井沢満ブログ

後進に伝えたい技術論もないわけではなく、「井沢満の脚本講座」をたまに、後はのんびりよしなしごとを綴って行きます。

母を憎むあなたへ 1

2016年04月10日 | 親子関係からくるトラウマ

世の中に母親を憎む人は案外多いものです。

長引く蕁麻疹を治したくて、今漢方の先生のところに通っていて
随分良い方向に向かっているのですが、この先生は
疾患も「心因性が多い」と主張していらして、お話を
うかがっていると、西洋医学でも最近は心因性のは
病気があることが指摘されていますが、西洋医学が
思っている以上に心因性、心に原因のある病気が
多くはないだろうか、と思います。

霊感もある先生で、私の心の状態は面談2分程度で
さっくり指摘され、実にその通りで大変興味深くそれからの
お話を伺ったのでした。

心因性の病気の大きな原因の一つに、幼児期における母親との
関係性があるそうで、これは私も長年の見聞から
首肯します。

肉体的な暴力を受けなくても、母親による言葉や態度による虐待は、
その子の一生に、暴力を振るい続け精神的、肉体的に
痛め続けます。そして本人も当の母親も、そのことに気づいていない
ケースも多いのです。

また母親自身が、虐待したという自覚がないことがほとんどです。
肉体的暴力があってすら、「しつけ」と自分をごまかしています。

これは信じようと信じまいとのレベルでしかありませんが、
前世で仇敵同士が親子になって、カルマの解消を試みる
こともありそうです。

怪しげレベルの話はともかくとして、子供の頃親により受けた傷は、
大人になっても癒えません。
インナーチャイルドと言いますが、60歳になったところで、
心の奥底で母親に傷つけられ、泣いている子どもは
2歳、3歳、4歳・・・・・・のままなのです。

理性で処理しても、心の奥に隠れている「内なる子」は
いくつになっても、泣き続け救いを求め続けています。
幼児にとって母親は全宇宙です。その宇宙から拒絶され、
ないがしろにされた子は、生涯自分を許しません。
生まれてきた自分を受け入れられません。
幼い子は母親にいたぶられても、自分が悪い子だから
と思い込み、それは成長しても心の奥底(おうてい)では変わりません。

仕事に体調に恋愛に結婚に、母親の「暴力」は影響を
ふるい続けます。

不幸なことに、母親による傷を訴えても世間は聞き入れません。
いい大人が、何を、とかあるいは「誰でも親とはうまくいかない」など
問題の矮小化をされ、精神的セカンドレイプを受けてしまいます。
世間の一般的な感覚は、親が子を憎むわけはない、子が
親を憎むわけがない、というものです。
報道で知っていてもそれは特殊事例だと思い込み、実は身辺に
程度の差こそあれ、親の虐待に傷を受けている人たちは多いのです。
ところが一般的な人々は、それを受け入れると何かしら自分の
価値観が揺らぐと思われるのか、奇妙なくらい強固に被害者である
かつての子たちの訴えを退けます。
そしてついには黙りこんだまま、幼い子は肉体だけ老いて行き、
母親を許せない自分を責めたままこの世を去ります。
何か、しっくり行かなかった人生の全てを自らの責任として。
そう、その頃は亡き母親の年齢を越していることも多く、
よもや今更母親のせいで、自分の中の何かが歪められ、
そのために、人生にどこかしらひずみが来たことを、自覚ないまま
この世を去ります。


即座に分かり合えるのは、同じ体験者同士ですが、これは
どういうものか、同病同士分かり合っても癒やしにはならないのです。
第三者が、あなたのせいではない、自分を責めることはないんだよ、
と受け入れてくれた時に、少しずつ癒やしが始まります。

伴侶がそういう体験をふと漏らした時、どうぞ批判無しで黙って
耳を傾けてください。そして一言「あなたが、きみが、悪かったのではない」と
言ってあげてください。その瞬間にゆるやかではありますが、癒やしが始まります。
他者の理解の中でも、とりわけもっとも身近な他人の受け入れが、孤独と自己拒絶の淵からパートナーを救い上げます。どうぞ、そうなさってください。

親との関係でトラウマを持つ人は、親を許す努力は必要ありません。
おそらくそれは、一生不可能で新たな自分への責めの材料にしか
なりません。許せれば最高ですが、おおむね無理だと思います。
傷つき心から血を流しているのは、今のあなたではなく、
数十年前の親しか頼れなかった精神的孤児としてのあなたなのですから。まず、自分を許してあげてください。あなたに非はありません。

