恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

茶倉譲二少年時代~別れ

2014-06-12 09:43:11 | 吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二

 ネタバレありです。
☆☆☆☆☆
茶倉譲二プロフィール 喫茶クロフネのマスター
身長:183cm 体重:70kg
血液型:O型 特技:歴史語り、特徴:歴史オタク
ヒロインの初恋の人。公園でサンドイッチをもらったり、抱っこしてもらったりしてた。

 この話の頃の譲二さんは17歳の高校2年生。失恋を経験して少し大人になった?


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別れその1

 百花ちゃんの母親の良子さんから「引っ越します」というメールが入ったのは7月の始めだった。

 百花ちゃんと出会ってから、3年になる。
 俺は高校2年生になっていて、勉強も忙しくなっていたから、前ほど頻繁にはタコ公園に行けてなかった。

 携帯をかけて良子さんに詳しく聞いてみると、引っ越しの日は百花ちゃんの終業式の翌日。
 しかも佐々木さんは仕事の都合でその日より1週間前に単身で転勤先に行くことになるという。

譲二「え? それじゃあ引っ越しは良子さん1人でするんですか?」

良子「引っ越し業者さんに頼むし、細々としたものは私の車に乗せて、引っ越しトラックについて行こうと思っているの」

譲二「でも、百花ちゃんもいるし、良子さん1人じゃ大変でしょう?」

良子「ホントにね。でも、主人はその日も引き継ぎとかで忙しいらしいし、仕方ないわ」

譲二「あの…。俺が手伝いに行っちゃいけませんか?」

良子「え? 譲二君が?」

譲二「引っ越し先からは電車でも帰れるし、男手があった方がいいですよね」

良子「それは…、そうしてくれたら心強いけど…。本当にいいの?」

譲二「もちろん。良子さんには日頃から相談に乗ってもらって、お世話になっていますから」



☆☆☆☆☆

ヒロインの引っ越し時期ですが、ハル君ルートで七夕祭りの時にハル君に「もうすぐ佐々木はひっこすんだろ?」と言われる場面があったので、今回の話では7月後半としてみました。
ただ、引っ越しの日にシロツメクサの冠をハル君が作ってくれるという描写もあったので、もっと前の初夏の頃という想定もあるみたいです。

