ビールを飲むぞ

酒の感想ばかり

福千歳「徳」

2024-03-30 21:21:34 | 日本酒

20240330田嶋酒造の直売所で購入。

女将さんが細かく説明してくれる。

この蔵は伝統的に山廃で醸造しているという。

(因みに石川の山廃とはイメージが違うらしい。というか、石川の山廃が個性的だという。)

伝統的な酒と、若い杜氏が新たな試みで造る酒と、2つのラインナップ。

フクロウをラベルにしている。山廃は基本だが、純米吟醸はこの「徳」となる。

注ぐ

やや茶色かかった透明。

香りは、フルーティーであるとか吟醸的なものは弱い。むしろ 一瞬くさみもある。

さてどうだろうか?

飲む。

悪くない。

飲み口に一瞬木桶、といってもウィスキー樽のような甘い木の風味を感じる。

これはこれでうまい。

純米吟醸だが、華やかフルーティーではなく、

木桶風味の、落ち着いた感じ。

熟成感もあるのだろうか?

今は2024年だが、2022年醸造のようだ。

石川の酒のように濃醇さはない。だからスッキリしている。ただ新潟や富山の酒のようにスッキリしすぎていないのである程度の濃さはある。

米らしい風味がベースにある。そこに酸味や吟醸香が付加した感じ。


飛鳥井純米吟醸中取り

2024-03-30 19:09:20 | 日本酒

福井市の、酒のみやごうで購入。

飛鳥井の蔵元である丹生酒造は前回訪れて直接購入したので、直接買うより、酒店の方が種類が多いと思い酒屋で買った。

ただ、この蔵元自体あまりバリエーションは多くなく、堅実さがうかがえる。

無濾過生原酒の中取り。

香りは辛口風でそこまで濃さは感じない。スッキリとはしていそう。

飲む。

フルーティーと感じられる。

フルーティーではあるが香りというよりは味のほう。

飲み口から序盤は、甘味と微かな苦味が同時に立ち上がる。

想像にたがわずスッキリとした吟醸酒。

味わいは全体的にやや濃い目かと感じる。

一旦落ち着いて飲む。

ドライ感はあまりない。どちらかというとしっとりしている。

そして、木桶風の風味をどことなく感じる。

これは、何由来なのだろうか。

新玉ねぎのスライスと合う。

相補的。心地よい苦味。この苦味は酒由来か?玉ねぎ由来か?

20240331追記。

一日置いた。よく冷えている。

一口目。

これはうまい。

甘くフルーティーで苦味はない。

かなりいい。

大阪にいるときに、うまい地酒を飲んだ。という気持ちを沸き上がらせる。

それは土着的な酒でなく、きれいな酒を飲んだという意味で。

飛鳥井、なかなかいいのではないか?


Takachiyo59純米吟醸八反錦壱号

2024-03-29 20:10:11 | 日本酒

酒のたみやで購入。

新潟の高千代酒造の酒。

高千代が代表銘柄であるが、実験的ブランドがこのアルファベット表記のTakachiyo(かな?)