親に冷たい言葉を浴びせられたのは、鋭い言葉の刃で
心臓を刺し貫かれたのは、また叩かれたのは、タバコの
火を押し付けられたのは、あなたが悪い子だったからではありません。
悪いのは親のほうです。その親もまた、親の愛を知らず子イジメの
連鎖が続くのですが。

妊娠中に堕胎を考えた母親の子は、一生をかけても母親に
復讐する、と聞いたことがあります。
お腹の中にいても、人の声は聞こえているわけだし、肉体的に
密着してつながっている母親の思念を、胎児が受け止めていると
いう考え方じたいはさして奇異でもないでしょう。

とても具体的な例をつぶさに見たことがあり、私は上記の説を
半ばはあり得ると思っています。その人が妊娠中に中絶を
考えたことも知っているし、そしてその子が長じてから
母親に壮絶なまでの復讐をして、これでもかと叩きのめしたその有様も
まざまざ、見ています。そして、母子ともにそのことには
気づいていないのです。

また幼児期に母親から肉体的な暴力を受けた子に、まだ
幼い頃に会ったことがありますが、その子はしだいに
心を不安定に壊していき、間もなく成人になるのですが、
そのうち母親を殺めるのではないか、
と身近の人に言わせるような不安定な状態になっています。

母恋いが反転すれば、この上ない悲しみとなり、悲しみは強い
憎しみに再反転します。

母親(あるいは父親)により傷を受け、苦しんでいる方、
私でよければ聞かせて頂きます。コメ欄に「公開しないでください」と
表題に入れ、思う存分書いて怒り、そして泣いてください。

あなたが、悪いのではありません。

あなたを愛し、100%受け入れてくれる人が
どこかにいます。


28 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
総太郎さん (井沢満)
2016-04-10 16:34:18
差し支えなければ、非公開であなたのメアド、使い捨てで
いいので、教えてくださいませんか。
理由は単純で、折り返し私のメアドをお送りして、この間撮って頂いた画像を拝見したいのです。
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Sさま (井沢満)
2016-04-10 19:13:16
思わず微笑みました。そんなこと・・・と言ってはなんですが傷になんかなるものですか。
虐待母というのは「私は悪くない」と言いはるのです。
傷ができるほどの暴力をふるってさえ。
こまごまと後悔するお母さんが、虐待なものですか。

気になるようならあの時叩いちゃった、ごめんね。と
サラッと言ってしまえばいいかもしれません、
言えれば・・・・
あるいは、メールでも書いて謝罪。それは出さなくて良いです。心のけじめのための儀式みたいなものです。


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ありがとうございます (saltvino)
2016-04-10 20:12:51
いつも勉強させていただいています。この記事、有り難くて涙が出ました。
40過ぎて自活してなお、母親が大嫌いだったと、母親の感情の調整弁にさせられてきたと気付き、この葛藤をどうするか、何から整理すればいいのか迷っています。しかし、やはり許せないものは許せない。そういっていいんだと、知識人の方が書いてくださるのが、とてもありがたいのです。何を書けばいいのかまだ書けませんが、お礼を伝えたくてコメントさせていただきました。
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saltvinoさん (井沢満)
2016-04-10 20:27:58
公開でよろしいのですか?
葛藤する必要はありません。
無力な子どもの心を震わせた
大人が悪い。単純にそういうことです。
あなたは全く悪くありません。
虐待母が必ずいう言葉、「あなたがそんなに
いい子だった?」と。
2歳3歳にいい子も悪い子もありません。
親が作る作品が子どもです。
無理に許す必要はありません。
葛藤が生じます。まず自分を許すことが先決です。
子どもは長じてもなお自己処罰し続けるんです。
健気に子どもは親をかばうんですよ、幼いころは。
自分が悪いからお母さんが怒るんだ、と言って。
それが訳知りになってからの子供の心の底に
尾を引いています。
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御無礼致しました! (総太郎)
2016-04-10 20:59:22
井沢先生、先程はありがとうございました。

あの時、三田様の御主人・高橋康夫様とは気付かず、大変御無礼致しました!
今になって「そういえばあの方のお顔は!」
と絶句しております。
お世辞ではなく、高橋様も心より御尊敬する方!
NHK時代の素晴らしい作品に感動したファンとして、くれぐれも宜しくお伝え下さいませ。

確か「夜明け前の」製作指揮も高橋様だった記憶!
大河ドラマ「黄金の日々」や
「阿修羅のごとく」の演出も素晴らしかったですね(^_^)
私事ですが、昨年の6月に殺陣師の重鎮であり、大河ドラマにも多大な貢献をされた俳優の林邦史郎先生にお目にかかり、暖かい御言葉を掛けて頂いたのですが、その際「黄金の日々」の話題となり、林先生曰く、高橋様がいつも現場でユニークなアイデアを提案される拘り派だった事、等々(^_^)楽しい思い出を伺ったばかりだったんですよ・・。

それから僅か数ヶ月後の11月に林先生が御逝去され、言葉を失いました・・。

高橋様のお写真・映像も何度か拝見した事があったにも関わらず、愚かにも気付かず改めて御無礼、心よりお詫び申し上げます。
あの時、気付けば直接、林先生の暖かい生前の御言葉を高橋様に直接お伝え出来たのですが・・!