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別れその2


 まだ朝だというのにセミがうるさく鳴いている。暑さが2倍増しに感じられる。額の汗を手でぬぐった。

 百花ちゃんの家のインターホンを鳴らすと、ジーンズ姿の良子さんが出て来てくれた。

良子「譲二君いらっしゃい。朝早くからごめんね。荷物はほとんどまとまってるんだけど、まだ業者さんは来ていないのよ」

譲二「お邪魔します」

良子「それにしても譲二君、しばらく会わないうちに随分背が伸びたわね。何センチくらいあるの?」

譲二「181センチ位ですかね」

良子「わあ、でもまだ伸びてたりするんでしょ?」

譲二「はい、伸びてます」

良子「肩幅もがっしりして来てるし…。失恋して泣いていた譲二君の面影はないわね。」

譲二「良子さん、それは言わないでください…」

 あらかたの荷物は段ボールに積み込まれていた。残りの荷物を段ボールに詰め込むのを手伝った。

譲二「百花ちゃんは?」

良子「百花は幼なじみのお友達にお別れを言いに出かけてるわ。あの子がいると邪魔になるから…ちょうどいいんだけどね」

 インターホンがなり、引っ越し業者さんが来た。

 トラックに積み込む作業が始まった。俺も業者さんを手伝って積み込んで行く。

 積み込みがほぼ終わると、
「暑かったでしょう?」
と良子さんがスポーツドリンクのペットボトルを渡してくれた。

良子「そろそろ百花を呼んで来ないといけないわね」

譲二「俺が探してきますよ」

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別れその3

 百花ちゃんの名前を呼びながら土手を歩いて行く。

 向こうに、幼なじみの男の子達に囲まれた百花ちゃんを見つけた。

百花「じーじ!」

 百花ちゃんも俺を見つけて駆け寄って来る。百花ちゃんは思いっきり抱きついて来た。

 あれから3年経って、百花ちゃんも小学1年生。以前より大きくなっている。

譲二「百花ちゃん、そろそろ行かないと」

百花「じーじも見送りに来てくれたの?」

譲二「俺は引っ越しの手伝いに来たんだよ。だから、引っ越し先までは一緒に行くよ」

百花「ホント? わーい。」

 良子さんの車が走って来た。

良子「百花、譲二君、車に乗って。業者さんのトラックはもう出発したわよ」

 俺たちが車に乗り込むと、百花ちゃんの幼なじみたちが次々と別れの挨拶をした。

春樹「佐々木、またな。手紙書くからな!」

一護「百花、じゃあな。俺のこと忘れるなよ!絶対だぞ!」

剛史「また来いよ! 約束忘れるなよ!」

竜蔵「ぜぇったい、遊びに来いよ!」

理人「ふぇっ…、百花ちゃん…、バイバイ」

百花「みんな! 元気でねー! また、会おうね!」

 百花ちゃんは後部座席の窓を開けて、いつまでも手を振った。

 幼なじみたちが見えなくなると、百花ちゃんは助手席にいる俺に何かと話しかけ、ちょっかいを出して来る。

百花「じーじとドライブするのは初めてだねー」

譲二「…」

良子「じーじがお手伝いに来てくれてよかったわねー」

百花「うん! じーじも新しいお家に泊まるの?」

譲二「…俺は帰るよ」

百花「なーんだ。うちに泊まればいいのに…。ねえ、じーじ、泊まってよ!」

譲二「…いや…泊まれないし…」

良子「百花! 無理いわないの。じーじは引っ越しのお手伝いに来てくれたのよ」

百花「…はーい…」


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別れその4


良子「この車ナビがついてないのよね。新しい家の辺りの地図は出力してきたんだけど…」

譲二「俺がナビしますよ」

良子「頼りにしてるわ。ホント譲二君が来てくれてよかった!」

 少し迷ったが、なんとか新しい家に着いた。引っ越しトラックは既に待ってくれていた。
 俺も手伝って、家具や段ボールを次々と運び込む。

 家具の配置が終わり荷解きもあらかた終わると、業者さんは帰って行った。
 既に午後1時を回っていた。

良子「あらー、こんな時間。譲二君、よかったらさっき見かけたコンビニでお弁当を買って来てくれる?お茶とインスタントのスープくらいは用意できるから」

譲二「はい。何がいいですか?」

 俺は良子さんにお金をもらうと買い出しに出かけた。当然のように百花ちゃんも付いて来る。しかも、手を握って来た。

 俺は照れくさかったが、「今日で最後だしな」と思いそのままにした。


百花「じーじともう手をつないでお買い物にはいけないね」

 俺は口からでまかせに答えた。

譲二「場所は覚えたから俺がまた来るよ」

百花「ほんとう? わーい」

百花「でも…井の頭公園のスワンボートにじーじと一緒に乗りたかったな…」

譲二「また遊びにくればいいじゃん。百花ちゃんがもう少し大きくなれば電車にだって乗れるだろ?」

百花「そうだね。そうすれば、ハル君やいちごちゃんにも会いに行けるし」

譲二「急に元気になったな…」

百花「え?なに?」

譲二「いや、なんでもねー」

 

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別れその5

 午後からは、食器を食器戸棚にしまったり、本を本棚に入れたり、細々とした作業が続いた。
 カーテンも前の家ので使えそうなものを吊ったが、これは背の高い俺の仕事になった。

 良子さんはさかんに「助かるわー」を連発していた。

良子「譲二君、今日は何時までここにいられそう?」

譲二「そうですね。7時か…ギリギリ8時台の電車に乗れば、大丈夫かなと…」

良子「うちの人が少し早めに帰って来てくれることになったので、持ち帰りのお寿司を買って来てもらおうと思うの。だからそれを食べてから帰ってもらってもいい?」

譲二「え? そんな…、いいですよ。」

良子「本当は日当も出さないといけないくらいなんだけど、それで許して」

譲二「いや、俺はそんなつもりじゃ…」

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 結局、良子さんに押し切られて、佐々木ファミリーと夕食を食べることになった。


 良子さんのご主人は気さくな人で、気を使って俺にも色々と話しかけてくれた。

 じいさんのことや俺の父のことも知っているということだった。

 俺が通っている学校の名前を言うと、
佐々木父「もしかして大学はW大学に進学するのかい?」

譲二「はい、そのつもりです」

佐々木父「それじゃあ、私の後輩になるね。あそこはいい大学だよ。学部や学科も色々そろっているしね。」

譲二「そうですね」

佐々木父「何より校風が素晴らしい、自由と自主性を尊ぶところがね」

良子「またお父さんの母校自慢がはじまったわ」


 百花ちゃんはとにかく俺にくっついて、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。

百花「はい! じーじ、お手拭き」

百花「ほら、じーじ、お醤油この皿に入れたよ」

百花「じーじ、お茶を入れたからここに置くね」

百花「これじーじのお汁ね」

 その度に俺は「ああ」とか「おう」とか適当な相づちを打っていた。

 

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別れその6

 良子さんと百花ちゃんは近くの駅まで送ってくれた。

良子「今日は本当にありがとう。また、メールするわね」

譲二「いいえ。大した役に立っていないのに色々ごちそうしてもらって、ありがとうございました。それじゃあ、そろそろ行きます。」

良子「さようなら。また良かったら遊びに来てね」

譲二「はい。さようなら」

譲二「ちび、またな!」

 百花ちゃんの頭をぐしゃぐしゃとする。

百花「じーじ、さようなら。お手紙書くね!」

譲二「おう!」

 手を振ると改札を抜けた。

 しばらく歩いて振り返ると、改札のところで良子さんと百花ちゃんが手を振ってくれている。
 俺はもう一度大きく手を振ると階段を上った。

 階段を上りきった頃、百花ちゃんの声が遠くで聞こえた。

百花「じーじ!  さ! よ! う! な! ら!」


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 新学期になってから一度だけ百花ちゃんから手紙がきた。

『じーじ、おげんきですか

 あたらしいがっこうで わたしはがんばってます。

 あたらしいおともだちも できました。

                ももか』


 と、いうような内容だったと思う。

 俺と百花ちゃんらしき人物が手をつないでニコニコ笑っている絵も一緒に送ってくれた。

 俺は面倒くさいので、返事は書かなかった。
 良子さんに『手紙とどいた。ありがとう』というメールくらいは送った気がする。

 良子さんとはメールをし合っていたが、その後百花ちゃんと会うことはなかった。

 高校生になった百花ちゃんが俺の目の前に現れるまでは…。


別れ終わり


雌伏~譲二さん大学時代へ

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ひとまず少年時代のお話は終わりです。


高校生が年の離れた妹分に対して示す愛情としてはこんなもんかな(;^ω^Aって思います。
むしろ、これ以上関心を示していたとしたらキモチワルイ。
(((( ;°Д°))))

だからこの話の頃は一方的にヒロインの憧れの人という感じだろうね。
小学生1年くらいの女の子から見たら、高校生のお兄さんなんて何でも出来てすごくカッコよく感じると思う。



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