内的自己対話-川の畔のささめごと

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倫理は個体化過程の向かうべき方向を表現する ― シモンドン研究を読む(29)

2016-10-01 11:22:57 | 哲学

 現実が規範に判定を下すというテーゼは、一種の自然主義的倫理を主張している。シモンドンにとって、諸規範の規範は個体存在の生成過程たる現実にほかならない。ILFI の結論において「倫理は恒常化された個体化過程の意味(向かうべき方向)を表現している」(« l’éthique exprime le sens de l’individuation perpétuée », p. 335)と述べるとき、シモンドンはそのような考えを表明している。
 このような考え方に従えば、不道徳な行いとは、「気の触れた行い」(« l’acte fou », ibid.)である。それは、それだけで孤立した行いであり、その他の諸種の行いとのネットワークの中でそれらとの関係において己を分節化することを拒否し、もはや全体性によって統御されることはなく、創造的生成過程から遠ざかり、彷徨い、己を固定化する(Anne Fagot-Largeault, « L’individuation en biologie », art. cit., p. 47)。
 道徳的な行いとは、その価値を「生成である諸行為連関の中へ統合されているという実効的現実」(« l’effective réalité de son intégration dans un réseau d’actes qui est le devenir », ILFI, p. 333)から得ている。
 シモンドンは、「純粋な倫理」(大原理や絶対的と見なされた価値)と「応用倫理」(環境に応じて可変的な規範)という伝統的な二分法に対して、「一連の継起的な準安定的な均衡という考え方」(« la notion d’une série successive d’équilibres métastables », p. 331)をそれに置き換えることを提唱する。この考え方に従えば、諸々の規範とは諸々の均衡であり、諸々の価値とはそれら均衡の準安定性のことにほかならない。

Les valeurs sont la capacité de transfert amplificateur contenu dans le système des normes, ce sont les normes amenées à l’état d’information : elles sont ce qui se conserve d’un état à un autre ; tout est relatif, sauf la formule même de cette relativité, formule selon laquelle un système de normes peut être converti en un autre système de normes (ibid.)

価値とは、規範体系の中に含まれた増幅的転移能力である。それらは(可)形成情報の状態へと導かれた規範である。それらの規範は、ある状態から別のある状態への移行の中で保持される。すべては相対的であるが、この相対性の定式そのものだけはそうではない。この定式に従えば、ある一つの規範体系は別のある一つの規範体系へと変換可能である。













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