を少しずつ是正し拡張していきました。
これはまさに学問そのもののあり方だと言えるでしょう。
つまり、哲学とは学問のことであり、
実際にほんの200年前まで、すべての学問は哲学と呼ばれていたのです。
というわけでお答えはこうなります。

A.哲学とはすべての学問のことでした。

近代の科学革命以降、「科学」 が 「哲学 (=学問)」 からどんどん分離独立していくことになり、
哲学はわけのわからない学問として取り残されることになってしまいましたが、
(このへんの事情についてはまた別の機会にお話しすることにしましょう)
元はと言えば、すべての学問は哲学だったのです。
「哲学はすべての学問の根源である」 という高校の先生のお話はまさにその通りです。
そういうことをわかっている人というのは本当に少ないので、
いい先生にめぐりあうことができたと言えるでしょう。
ぜひ 「すべての学問の根源」 について少しでも学んでみてください。
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