59と書いて極(ごく)と読むようだ。極みの意味もあるのだろうが、精米歩合も59%だ。

限定品とあるが、期間限定でもあるし、特約店限定品でもある。

この袋は優れもので紫外線をカットする素材だそうだ。瓶が無色透明なので、このような袋は効果的だろう。

注ぐ。

色は無色に近い。ただ、ややうっすらと醪の粕が浮いている。無調整生原酒だからだろう。

注いだ時点で、遠くにいてもフルーティーな香りが届く。

近付くと、結構有機酸の香りが強い。そこに薄く木桶風の香り。ただそれは醪の風味だと思われる。

飲む。

微発泡、ではあるが強めの炭酸。

香りの通りフルーティー。

ブドウ寄りのグレープフルーツ的な味。

ただ極はじめの一瞬にリンゴをイメージさせる風味があり、すぐにブドウ・グレープフルーツが盛り上がってくるため紛れる。

それらに比較して弱めの苦味もある。

全体的に、結構濃いのではないだろうか。

新潟の酒には思えないくらいの濃い味。

新潟らしいと言えば、後味が結構スッキリしている。ほぼ余韻がなく、スパっと切れるというわけでもないが、後は引かない。

日本酒というより焼酎に近い雰囲気の瓶とラベル。

20240330追記。

やはり、隙を見せればリンゴ感がやって来る感じ。

梨寄りのリンゴだ。

完全なるリンゴでないのでいいのだが。

醇であるのには違いない。

新玉ねぎのスライスと合う。玉ねぎの刺激感が酒とマッチする。

このようなスパイシーなものと合うかもしれない。

20240406追記。

合鴨の燻製と合わせると、こういった濃い味のつまみには醇さが紛れて飲みやすい。


「比ぶ者なき」馳星周

2024-03-24 21:44:28 | 読書
太政官とは、太政大臣を長官とし、左大臣、右大臣、大納言の四者を言う。
史(不比等)は出世を望まず、その方が嫉妬を買わずにすむという事で、裏で工作を進める。様々に策謀を巡らせつつ、従うものを集めていく。小説としてはこう言った段階にある時期が面白い。若干北方謙三的なご都合主義感は否めないが。
造営中の新しい都の視察に来た史に百枝は新しい神を見つけたという。新しい神話を作るのだが、そこに登場する神のことだ。天照大神は男神だが、女神に変え、それを現在の天皇とする。
史の娘、長娥子と高市皇子の子、長屋王が結婚。
柿本人麻呂が史に呼ばれる。草壁皇子の付人同士の仲。新しい神話の話を聞かされる。草壁を偲んだ歌に、天の原というのがあり、そこから高天原という名前を思い付く。
磯城皇子が史を怪しむ。やがて磯城皇子は薨去する。史が武という者に毒殺を命じた。ここで、磯城皇子は歴史上実在が曖昧だ。そこをフィクションにした。
ここに来て、史と県犬養道代が不倫関係となっている。互いに考えが合うのだ。
軽皇子は正室を娶らないという。正室は皇族から娶らなければならない。すると史が娘を軽皇子に嫁がせて子孫を皇室に、天皇にしようとする野望が叶わない。それを汲み、軽皇子はそういってる。史は感極まる。
《柿本人麻呂に関して(wikiから)人麻呂の歌は持統天皇の即位からその崩御にほぼ重なっており、この女帝の存在が人麻呂の活動の原動力であったとみるのは不当ではないと思われる。歌道の秘伝化や人麻呂に対する尊崇・神格化が進んだ平安後期から中世、近世にかけては、『人丸秘密抄』のように持統天皇の愛人であったと記す書籍や、山部赤人と同一人物とする論も現れるが、創作や想像による俗説・伝承である》
皇子達の合議によって軽皇子が次の天皇となることが決まる。史が長屋王や葛野王を取り込んでいたからだ。史は軽皇子から信頼されており、軽皇子が天皇になった暁には史が世を取り仕切る、全権力を握ろうと考えているのだった。しかし軽皇子は自分も政治に参加できるよう令を変えようと考えている。その事に危機感を覚える史。
軽皇子が即位する。その時史は不比等という名前を与えられる。同時に軽に警戒感を抱く不比等だった。
一方、阿閇皇女の道代に対する信頼も深まる。
持統天皇は太上天皇となる。軽皇子は不比等の策略により毒殺を恐れるようになる。不比等は娘の宮子を側室にする。その間にできた子を天皇にする。そして自分は国を仕切ろうとする。
太上天皇は不比等を警戒する。長屋王を呼び、不比等の元に潜伏し、不比等が死に、軽と正室の子が大きくなるのを見届けろと、かつての不比等がそうであったように命じる。
軽と宮子の子は首(おびと)と名付けられた。
軽は病弱だが、太上天皇も老いのため伏せている。不本意ではあるが、女性でありながら権力を持ったことを後悔している。今となっては軽のことだけが心配。不比等には軽のことを頼む。かつての讃良と史の関係に一瞬戻る。自分が死んだら火葬して欲しい。これは史実通り、初めて火葬された天皇のようだ。しかし、後にした不比等は、太上天皇が首(おびと)のことを何一つ口にしなかったことを気にする。太上天皇は軽に正室を迎え、その子を後継者にすることしか考えていない。
軽は病でやつれていく。母である阿閇に譲位し天皇となって欲しいと頼む。取り合わない阿閇。軽は父である草壁が天皇になるべきであったが早世したため叶わなかったため、命日を国忌とするよう不比等に相談。草壁は天皇でないため無理な話であったが、軽が乗り気でない遷都を許す代わりに何とか国忌とするよう交換条件。不比等はそれを実現した。
軽が死ぬ。首が天皇になるには早すぎる。阿閇が譲位すればいいが、もっとふさわしい皇族がいる。そうなると首が天皇になるのは永遠に叶わない。ここで国忌が活きてくる。国忌は天皇の命日であり、天皇の后は、かつての持統天皇がそうであったように天皇になり得る。また西域での事例を引き合いにだし、中大兄から血族だけに伝えたとする典(のり)があるとし、天皇を次ぐ根拠があることを主張した。そして阿閇は即位する。誰も不比等の手際に反論できない。この辺りが盛り上がる場面。
氷高皇女、軽、吉備内親王は兄弟。吉備内親王は長屋王の正室。氷高皇女は吉備内親王の夫の長屋王が不当な扱いを受けているのを思い、阿閇天皇に不比等に気を遣いすぎると不満を漏らす。
平城京に遷都しようとする。宮の東に東宮を造り首を住まわす。興福寺が藤原の氏寺。これで平城京は藤原の都となる。
軽の側室の石川の娘に子がいる。それが心配の種だが、石川の娘、そして紀の娘から称号を取れば済むと考える。
草壁、軽と、天皇にすることが叶わなかった。首は何としても天皇にしたい。
阿閇は天皇の位に疲れ譲位をする。但し首はまだ若く、氷高皇女に。元正天皇だ。氷高は長屋王推しで、不比等には警戒をする。
このままでは長屋王が皇室を占有しかねない。不比等は首を天皇にするため、秘かに舎人を知太政官事に、新田部親王を五衛府、授刀舎人寮の主にするよう太上天皇(阿閇)に依頼する。これで磐石となる。
同時に日本書紀の編纂をすすめる。蘇我馬子の功績を厩戸皇子の事と書き換えなければならない。と同時に聖徳太子と名前も変える。
史実ははっきりしないが作者の創作により野望に満ちた人物に作り上げられた。もう少し悪人に仕上げてもよかったと思うが、題材が題材だけに難しいだろう。また、「鎌倉殿の13人」北条義時のように、ライバルを粛清していくことはないところは、そこまで悪人ではないと感じる所以だろうか。
 