故・丹波哲郎先生も、高橋様の暖かいお人柄を語り、信頼されていましたね。
恐れ入りますが、井沢先生から高橋様に宜しくお伝え頂ければ幸いです。

井沢先生、高橋康夫様、そして天上の林先生に感謝の気持ちを込めて改めて厚く御礼申し上げますので、こちらのコメントは是非公開して頂ければ幸いです。
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ありがとうございます (井沢満)
2016-04-10 23:10:48
公開、非公開で頂くコメントに私自身が
学ばせていただいていて、ありがたいことに
思っています。

たとえば父親からの性的虐待などでも私は
受け止められますので、この機会に吐き出して
ください。その場合は非公開と、必ず添えてくださいね。

母親の性的場面を見てしまった、ということも
インナーチャイルドの心には深い傷を残しそうです。

何を聞いても私はたじろぎはしません。
さまざま見聞してきました。

第三者に吐き出すことが、癒やしへの第一歩です。
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非公開で質問を下さった方へ (井沢満)
2016-04-11 05:50:54
ご自分のみ責めていらしたなら、生きる上でまた
体調で影響を来している可能性がありますね。
私はそこは専門家でないので、分かりませんが。

漢方の先生はこちらです。

http://kiokio.net/
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ありがとうございます (saltvino)
2016-04-11 07:08:57
公開で結構です。なかなか人様に分かっていただけるようには、詳細はまだ書けませんので、さわりは公開で構いません。親は子を嫌っても、生まれてこなければよかったと思っても許され、子はそれを許されないというのは理不尽だなあと思います。
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非公開で (井沢満)
2016-04-11 13:37:38
続々とコメントを頂戴しており、ああやっぱり多いなぁ、と思っています。

また、思わぬことに、自分は虐待をしたのではないか、と考えるお母さんのコメントが一つではありませんでした。個々ケースが違うので一括したことは言えませんが、そういう人はご自分と赤ちゃんの頃からの自身とお母さんとの関係、父親との関係をじっくり振り返って見ることを提案します。
振り返る最中に苦しくなったり怒りがこみ上げてどうしようもなくなったら、そこで止め、また別の日に記憶を辿ってみられたらいいのかもしれません。
子への虐待は自分のせいではなく(責任逃れという意味ではなく)、ご自分と母親との関係性が引き起こしたことかも知れず、もしそこに気づいたらまず自分を許すことから始め、そこのステップを通過したら、今度はお子さんに何らかの形で後悔していることを伝え、謝罪をなされば良いと思います。お子さんへの謝罪は自分を開放することでもあります。


書き込みいただいた内容には質問してみたいこともあり、また声をかけて差し上げたいこともあるのですが、非公開前提なのでそれも叶いません。

思いついたことは再度書いてくださって構わないので、
全部吐き出してください。

あと、漢方の先生によると虐待を受けた相手に手紙を書くと治癒の一環になるそうです。その手紙は出さなくてよいのです。
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ありがとうございます。 (はちこ)
2016-04-11 16:23:54
今朝ほど、非公開でコメントを入れさせて頂きました。ザックリとでしたが、井沢先生にお伝えした事で、改めて自分の深い思いと向かい合う気持ちになりました。もう今は亡き母ですが、とにかく強烈な人でした。未だに母の精神的な呪縛からはまだ、解かれてはいません。程よい距離感を持って、人と付き合う事の出来ない人でした。虐待はありませんでしたが、精神的に振り回されっぱなしでした。良いお手本が無いので、自分が母となっている今、娘との距離感の保ち方や、愛情の伝え方に日々悩んでいます。

今回、井沢先生がこの問題を提起して下さった事で、母との問題で悩まれているたくさんの方が、私の様に、少しでも癒される事を願います。久しぶりに良い事も、嫌な事も、色んな事が思い出され、涙しました。まだまだ、母との確執から解放されるのには時間が必要なようです。それでも、前向きな気持ちになれた事を、井沢先生に改めてお礼申し上げたいと思いまして、再度コメントを入れさせて頂きました。本当にありがとうございました。
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