内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

加藤周一『日本文化における時間と空間』の批判的読解作業

2016-11-26 18:47:50 | 講義の余白から

 修士の一二年共通の演習のテキストとして、今年は加藤周一『日本文化における時間と空間』を選び、九月からずっと学生たちと読んでいる。
 昨年は、丸山真男『日本の思想』を選んだのだが、こちらの予想に反して、学生たちは構文のむずかしさゆえにえらく読解に苦しんだ。そこで、今年は、一昨年高橋哲哉『靖国問題』を選んだときのように、仏訳がある本にしようと思った。加藤のこの本の仏訳には、本文中に言及されている人物・作品・歴史的事項などについて訳者による補注が多数付加されており、それがさらに読解を助けてくれる。完全に意味を取り違えている誤訳も散見されるけれど、全体としてはとても良い訳だ。それでこの本を選んだ。もちろん原本の内容が学生たちにとって刺激的であろうというのが選択の第一の理由であるが。
 仏訳があるのだから、日本語のテキストの読解が教室での主たる目的ではない。教室では、学生全員にそれぞれ担当頁の要約を日本語で毎週させている。しかもパワーポイントを使うことも義務づけている。それは、この演習が来年二月の法政大学の学生たちとの合同ゼミの準備を目的としているからである。そのゼミでの日本語での口頭発表の訓練を毎週しているわけである。
 一年生は第一部「時間」を、二年生は第二部「空間」を担当している。来週で一応全部読み終える。この読解作業で面白かったことは、加藤のあまりにも明快な割り切り方に学生たちが納得し難い思いをしていることである(私から見ても、これは無茶苦茶だ、明らかに議論が破綻しているところが少なからずある)。なかには、ちゃんと反例を挙げて、加藤の主張を批判する学生もいる。これはまさにこちらの狙い通りで、学生たちには遠慮せずに批判を展開するように煽っている。












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