20240212読み始め。
20240324読了。

東籬純米吟醸

2024-03-18 21:36:23 | 日本酒

この前酒のこんちきたいで見かけたのだが、実は菊姫の別ブランドと教えてもらい、驚いた。その時は鶴乃里と吉田蔵を買うのでいっぱいだったので改めて今回購入。

2023年11月13日に新発売。

菊姫伝統の醸造思想と異なるため、敢えて別の銘柄を冠したという。

これも意外だったが、菊姫には吟醸はあっても純米吟醸と呼ぶ酒はなかったのだという(純米吟醸レベルの酒はあったと思うが)。

2500円と、少し高め。高級な箱に入っている。酒のラベルは値段に比して安っぽいという口コミがあるが、上品で堅実な感じでいいと思う。

注ぐ。

気のせいか菊姫らしく、やや濃いめの琥珀色。

香りはこれも吟醸香ではなく、菊姫らしいカラメルを予感させる熟成香に感じられる。フレッシュ感はあまりない。

飲む。

一言では言い表せられない。多くの味が次々に現れる。

吟醸香はほぼない。

灰っぽい味がある。

そして菊姫らしい味が全体にある。それらを丸く軟らかくした感じ。

さすが菊姫らしく単にワインのような吟醸酒は造らない。

カラメル風味を感じさせつつ一歩手前で軟らかくまろやかにさせる。

後半から甘い砂糖のようなコクとも言える味覚が出てくるが、強すぎず、これも優しく通りすぎる。そうすることで風味として味を加えている。

よくこんな酒ができたものだ。

菊姫の伝統の味を固守しつつ、優しい、まろやかでスッキリした味にリモデルした。

マグロの切り落としと合わせる。これが合う。両方合わさってそれぞれが濃いめの味になる。酒の味が際立つ。際立つと行っても、菊姫らしい米のコクが。鶏肉、酒の苦味がやや強くなる。

青椒肉絲と合わせると、なんと青椒肉絲がより中華風になる。つまり青椒肉絲の味を引き立てる。面白い。

とにかく合わせるツマミに逆らわない。ツマミを引き立てつつ、どこかで自分(酒)もアピールする。つまり負けていない。決して酒本体の味は淡白ではない。

華やかさはないが、穏やかに、ツマミに合わせる酒。

20240320追記。

色々考えたが、やはりこれは菊姫だ。

悪い意味ではない。

菊姫らしさがある。新しい味を追求する感じではない。菊姫の範疇で新たな方向性を探したと言える。

20240322追記。

千代鶴純米酒生酒のようなスッキリした酒からすると、やはり米の酒だと感じる。炊いた米の風味。重厚とも言える風味。これは紛れもなく菊姫ではないか?

いくら、これまでの思想にない新機軸といっても、菊姫の味わいはやはりあるのだ。

これを熟成させたら、結局は定番の菊姫の山廃純米になるのではないだろうか。