「転導」(« transduction »)について説明している段落を、昨日に引き続いて読んでいきます。
転導は、生命作用でもあります。それは、特に、有機的個体化の意味を表しています。それは、また、心理作用でもあり、実際的な論理的過程でもあります。しかし、その過程は、いわゆる論理的思考に限定されません。知の領域においては、転導は、創意工夫の真正の手続きを規定しています。それは帰納でも演繹でもありません。転導は、ある問題群がそれらによって定義されるところの諸次元の発見のプロセスです。その発見が問題解決にとって有効であるかぎりにおいて、転導は類推的作用です。
この転導という概念は、このように様々な領域の生成過程を考えるのに用いることができます。この概念は、個体化が実現され、存在に基づいた諸関係の組織の生成が顕現するところでは、どこでも適用可能です。ある現実の領域を考えるのに類推的な転導を用いることができるという可能性は、その領域が実際に転導的構造の在所であるということを示しています。前個体化的存在が個体化し、諸関係の組織の形成が要請されるとき、この要請が転導にほかなりません。転導は個体化を表現しており、それゆえ、それを考えることを可能にします。
つまり、転導という概念は、同時に形而上学的でありかつ論理的なのです。この概念は、個体発生に適用され、かつそれ自身が個体発生そのものなのです。
私はこの点が特に重要だと思っています。転導は、個体化過程を説明するためにその過程の外から導入された、個体化過程そのものとは無縁な、その意味で抽象的な概念ではなくて、それ自身が一つの個体化過程だという点です。つまり、生成の原理は、それ自体は同一的な普遍概念として生成過程の外にあるのではなく、その原理自身が現実のある場所から他の場所へと、そしてある次元から他の次元へと、適用範囲を拡大・拡張しながら自己形成していくものだということです。
転導概念は、客観的には、個体化過程成立のために必要なシステム全体の諸条件、内的共鳴(二つの異なった大きさの秩序に属する複数の現実間のコミュニケーションの最も原初的な様態。増幅と凝縮との二重の過程を含む)、心理的問題性を理解することを可能にします。論理的には、新しい種類の類推的パラダイムの基礎として用いることができ、物理的個体化から有機的個体化へ、有機的個体化から心理的個体化へ、そして心理的個体化から「主客通底的個体性」(« transindividuel subjectif et objectif »)への移行を可能にします。
これらすべての領野がシモンドンの個体化理論の研究対象なのです。
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