
先日のXJR1300に続き、今度は違う機体の同モデルの作業。
当方販売車両となりますがコチラは走行距離もそれなりに伸びているので
外観だけではなくその中身のコンディションを確かめるところです。
エアクリーナーの状態を見ようとするとまずエアボックスの蓋が変わっていまして、
当時いくつかのアフターパーツメーカーから販売されていた中のひとつ。
ボックスへの吸入口を拡げさらにキャブレターのジェッティングもリッチにすると言うものだったと思います。

パルスジェネレーターのベースプレートも交換して点火時期を全体的に何度か早めるものだったハズ。
たしか当時はエンジンの出力を高める目的でその手法として点火時期を早めると言ったことが良しとされていて、
これがまたそれをやるだけでアイドリング回転数がが少し上がったりしたものだから、
理由はなんとでも後付けられて、その考えになっていたんじゃないかと思います、たぶん。
当時僕がいた職場ではそれを肯定することは無い判断をしていたので、
人気だったXJR1300のお客さんは何台もいらっしゃいましたけど
このチューニングパーツを装着した記憶はありません。
クルージング時やアクセル急開の時、そして始動時のクランキングの時などなど
点火時期と言うのはそれぞれ適正のタイミングがあるようですからベースごと早めるのが果たしてどうなのか (^_^;)

キャブレターの後期モデルでは車検の時に年式なりの排ガスの数値を問われるので、
変更されているはずのジェットでその制限を越えていないかを測定。
排ガステスター(毎年校正の義務付き)くらいはあるのですよこれでも認証工場ですから…

次に点火時期が早くなっていることでノッキングが発生することが無いか、
そしてクラッチの滑りとその兆候がないか…
わざといろんな操作を仕掛けて全負荷領域で試しますがこれも大丈夫。
今時ノッキングを体感できる乗り物なんてそうはないと思いますけどね。

あとは全力加速の高回転域。
一応レブリミッターまでは回りますが残念なことにその過程が良くない。。。
これはシャシダイナモ上で測定するとパワーカーブがピーク手前で波打つんだろうなと言った体感。
たしかスペックでは100PSくらい有ったはずですから
たとえ不調だとは言ってもスロットル全開でタコメーターの針が振り切れる
その加速(恐怖)はどこでも試せるわけではありません。
そしてそれは出来るだけ高いギヤポジションで試す必要がありまして、
1速では負荷が少なすぎて何が何だかわからないうちに吹け上がろうとするので冷静に読み取れない (^_^;)
とは言っても僕の視力と度胸と近隣の道路環境では2速が限界ですね。
それでも不調であることに疑いようはないので、
酷暑のなか何度も何度も全伏せで加速を繰り返して納得(キャブレター分解の決意)して
ヘトヘトで店に戻ります。

絶対に回復ささる(当方で販売する)つもりですから、その先を見越したパーツ交換も含めて
キャブレターの状態確認とフルメンテナンス。

キャブレターに不調はありませんでしたが、
組付け不良の無いこととセッティングの確認はとれました。

気になったフロントフォークもこの際ですから。

ベアリングレースとボールは正常でしたから、
グリスアップと組み立てトルクを数字ではなく気持ちで管理。
そして再度試運転開始。
相変わらず不調だったのですが、エアボックスの吸入口の状態を微妙に変えたり
マフラーサイレンサーのバッフルのサイズを変えてみたり、
あの手この手を試みながら店とテストコースをひたすら往復することまる1日。
そこまでやってなんだか掴めたのでエアボックスのダクトをスタンダードに戻すことに決定。

以前はキットなど無くてもこのダクトを取り払ってキャブセッティングをやって…
みたいなことよくやられてましたけど、
キャブレターの終盤モデルはその燃調が絶妙に整ってきていて
よかれと思って安易に何かを拡げたり絞ったりすると「たったこれだけのことで…」
パフォーマンスが良くない方向に振れてしまうことがよくありました。

前よりもなんだか入り口のよくわからないものになってしまいましたけど、
エアフィルターよりも外に位置する吸入口ではありますが、
その形状や位置にはそれなりの意味があるのだと言うこと、
前職でダイナモ室にこもって思い知らされましたもんね。
当時はキャブレターのチューニングインナーキットも盛んでしたから、
僕も何度かやらせてもらいましたけど結果はホントいろいろありました。
キャブセッティングだけで何もかもまとまるとは限らないものだと
個人的には解釈しております(または僕のチカラ不足)

当初の吸入口の仕様でキャブセッティングを詰めるか
スタンダードの吸入ダクトでいくのか。。。
これ以上のパワーより許容範囲の広い空燃比を取ったほうが良いだろうと思ったので後者を選びました。
もうこれしかない、そして最後にしたいと思いながらの加速は
9500rpmのレッドゾーンを過ぎてレブリミッターに当たるまで一気の一直線。
きれいなパワーカーブが想像できます。
それはもう恐ろしいのか気持ちイイのか…これが本来のXJR1300だと思います。
ココまで使う人とその頻度は多くないと思いますけど、
有るべきものが発揮できていないと言うのはおもしろくありませんからね。
それは年がいの無い走り方はもうやらない僕も同じデス。