恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

失恋~譲二さん少年時代

2014-06-02 12:06:03 | 吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二

吉祥寺恋色デイズ、茶倉譲二の少年時代の妄想小説です。
 ネタバレありです。

☆☆☆☆☆
茶倉譲二プロフィール 喫茶クロフネのマスター
身長:183cm 体重:70kg
血液型:O型 特技:歴史語り
 特徴:歴史オタク
ヒロインの初恋の人。公園でサンドイッチをもらったり、抱っこしてもらったりしてた。

 この話の頃の譲二さんは14歳の中学2年生。反抗期でちょっと尖ってる。
☆☆☆☆☆

失恋その1

 朝早く学校に着いた。

誰もいないことを確認してから、明里の靴箱に小さな包みを置く。


 1週間に一回くらいの小さな贈り物。

それは中学に入ってからの習慣のようになっていた。


 その時々で包みには小さなチョコだのクッキーだの、可愛らしい千代紙の人形だの小さなぬいぐるみのキーホルダーだの、女の子が喜びそうなもの(俺のイメージで)を入れていた。

 


 友人たちの前では「あんな女なんか嫌いだ。」と強がっていたが、ひそかに明里に好かれたいと望んでいた。


 そして明里に理不尽な命令をされると渋々…いや、いそいそと従っていた。

 


 明里は親同士が勝手に決めた許嫁だ。

五歳の頃に初めて引き合わされた時、そのあまりの可愛さに俺は一目で恋に落ちた。


 しかし、明里は俺を見た途端、その可愛い顔を真っ赤にして蹴りを入れてきた。



明里「こんなやつ、あたしは絶対に認めないから!」

と。



 それまで、人に嫌われるという経験のなかった俺にはショックな出来事だった。

そして、それから会うたびに明里は俺を顎で使った。



 明里はこの頃、貴志とよく楽しそうにしている。

貴志は小学校時代からの俺の親友だ。

小学生の頃からいつも俺と行動をともにしていた。


 そのためか…、明里とも話をするようになり…、ここ最近は俺といるより明里といる方が多い気がする。

俺の気のせいだろうか?


 貴志はおっとりした気のいいやつで、俺に対してはいつもつんけんしている明里も貴志に対しては、まるで別人のように優しく接している。

 

その対応の差に俺は唖然としたものだ。


 その日も明里は貴志と楽しそうに話していたが、ちょうど先生から貴志に「職員室に来るよう言ってくれ」という言付けを頼まれたので、これ幸いと伝えた。

☆☆☆☆☆

失恋その2

 貴志が去り、やっと明里と2人っきりになって、見つめ合う。


 俺の心の中にもしかしたら、という気持ちが芽生えた。

 

胸が激しく高鳴った。



譲二「…明里。お前、貴志に何を言われてるか知らないけど…、俺はお前のことを一番わかっているから…。」


明里「どうして、そんなこと言えるの?」


譲二「…俺、俺は明里の側にいつもいるから…。今だって婚約者なんだし。明里が俺の方を向いてさえくれたら…、俺はいつも明里のことが…す、好きだ。」


 どもりながら、やっと言えた。


明里「譲二はいつも二言目には婚約者というけど。私が譲二の婚約者だっていうところからは離れられないの?」

明里「まるで私が譲二の持ち物みたいじゃない。譲二のそういう態度が嫌いなのよ、私。」


譲二「貴志と…付き合ってんのか…?」


明里「そうよ。この間、やっと貴志君も私のことを好きだって言ってくれたわ。」


譲二「…」


明里「あなたが私の気を惹こうとして、いろんなものを靴箱に入れているのは知っているのよ。」


明里「そんなことをしたって無駄なんだから。譲二を好きになることなんて、絶対ないわ。」


明里「たとえ貴志君と別れることがあっても、譲二だけは好きになんかならないわ。ありえないわ。」



 明里は吐き捨てるように言い放った。

 それまで、明里が誰を好きになろうと、誰と付き合おうと、最後には一番付き合いの長い俺のところに戻ってきてくれるだろうという根拠のない淡い期待を俺は持ち続けていた。


 それが明里のその言葉で粉々に打ち砕かれた。

 

そして、俺の心のどこかで何かがカチリと小さな音をたてて壊れた。

 



 その後、俺は明里の前でどんなことを言ったのかよく覚えていない。


 多分「俺だってお前を好きになったりなんかしねぇよ。」というような捨て台詞でも吐いたのだろう。


 とにかくその後はこっそり学校を抜け出して、その日の午後の授業はさぼってしまった。

☆☆☆☆☆

失恋その3

 朝からの曇り空はますますどんよりして、俺の心の中のようだった。



 目に涙は浮かばなかった。

カラカラに乾いたままだった。

 

大の男が、女の子にふられたくらいで涙を流すようなみっともないまねをしないですんで、俺は天に感謝した。


 しかし、明里の言葉で傷ついた俺の心の裂け目からは、涙が止めどなく溢れていた。

いや、それは涙ではなく血潮というべきだったのかもしれない。

 


 俺はぼんやりと吉祥寺の町をただただ彷徨っていた。


 黒船に行ってマスターに慰めてもらいたいと思ったが、マスターに優しい言葉をかけられたら泣いてしまいそうで、そんな女々しい姿は見られたくないとも思った。


 結局、百花ちゃんにいつも出会う小さな公園のベンチに座り込んで…、そのまま何をする気力もなく佇んでいた。


 どんよりとした空からついにポツリポツリと雨が降り出した。

 

