内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

「転導」再論 ― ジルベール・シモンドンを読む(45)

2016-04-05 06:26:25 | 哲学

 今日から読む段落は、一頁以上に渡る相当に長い文章です。昨日見た新しい思考方法から導かれる概念である « transduction » (「転導」)がそこでの主題になっています。しかし、多様な領域への適用可能性をもった汎用性を有したこの概念については、すでに2月24日の記事その翌日の記事で、同段落を引用あるいは参照しつつ説明してあります。ですから、その説明をここで繰り返すことはせず、その中では言及されていなかった点を摘録して、その説明を補塡するにとどめます。
 「転導」は、非等質的な領野に発生します。物理レベルだけではなく、生物レベルでも、心理-社会レベルでも発生します。いずれの場合も、「前個体化的緊張状態にある存在の中に次元と構造とが相関的に現れること」(« apparition corrélative de dimensions et de structures dans un être en état de tension préindividuelle »)です。この状態にある存在とは、「統一性や同一性以上のものであり、まだ己を己自身に対して多次元に自己移相してはいない存在」(« un être qui est plus d’unité et plus d’identité, et qui ne s’est pas encore déphasé par rapport à lui-même en dimensions multiples)です。
 転導的作用の結果として生まれた極限項は、当然この作用に先立って存在するものではなく、それら極限項から転導の発生を説明することはできません。転導のダイナミズムは、「非等質的存在のシステムの原初的な緊張」(« la primitive tension du système de l’être hétérogène »)から生まれてくるのであり、この非等質的存在が「自己移相し、諸次元を発展させ、その諸次元にしたがって自己を構造化」(« se déphase et développe des dimensions selon lesquelles il se structure »)します。
 この転導のダイナミズムが表しているのは、「二つの異なった現実の階位の間の初元の非等質性」(« l’hétérogénéité primordiale de deux échelles de réalité »)です。その二つの階位のうち、個体より大きい方は、準安定的な全体性のシステムであり、個体より小さい方は、物質レベルです。初元にあるこの二つの異なった大きさの秩序の間で、個体は、次第に増幅するコミュニケーションの過程によって発展します。転導とは、このコミュニケーションの最も原初的なモードであり、それは物質レベルの個体化にすでに現れています。




































































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