https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26271870Z20C18A1EE8000/?nf=1
待機児童の「越境入園」しやすく 都道府県単位で対策
経済
2018/1/29 19:28
保育所に入りたくても入れない「待機児童」について、都市部の中でも地域ごとのばらつきが問題になっている。居住地の子どもを優先して受け入れる仕組みがあるため、隣接する自治体間で預けやすさに差が出てしまうためだ。政府は「越境」の入園を促すよう自治体に求め、補助を増額する仕組みを作る。ただ、自治体間の差を埋めるのは簡単ではない。
隣接する自治体間で預けやすさに差が出ている(東京都世田谷区)
厚生労働省は隣の市区町村や親の通勤途中にある保育所への「越境」入園を促すことを決めた。市区町村との協議の場を作る都道府県を「緊急対策地域」として財政支援する。越境入園に必要な協定を結ぶほか、自治体ごとに違う申し込み様式を統一する。
現在は、入園選考で保育所のある自治体の居住者を優先する点数制度になっていたり、申し込みに必要なシステムや様式がバラバラだったりする。事実上、越境入園は難しく、例えば東京都では待機児童ゼロを達成した豊島区の隣に、300人以上の待機児童を抱える中野区がある。
厚労省は自治体の境を超えて保育の需給を調整すべく都道府県単位での調整に乗り出す。待機児童対策に取り組む都道府県を募り「緊急対策地域」に指定。その都道府県は市区町村や事業者が参加する協議会を設け、待機児童解消に向け自治体に協定を結ぶよう促す。
待機児童対策に向け、緊急対策地域の指定を受けた都道府県に対しては、認可保育所への移行を目指す認可外保育所の運営費の支援額を5%上乗せする。
政府の規制改革推進会議からの提案を受けて、厚労省が子ども・子育て支援法改正案として通常国会に提出し、4月1日の施行を目指す。
政府は2020年度末までに待機児童ゼロを目指す方針だ。しかし17年4月時点で待機児童は全国に2万6千人もいる。厚労省は待機児童が解消できていない40都道府県での協議会設置を期待するが議題の設定は都道府県に委ねられている。
都道府県単位ではこのほか、保育士不足への対策として保育士の育成や研修にも取り組む。また、自治体が独自に設けている保育基準の見直しも議題になる。保育士1人あたり収容できる子どもの数は、保育の質を重視する自治体では国より厳しい独自基準を設けている。厚労省はこれが施設で受け入れ可能な子どもの数が減る一因として見直しを求める。
越境での入園は、14年から協定を結んで相互の園児の受け入れ体制を整備している横浜市と川崎市の例がある。両市は保育所を協力して整備するなど、地理・行政の枠を超えて待機児童対策に取り組んで効果を発揮している。厚労省は同様の取り組みを全国に広げたい考えだ。
待機児童の「越境入園」しやすく 都道府県単位で対策
経済
2018/1/29 19:28
保育所に入りたくても入れない「待機児童」について、都市部の中でも地域ごとのばらつきが問題になっている。居住地の子どもを優先して受け入れる仕組みがあるため、隣接する自治体間で預けやすさに差が出てしまうためだ。政府は「越境」の入園を促すよう自治体に求め、補助を増額する仕組みを作る。ただ、自治体間の差を埋めるのは簡単ではない。
隣接する自治体間で預けやすさに差が出ている(東京都世田谷区)
厚生労働省は隣の市区町村や親の通勤途中にある保育所への「越境」入園を促すことを決めた。市区町村との協議の場を作る都道府県を「緊急対策地域」として財政支援する。越境入園に必要な協定を結ぶほか、自治体ごとに違う申し込み様式を統一する。
現在は、入園選考で保育所のある自治体の居住者を優先する点数制度になっていたり、申し込みに必要なシステムや様式がバラバラだったりする。事実上、越境入園は難しく、例えば東京都では待機児童ゼロを達成した豊島区の隣に、300人以上の待機児童を抱える中野区がある。
厚労省は自治体の境を超えて保育の需給を調整すべく都道府県単位での調整に乗り出す。待機児童対策に取り組む都道府県を募り「緊急対策地域」に指定。その都道府県は市区町村や事業者が参加する協議会を設け、待機児童解消に向け自治体に協定を結ぶよう促す。
待機児童対策に向け、緊急対策地域の指定を受けた都道府県に対しては、認可保育所への移行を目指す認可外保育所の運営費の支援額を5%上乗せする。
政府の規制改革推進会議からの提案を受けて、厚労省が子ども・子育て支援法改正案として通常国会に提出し、4月1日の施行を目指す。
政府は2020年度末までに待機児童ゼロを目指す方針だ。しかし17年4月時点で待機児童は全国に2万6千人もいる。厚労省は待機児童が解消できていない40都道府県での協議会設置を期待するが議題の設定は都道府県に委ねられている。
都道府県単位ではこのほか、保育士不足への対策として保育士の育成や研修にも取り組む。また、自治体が独自に設けている保育基準の見直しも議題になる。保育士1人あたり収容できる子どもの数は、保育の質を重視する自治体では国より厳しい独自基準を設けている。厚労省はこれが施設で受け入れ可能な子どもの数が減る一因として見直しを求める。
越境での入園は、14年から協定を結んで相互の園児の受け入れ体制を整備している横浜市と川崎市の例がある。両市は保育所を協力して整備するなど、地理・行政の枠を超えて待機児童対策に取り組んで効果を発揮している。厚労省は同様の取り組みを全国に広げたい考えだ。