俺は何もかもがどうでもよくなって、そのまま雨に濡れていた。



☆☆☆☆☆

え~、ゲームでは朝から雨が降ってたことになってた。
でも、妄想上では譲二君の心象とリンクさせる意味で昼までは曇り空にしました。

☆☆☆☆☆

失恋その4

 楽しそうな話し声と水たまりをはねる音がして、小さな女の子を連れた女の人が現れた。


 その女の子は「じーじ、じーじだ。」と叫びながらこっちへかけてくる。

 

それが百花ちゃんとお母さんだということに俺は初めて気付いた。



 百花ちゃんのお母さん、良子さんは百花ちゃんによく似た大きな目をした優しそうな女の人だった。


 戸惑う良子さんに百花ちゃんは「じーじだよ。いつもサンドイッチを食べさせてくれるじーじだよ。」と俺を紹介した。



  良子さんはずぶ濡れになった俺を心配して家に来るように誘ってくれた。

俺は断ったが2人に引きずられるようにして連れて行かれた。

百花ちゃんは大好きな じーじを母親に見せびらかせるのが嬉しいのか、いつにも増してはしゃいでいた。

 

余裕のない俺は、そんな百花ちゃんを鬱陶しく思い、邪険に扱っては後悔し た。


 しかし、百花ちゃんはそんな俺と手をつなぎたがった。

 


 百花ちゃんの家で、服が乾く間着替えを出してもらった。

百花ちゃんはタオルを取って来て俺を拭いてくれる。


 どんなに落ち込んで悲しくても、腹が減るのはどうしようもない。

 

昼飯を食べていない俺の腹の虫が鳴いた。

それを聞きつけて、百花ちゃんは良子さんに言いつける。



百花「おかーさん、じーじお腹がすいたって。」



 お腹をすかせた俺に2人はおにぎりを作ってくれた。

 

百花ちゃんのは、おにぎりっていうより、ぐちゃぐちゃだ。

でも、それを言うと泣き出すので、機嫌をとってそちらを食べた。


良子「百花は、本当にじーじくんが好きなのね。」


百花「うん、じーじだーいすき。」



 百花ちゃんの天真爛漫なその言葉を聞いて、また胸がうずいてきた。

とうとう目からも涙が込み上げてくる。



良子「譲二くん?」


百花「じーじは、どうして泣いてるの?お腹が痛いの?」


譲二「違うっ…」


百花「じゃあ、どうして?」



 良子さんは優しく聞いてくれた。



良子「…お家で、なにかあったの?」



 俺は首を横に振る。



良子「じゃあ…もしかして、失恋でもしちゃったのかな?」


 心の中を言い当てられて、俺の目からは涙がぼたぼたとこぼれ落ちた。

俺はしゃくりあげながら答えた。話し始めると止まらなくなった。



譲二「べつに…失恋なんてしてねーし…っ。アイツのことなんか…全然好きじゃねーし…」


良子「…」


譲二「アイツが、俺のダチのこと好きだって…はじめから知ってたし…」


良子「そう…」


百花「おかーさん、しつれんってなーに?」


良子「うーん、そうね…。『大好き』って気持ちを受け取ってもらえなくて、心が壊れちゃうことかな。」


百花「こころ?」


良子「そう。心が痛い痛いってなるの」


百花「じゃあ、じーじは心がイタイのね。」



 百花ちゃんはしゃくりあげている俺の左胸に手をあてた。


百花「イタイのイタイの、とんでけー」


譲二「…」


百花「とんでけー」


譲二「バ…バカじゃねーの…っ!?」



 粋がっていったものの、俺の目から溢れる涙は止めようもない。

☆☆☆☆☆

失恋その5

百花「ダメだよー、じーじ、いい子だから泣かないのー。」



 百花ちゃんは俺の顔を心配そうに覗き込んだ。



百花「じーじ、男の子でしょー」


良子「いいのよ、百花。男の子も、たまに泣きたい時があるんだから。」



 良子さんは俺にハンカチを渡してくれた。



良子「大丈夫よ。いつか譲二君のことが一番大好きっていう女の子が現れるから」


譲二「…」

 


 そんなことあるわけない。

 



良子「きっと、大丈夫よ」

 


 言い聞かせるように、良子さんは優しく繰り返した。

 



 その日、少し落ち着いた俺と良子さんはメール交換をした。


 その時から、悲しかったり、悔しかったりする度に良子さんに相談した。

ちょっとした嬉しい出来事なんかも報告すると、良子さんは自分のことのように喜んでくれた。

 


 それは百花ちゃん一家が引っ越しで、この町を離れてからもずっと続いた。


 家族の中で疎外感を感じていた俺が、道を踏み外すこともなく成長できたのは、黒船のマスターと良子さんのお陰だったかもしれない。

 



 今でも、あの日と同じ細い雨のふる日は、俺の心の古傷がじくじくと痛む。

 


 しかし、同時に心にほっこりした温かさも灯る。あの日の雨は、俺の心を今でも温かく濡らしているのだ。


失恋終わり

茶倉譲二少年時代~別れへ


☆☆☆☆☆

 この話の続きは譲二さんの大学時代の妄想になります。

大学時代はゲームの中では全く出て来ないので、私の勝手な妄想になって行きます。


 オリジナルのキャラも登場します。


  譲二さんの少年時代の妄想は一休みです。


 ただ、オリジナルで一つ考えたものがあるので、大学時代の話が終わったらまたupします。





最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。